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マンジャロで老ける? 顔・筋肉・髪の変化と老化研究の現在地

マンジャロやオゼンピックで「老ける」「はげる」という声がある一方、「老化を遅らせる」という研究のニュースもあります。治療中に顔のふくらみが減ったり、抜け毛が増えたりすることは報告されています。ただ、それだけで体そのものの老化が進んだとは言えません。項目ごとに根拠の強さは違い、健康な人の老化を遅らせる効果は、確認されていません。

根拠 有望13分で読めます公開 2026.11.01更新 2026.11.01
安藤安藤(薬剤師)
ReverseAging.Tech 薬剤師 / 連載「薬剤師が読み解く」
この記事の要点
  • 顔のふくらみ・除脂肪量(筋肉など)の減少・抜け毛は、大きくやせると起こりうる変化で、治療中にも確認されています。やせた影響と薬の作用は、まだ分けられていません。
  • 心臓や腎臓の病気を減らす効果は、病気のある人で確かめられています。健康な人の老化や寿命への効果は、確認されていません。
  • やめると体重は戻る方向です。美容目的の使い方は、国が安全性と有効性を「確認されていない」としています。糖尿病や肥満症の治療で使っている人は、自己判断でやめず、気になる変化を主治医に相談してください。

こんにちは、ReverseAging.Tech 薬剤師の安藤です。

マンジャロやオゼンピックなどのGLP-1受容体作動薬が、美容医療、特にやせ薬の点で注目を集めています。

これらの薬を使用した際の、見た目の変化と老化への影響を分けて、どこまで確かかを研究の段階ごとに整理しました。

マンジャロで老けると言われるのはなぜ? やせる目的で広がった糖尿病の薬

マンジャロもオゼンピックも、もとは血糖を下げる2型糖尿病の薬

GLP-1という、腸から出るホルモンの働きを借りて血糖を下げる薬です。

マンジャロは、GLP-1とGIPの2つのホルモンの働きをあわせ持ちます。

どちらも、体重が大きく減ることが分かっています。

薬の名前成分主な用途(形)
マンジャロチルゼパチド2型糖尿病(注射)
ゼップバウンドチルゼパチド肥満症(条件あり)など(注射)
オゼンピックセマグルチド2型糖尿病(注射)
リベルサスセマグルチド2型糖尿病(飲み薬)
ウゴービセマグルチド肥満症(条件あり)など(注射)

(各薬の電子添文より)

同じ仲間の薬に、トルリシティ、ビクトーザ、サクセンダもあります。

体重が減ることから美容・痩身目的の使い方も広がり、厚生労働省が注意を呼びかけています。

「老ける」と「老化を遅らせる」、2つのうわさは別々に確かめる

「老ける」側は、オゼンピック顔、筋肉が落ちる、はげる、やめたらリバウンド、といった心配です。

「老化を遅らせる」側は、心臓や腎臓、認知症、マウスの寿命についてのニュースです。

見た目の変化と、病気の悪化を防ぐ効果は、同じ人に両方起こりえます。

この記事では、見た目の変化・病気を防ぐ効果・老化そのものへの影響を別々の問いとして、どこまで確かかを見ていきます。

根拠の強さは、確立・有望・初期・動物・話題の5段階で示します。

「マンジャロで老ける」は薬そのもののせい? 顔・筋肉・髪は急にやせることでも変わる

やせることを通じた変化でも、治療中に起こる変化であることに変わりはありません。

「オゼンピック顔」とは? 顔のふくらみが減る変化と、まだ分からない原因

「オゼンピック顔」は、急にやせたあとの顔の変化を指す通称です。

画像で顔を測った少人数の研究では、GLP-1の薬を使った人で、顔の中央部のふくらみが減っていました。

研究のまとめでは、顔の変化は大きな減量全般と結びつけられ、対象の多くは手術でやせた人でした。

2026年のレビューも、薬に特有の病気ではなく、急な・大きな減量で起こる変化と整理しています。

ただ、同じだけやせた人どうしの比較はなく、薬そのものの影響はまだ分かっていません。

要因には、やせるペース・脂肪の減り方・年齢・肌の質が挙げられています。

やせるペースは、主治医と相談できる要因の一つです。

筋肉も落ちる? 体重と一緒に減る「除脂肪量」と、筋力は別の話

公園で腕を上げて体操をする高齢の人たち

「除脂肪量」とは、体重から脂肪を除いた部分で、筋肉のほか骨・内臓・水分も含み、筋肉そのものの量とは違います。

マンジャロと同じ成分のチルゼパチドを調べた比較試験の解析では、減った体重の約4分の3が脂肪、約4分の1が除脂肪量でした。

この割合は、薬の成分を含まない偽薬の人や、食事制限でやせる研究ともおよそ同じで、22の比較試験のまとめでも約4分の1でした。

ただし割合が同じでも、大きくやせれば、失う量は大きくなります。

また、除脂肪量が減ったことだけでは、筋力が落ちたかどうかは分かりません。

チルゼパチドの試験では、本人が答えた体の動きやすさの評価は改善していました。

一方、オゼンピックなどの成分のセマグルチドを使った高齢の糖尿病の人を振り返って調べた研究では、筋肉の量と歩く速さの低下が報告されましたが、観察研究のため、薬が原因とは決められません。

セマグルチドで握力を実際に測った研究を2026年10月にまとめた解析でも、結果は一致せず、筋力が保たれるかは、まだ判断できないとされています。

特に高齢の人は、体重の数字だけでなく、力や歩きやすさも一緒に確かめていくことが大切です。

「はげる」は本当? 抜け毛が増える頻度と、まだ分からない原因

米国の添付文書では、肥満症の治療での抜け毛の報告は、偽薬の1%に対し、チルゼパチドで用量により4〜5%、セマグルチドで3%でした。

チルゼパチドでは女性に多く、GLP-1の薬の比較試験をまとめた解析でも偽薬より多いとされています。

2型糖尿病の人の大規模な観察研究でも、ほかの糖尿病の薬より多いものの、起こる人の割合そのものは低いと報告されています。

手術でやせたあとにも抜け毛は珍しくなく、追跡が長い研究ほど割合は低めでしたが、手術後の知見のため、薬の治療中に同じ経過をたどるとは限りません。

治療中に抜け毛が増えることは、確かめられています。

一方、なぜ増えるのかは、まだ分かっていません。

添付文書は「体重減少に伴うもの」としていますが、薬が直接の原因か、やせることに伴う抜け毛かは、議論が続いています。

マンジャロをやめたらどうなる? 将来の副作用は? 使う前に知っておきたいこと

「やめたらリバウンド」は本当。体重とともに、血圧や血糖の改善も戻る方向に

白い体重計に乗った素足

チルゼパチドで体重を減らしたあと、続けた人と偽薬に切り替えた人を比べた試験では、切り替えた人で体重が大きく戻りました。

切り替えて約1年後、それまでの減量の8割以上を保てた人は、続けた人で約9割、切り替えた人で2割弱でした。

セマグルチドでは、薬と生活習慣への支援を終えた1年後に、減った体重の約3分の2が平均で戻り、血圧や血糖などの改善も多くは元に戻る方向でした。

始めるときに、やめるときのことまで医師と話しておくと安心です。

糖尿病や肥満症の治療で使っている人は、自己判断でやめず、主治医に相談してください。

長く使うと将来どうなる? 医師が定期的に見守る理由

添付文書には、急性膵炎、胆のうの病気(胆のう炎など)、低血糖、全身麻酔や深い鎮静のときの誤嚥(食べ物などが気管に入ること)などへの注意が書かれています。

甲状腺のC細胞の腫瘍は、ラットでの結果で、人で起きるかは分かっていません。

試験では、副作用で薬をやめる人が偽薬より多くみられました。

主な比較試験で経過を追った期間は数年で、10年単位で使い続けた場合の安全性は、まだ十分に分かっていません。

注意すべき副作用が分かっているからこそ、医師が定期的に確かめながら使う薬です。

美容目的の使い方と、病気の治療は分けて考える(国の注意)

承認された用途(2型糖尿病や、条件を満たす肥満症など)で医師が使う治療と、美容・痩身・ダイエット目的の使い方は別です。

厚生労働省は、マンジャロやリベルサスなどを美容・痩身・ダイエット目的で使った場合について、「安全性及び有効性は確認されておらず、安易な使用は思わぬ健康被害につながるおそれがあり、危険です」としています。

2026年10月にも、適正な使用について改めて周知しています。

心臓・腎臓の病気が減るなら、老化も遅らせる? 認知症・寿命の研究で分かったこと

病気が減ることと、老化そのものが遅くなることは別の問いで、病気が減っただけでは、老化が遅くなったとは言えません。

2型糖尿病の人ではHbA1c(ブドウ糖が結びついたヘモグロビンの割合で、「糖化」の入口を映す指標)が下がりますが、マンジャロやオゼンピックの成分で、体の中の糖化物質(AGEs)を減らすことを人で示した試験は、見当たりません。

同じ糖尿病の薬であるSGLT2阻害薬の、マウスでの研究は、「糖尿病の薬に老化細胞を減らす働き?マウス研究の読み方」で紹介しています。

心臓と腎臓は、病気のある人の大きな試験でリスクが下がった

心臓や血管の病気があり太り気味の人(糖尿病なし)の大きな試験では、注射のセマグルチドで、心臓が原因の死亡・心筋梗塞・脳卒中をまとめた評価のリスクが下がりました。

チルゼパチドでも、肥満と、ポンプ機能が保たれたタイプの心不全のある人の比較試験で、心不全の悪化が少なくなりました。

腎臓では、2型糖尿病と慢性腎臓病のある人で、注射のセマグルチドを使った人に腎臓の悪化が少なくみられました。

病気のある人の試験をまとめると、追跡中の死亡も少ない方向です。

いずれも病気のある人の結果で、健康な人の老化や寿命への影響を示したものではありません。

心臓や腎臓に病気を抱える人では、大きな試験で実際にリスクが下がっています。

認知症は「防ぐ」と「進行を遅らせる」で、分かったことが違う

早期のアルツハイマー病の人(平均72歳)の大きな2つの試験では、飲み薬のセマグルチドを2年使っても、進行は遅れませんでした。

マンジャロの試験ではなく、GLP-1の薬すべてについての結論でもありません。

認知症を防ぐかどうかは、これとは別の問いで、まだ確かめられていません。

糖尿病などの人の比較試験をまとめた解析では認知症が少ない方向でしたが、認知症を主に調べた試験ではなく、評価の方法や発症の数に限りがあります。

寿命が延びたのはマウス。人の老化のしるしは、結果の意味を確かめている途中

寄り添って並木道を歩く年配の夫婦の後ろ姿

寿命が延びたのは高齢の雌のマウスで、食べる量も24%減っていました。寿命については、食事を減らしただけのマウスとの比較はありません。

人では、HIVに関連する脂肪の偏りがある人84名の試験をあとから解析し、血液から体の年齢を推定する「老化の時計」の値が小さかったと報告されています。

1万人を超える比較試験の参加者の血液でも、推定した臓器の年齢が低かったと報告されていますが、査読前の論文で、実際に老化が遅くなったことを示すものではありません。

いずれも、健康な人の研究ではありません。

肥満などがあり心臓や血管の病気のリスクのある人で、チルゼパチドにより病気や死亡が減るかを調べる大きな試験が、いま進んでいます。

効果ごとの根拠の強さ判定の基準
調べたこと根拠結果
薬そのものが体の老化を進める根拠 話題進めるとも進めないとも確かめられていない。見た目の変化は大きな減量でも起きる
顔のふくらみが減る(オゼンピック顔)根拠 初期少人数の測定で減少。薬に特有かは未確認
除脂肪量(筋肉など)が減る根拠 確立チルゼパチドの解析などで、減った体重の約4分の1。割合は研究で異なる
筋力・体の動きが落ちる根拠 初期結果は一致していない。特に高齢者への影響は未確定
骨密度が下がる根拠 初期下がった比較試験もあるが、薬ごとの証拠は少ない。骨折への影響は未確定
治療中に抜け毛が増える根拠 確立偽薬より多い。薬が直接の原因かは未確認
やめると体重が戻る根拠 確立戻る方向。血圧や血糖の改善も戻る方向
心臓・血管の病気を減らす根拠 確立病気のある人の大きな試験と、米国の承認。健康な人の予防ではない
腎臓の悪化を減らす根拠 確立2型糖尿病と慢性腎臓病のある人(注射のセマグルチド)。飲み薬は重い腎臓の評価で差なし
病気のある人の死亡が減る根拠 確立試験をまとめると、追跡中の死亡が少ない方向
健康な人の寿命が延びる—調べた試験はない
認知症を防ぐ根拠 初期試験の集計で少ない方向。認知症を主に調べた試験ではない
早期のアルツハイマー病の進行(飲み薬のセマグルチド)根拠 確立遅らせる効果は見られなかった(大きな2つの試験)
老化のしるし(老化の時計など)根拠 初期少人数の解析と、査読前の大きな解析。老化が遅くなったかは未確認
寿命が延びる(動物)根拠 動物高齢の雌のマウス。食べる量も減っていた
HbA1c(糖化の入口の指標)が下がる根拠 確立2型糖尿病の人で下がる。この2成分で体の糖化物質が減るかは未確認

心臓・腎臓の「確立」は病気のある人での効果で、老化を遅らせる効果の評価ではありません。

まだ分かっていないこと
  • 顔の変化や抜け毛が、薬に特有のものか、急にやせること一般によるものか(同じだけやせた人との比較がない)
  • 中高年や高齢の人で、筋力や体の動き、骨にどう影響するか
  • 10年単位で使い続けたときの安全性
  • 健康な人で、老化そのものや寿命に影響するか(肥満などで心臓や血管の病気のリスクのある人の大きな試験は進行中)

では、どうすればよいか

お金をかけずにできること:急に減らしすぎず、食事と体を動かす習慣を保つ

焼き魚、卵焼き、ご飯、みそ汁が並んだ和定食

顔の変化は、やせるペースが要因の一つに挙げられているため、急に減らしすぎないことが一つの目安です。

米国の4つの専門の学会は2025年の共同の提言で、GLP-1の薬を使う人に、週3回以上の筋トレと週150分以上の中強度の有酸素運動、十分なたんぱく質を勧めています。

持病のある人は、運動やたんぱく質の量を主治医と相談してください。

薬を使わない食事制限での減量では、筋トレを加えると除脂肪量の減りが小さくなる方向の結果がまとめられています。

ただ、GLP-1の薬を使う人で、筋トレやたんぱく質によって筋肉の減りを抑えられると確かめた比較試験は、まだ見当たりません。

健診では、HbA1cの値も見ておきましょう。

体重の減り方に加え、食事が十分にとれているかも、主治医と確かめていきましょう。

使う前に、主治医・薬剤師に確かめておきたいこと

  • 自分の目的と、その薬の用途が合っているか(糖尿病の薬か、肥満症の薬か)
  • やせるペースの目安と、やめるときの計画
  • 持病や、ほかに使っている薬
  • 手術や内視鏡などで、麻酔・鎮静を受ける予定(誤嚥の注意があるため)

糖尿病や肥満症の治療で使っている人へ:気になる変化は、自己判断でやめずに相談を

病気のある人では、心臓や腎臓のリスクが下がった試験もある薬です。

顔や髪、体重の減り方などの変化も、治療について相談してよいことです。

気になる変化を主治医や薬剤師に伝え、今後の治療について相談してください。

マンジャロなどを、やせる目的で考えるなら
  • 美容・痩身目的での安全性と有効性は、国が「確認されていない」としています
  • 肥満症の治療は、承認された薬を条件に沿って医師が使うもので、これとは別です
  • 持病がある、ほかの薬を使っている、手術や麻酔の予定がある、妊娠中または妊娠の可能性がある方は、医師・薬剤師に相談を
  • 糖尿病や肥満症の治療で使っている方は、自己判断でやめないでください
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
筋肉のMRIの解析(Lancet Diabetes Endocrinol 2025)2型糖尿病の人で、チルゼパチドにより太ももの筋肉の量も筋肉の中の脂肪も減った。減り方は減量時に一般にみられる程度
骨の研究(EClinicalMedicine 2024/Arch Osteoporos 2026)骨折しやすい人64名の比較試験で、セマグルチドにより腰と股関節の骨密度が偽薬より下がった(著者は体重が減った影響の可能性を挙げている)。肥満症用の量のリラグルチドの試験でも下がった。2026年10月のまとめでは、骨への影響を決めるには証拠が足りないとされている
心臓の試験(N Engl J Med 2023)心臓や血管の病気があり太り気味の人(糖尿病なし)約17,600名、平均62歳、平均約40か月。死亡は中心の評価項目ではない
飲み薬のセマグルチドの試験(N Engl J Med 2025/Diabetes Care 2026)心臓・血管の病気か慢性腎臓病のある2型糖尿病の人で、心臓が原因の死亡・心筋梗塞・脳卒中をまとめた評価のリスクが下がった。重い腎臓の病気をまとめた評価には差がなかったが、腎機能の落ち方はゆるやかだった
米国での承認(米国の添付文書)2026年8月、心臓や血管の病気のリスクが高い2型糖尿病の人で、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを下げる効能がマンジャロに加わった。オゼンピックには、2型糖尿病と慢性腎臓病のある人で、腎臓の病気が進むリスクを下げる効能が加わっている
チルゼパチドの心臓の試験(N Engl J Med 2025)別のGLP-1の薬と比べて「劣らない」ことを確かめた試験で、より優れていたという意味ではない。米国での効能の追加はこの試験にもとづく
認知症の試験(Lancet 2026)早期のアルツハイマー病の人、55〜85歳(平均72歳)、飲み薬、2年、計3,808名
出典(51件)
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  51. あわせて参照した研究(本文では扱っていません): Edison P ほか. Liraglutide in mild to moderate Alzheimer's disease: a phase 2b clinical trial. Nature Medicine. 2025. リンク
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加藤順彦
代表者加藤順彦MARUICHI PTE. LTD. CEO

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山中大介医師
監修者・医師山中大介DMTC CLINIC 院長

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