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幹細胞と2型糖尿病 ─ 血糖値の「その先」に働きかける3つの経路

thumbnail stem cell type 2 diabetes

こんにちは、ReverseAging.Tech 薬剤師の安藤です。

「血糖値の薬を、この先ずっと飲み続けるのだろうか」。

2型糖尿病と向き合う多くの方が、心のどこかで抱えているモヤモヤではないでしょうか。

けれど、本当に向き合うべき相手は、血糖値という「数字」そのものではないのかもしれません。

近年、間葉系幹細胞(体のさまざまな組織にある、修復役を担う細胞)という新しい選択肢が、その「本当の相手」に働きかけ得るとして注目を集めています。

仕組みから、今わかっていることまで、期待値も含めて誠実に整理していきます。

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目次

血糖値の薬を飲み続けても、なぜ2型糖尿病は進むのか

01 type2 diabetes blood sugar

2型糖尿病を「血糖値が高くなる病気」とだけ捉えていると、大切なことを見落としてしまいます。

高血糖はあくまで結果として現れた「症状」であり、その奥には別の引き金が潜んでいます。

なぜ薬で血糖値を下げていても病気が「進んでいく」のか、その根っこの部分から見ていきます。

高血糖は「症状」── 本当の引き金は脂肪組織でくすぶる慢性炎症

ここで鍵になるのが「慢性炎症」という考え方です。

慢性炎症とは、ケガをしたときのような激しい炎症ではなく、自覚のないまま体の内側で長くくすぶり続ける、弱い火のような炎症のことを指します。

肥満や加齢によって脂肪組織がふくらむと、そこにマクロファージ(体内の掃除役・免疫細胞)が集まってきます。

肥満した脂肪組織では、このマクロファージが全細胞の最大40%を占めることもあると報告されています⁷。

そして、これらの細胞が TNF-α・IL-6・IL-1β といった炎症性サイトカイン(炎症を広げる伝達物質)を放出し続けます。

これらの物質が、インスリンの信号を細胞に伝える経路に干渉し、インスリンの効きを鈍らせてしまうのです。

分かりやすく言えば、脂肪組織でくすぶり続ける「小さな火種」が、じわじわと全身のインスリンの効き目を悪くしている、というイメージです。

高血糖は結果に過ぎず、その上流には「脂肪組織でくすぶる慢性炎症」という本当の引き金がある、という視点が、対策を考えるうえで大きな判断軸になります。

この「慢性炎症」という敵そのものについては、こちらの記事で背景から詳しく解説しています。

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炎症 → インスリン抵抗性 → 膵β細胞の疲弊という「負の連鎖」

くすぶる炎症は、そこで止まってくれません。

炎症性サイトカインがインスリンの効きを悪くする状態を「インスリン抵抗性」と呼びます。

平たく言えば、インスリンは分泌されているのに、鍵と鍵穴がかみ合わなくなり、細胞がブドウ糖をうまく取り込めなくなった状態です。

すると体は「インスリンが足りていない」と判断し、膵臓のβ細胞(インスリンを作る細胞)に、もっと作れと号令をかけ続けます。

β細胞は懸命にインスリンを作り続けますが、無理を重ねるうちに次第に疲弊し、機能が落ちていきます。

こうして「炎症 → インスリン抵抗性 → β細胞の疲弊」という負の連鎖が回り始めます⁷。

血糖値を下げる薬の多くは、この連鎖の「結果」である高血糖にアプローチするものです。

血糖を下げる対症的なアプローチに加えて、連鎖の上流にある「炎症」そのものに手を打てたら──という発想が、幹細胞という新しい選択肢につながっていきます。


本当に怖いのは血糖値ではない ── 合併症と動脈硬化という「末路」

02 blood vessel arteriosclerosis

なぜ2型糖尿病を放っておいてはいけないのか。

その理由は、血糖値の数字そのものではなく、くすぶる炎症と高血糖が長年続いた先にあります。

その怖さを正しく知ったうえで、なぜ根本にある炎症へ手を打つ意味があるのかをご理解いただける内容です。

高血糖が「細い血管」を壊す ── 三大合併症(網膜症・腎症・神経障害)

高血糖の状態が長く続くと、体の中でも特に細い血管(細小血管)が少しずつ傷ついていきます。

この細い血管のダメージが積み重なって起きるのが、糖尿病の三大合併症と呼ばれるものです。

網膜症は、目の奥の細い血管が傷つき、進行すると視力を失うリスクにつながります。

腎症は、腎臓の細かなフィルター機能が壊れていき、進行すると人工透析が必要になることがあります。

神経障害は、手足の感覚が鈍くなり、傷に気づきにくくなることで、足の壊疽や切断のリスクにまで及ぶことがあります。

つまり、私たちが向き合うべきは「血糖値の数字」ではなく、その裏で静かに進む「血管ダメージの蓄積」なのだ、と認識をそろえておくことが大切です。

高血糖と炎症が「太い血管」を硬くする ── 動脈硬化から心筋梗塞・脳卒中へ

ダメージを受けるのは、細い血管だけではありません。

高血糖と慢性炎症は、心臓や脳につながる太い血管(大血管)を硬く、もろくしていきます。

これが動脈硬化であり、進行すると心筋梗塞や脳卒中といった、命に関わる病気の引き金になります。

ここで思い出していただきたいのが、先ほど見た「慢性炎症」です。

慢性炎症は、動脈硬化の進行そのものを加速させることが知られています。

平たく言えば、脂肪組織でくすぶっていた炎症と、ここで見ている血管ダメージは、実は一本の線でつながっているのです。

だから狙うべきは「血糖を下げる」だけでなく、上流の炎症

三大合併症も、動脈硬化も、その共通の上流をたどっていくと、慢性炎症と高血糖の連鎖にたどり着きます。

だとすれば、血糖値を下げる対症的なアプローチに加えて、共通の上流にある「炎症」そのものに働きかけられたら、と考えるのは自然な流れです。

合併症も動脈硬化も、たどれば共通の上流は「慢性炎症」。だからこそ、その根本に働きかけられる選択肢に、大きな可能性が期待されています。

まさにその「根本」に働きかけ得る細胞として研究が進んでいるのが、次にご紹介する間葉系幹細胞です。


間葉系幹細胞が「炎症の連鎖」に働きかける3つの経路

間葉系幹細胞(MSC)は、体のさまざまな組織に存在し、炎症を鎮めたり免疫のバランスを整えたりする働きを持つ細胞です。

ここからは少し専門的な話になりますが、要点はシンプルです。

間葉系幹細胞が、2型糖尿病の根っこにある「炎症の連鎖」に対して、3つの異なる「消火活動」をしてくれる可能性がある、ということです。

なお、これから紹介する経路の多くは、主に動物実験で確認された機序である点は、あらかじめ正直にお伝えしておきます。

経路1 ── 炎症の「火元スイッチ」を抑え、インスリンの効きを取り戻す

まず知っておきたいのが「NLRP3炎症小体」という言葉です。

NLRP3炎症小体とは、細胞の中にある、炎症のスイッチをオンにする装置のようなものです。

分かりやすく言えば、体内でくすぶる炎症に火をつける「火元スイッチ」のような存在です。

2型糖尿病モデルのラットを使った動物実験では、臍帯由来の間葉系幹細胞を投与すると、この NLRP3炎症小体の活性化が抑えられ、インスリン抵抗性が改善することが確認されています⁴。

仕組みとしては、炎症性サイトカイン(IL-1β・TNF-α など)がインスリンの信号伝達役である IRS-1 という分子を邪魔し、ブドウ糖の取り込みを担う経路をブロックしてしまいます。

間葉系幹細胞は、この火元スイッチを抑えることで、邪魔されていたインスリンの信号を正常に戻す方向に働く、と報告されています⁴。

つまり、炎症の火元を鎮めることで、鈍っていたインスリンの効きを取り戻す、という消火活動です。

動物実験の段階ではありますが、炎症の火元を抑えてインスリンの効きを取り戻すという経路は、慢性炎症が蓄積しやすい中高年でも、類似の仕組みで働く可能性が示唆されています。

経路2 ── 暴れる免疫細胞を「修復モード」に切り替え、膵β細胞を守る

2つめの消火活動は、免疫細胞そのものの「性格」を変えることです。

先ほど登場したマクロファージには、大きく2つのタイプがあります。

炎症を広げる「攻撃役」の M1タイプと、組織を修復する「修理役」の M2タイプです。

2型糖尿病のマウスを使った動物実験では、臍帯由来の間葉系幹細胞が、パラクリンと呼ばれる仕組み(近くの細胞に信号物質を送る働き)を介して、マクロファージを M1(攻撃役)から M2(修理役)へと切り替えることが確認されています⁵。

攻撃役の M1マクロファージは、β細胞にとって毒となる IL-1β を作り出し、インスリンを作る膵β細胞を傷つけてしまいます。

間葉系幹細胞が免疫細胞を修理役へと切り替えることで、この攻撃がやわらぎ、β細胞のダメージが抑えられ、機能が守られることが報告されています⁵。

平たく言えば、暴れて周りを傷つけていた免疫細胞を「修復モード」に切り替えることで、インスリン工場であるβ細胞を守る、という働きです。

免疫細胞を攻撃モードから修復モードへ切り替えるこの経路も、加齢とともにβ細胞の負担が増えていく中高年にとって、期待の持てる仕組みとして注目されています。

経路3 ── 細胞は消えても「メッセージ物質」が働き続ける(パラクリン効果)

3つめは、間葉系幹細胞という細胞ならではの、少し意外な働き方です。

間葉系幹細胞は、体に入ったあと、その場に長く留まったり定着したりするわけではありません。

では、なぜ効果が続くのか。

その鍵が「パラクリン効果」です。

パラクリン効果とは、細胞が周囲に向けて分泌する、さまざまな信号物質(サイトカインや増殖因子、細胞外小胞など)を通じて、離れた場所の細胞に働きかける仕組みのことです。

実際、肥満マウスを使った動物実験では、間葉系幹細胞が脾臓に集まり、そこで免疫のバランスを整える物質(IL-10 など)を増やすことで、脂肪組織の炎症とインスリン抵抗性を改善することが確認されています⁶。

注目すべきは、間葉系幹細胞が脂肪組織そのものに定着しなくても、離れた場所から全身の炎症を整えられた点です⁶。

つまり、細胞そのものは比較的早く体内から消えても、細胞が出した「メッセージ物質」が体内で働き続けるイメージです。

細胞が定着しなくても、分泌された信号物質が全身の炎症を整えていくという働き方は、2型糖尿病のように全身でくすぶる炎症に対して、大きな可能性を秘めています。

間葉系幹細胞のパラクリン効果やホーミング(体内で必要な場所へ向かう性質)といった全般的な仕組みについては、こちらの記事で入門から解説しています。

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臨床試験で「今わかっていること」── HbA1c低下・インスリン量減少の実際

ここまでは主に、動物実験で確認された機序の話でした。

では、実際にヒトを対象とした臨床試験では、何がわかっているのでしょうか。

ここからは、HbA1c(過去1〜3ヶ月、特に直近1ヶ月の影響を強く受ける平均的な血糖状態を映す指標)やインスリン量が、実際にどう変化したのかを見ていきます。

複数の臨床試験が示す「HbA1cが下がり、インスリン量が減る」変化

まず土台となるのが、複数の臨床試験を統合した研究です。

13件のランダム化比較試験(RCT)を統合したメタ分析(507名を対象)では、間葉系幹細胞を投与した群で、HbA1c が対照群と比べて平均 -0.72% 低下したと報告されています¹。

さらに、1日あたりのインスリン必要量が平均 14.50単位減少し、インスリンを自力で作る力の指標である C-peptide も有意に上昇しました¹。

数字だけ見るとピンと来にくいかもしれません。

分かりやすく言えば、「毎日打っているインスリンの量が減り、自分の体でインスリンを作る力が少し戻ってきた」という変化です。

インスリン注射の量が減ることは、日々の自己注射の負担が軽くなり、低血糖のリスク管理にもゆとりが生まれることを意味します。

さらに、2025年には、この領域で初めてのアンブレラレビュー(複数のメタ分析を統合した、エビデンスの階層で最上位に位置づけられる総括研究)が公表されました。

17件のシステマティックレビュー・メタ分析(延べ8,000名超)を統合したこの研究では、間葉系幹細胞療法が HbA1c を最大で -1.45% 改善し、特に2型糖尿病で有望だと結論づけられています⁹。

ここで大切なのは数値の受け止め方です。

平均的には -0.7% 前後の改善、そして条件が揃えば -1.4% を超える改善報告もある──と幅を持って捉えるのが、いちばん誠実で正確な理解です。

「最大 -1.45%」はあくまで最良のケースで観測された数値であり、誰もが必ずそこまで下がるという意味ではない点は、正直にお伝えしておきます⁹。

どんな方が幹細胞点滴で変化を得やすいのかについては、実際の同行録をまとめたこちらの記事も参考になります。

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一部ではインスリンから離れられた人も ── フェーズII試験が示す可能性

もう一歩踏み込んだ結果も見てみましょう。

91名の2型糖尿病の成人を対象とした、臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSC)のフェーズII試験(少人数で有効性と安全性を確かめる段階の、プラセボと比較したRCT)があります²。

この試験では、4週間隔で3回、静脈からの点滴投与を行い、48週間追跡しました²。

その結果、UC-MSC を投与した群の20%が、一次評価項目(HbA1c 7.0%未満かつインスリンを半分以上減らせた状態)を達成しました(プラセボ群は4.55%)²。

さらに注目すべきは、UC-MSC 群の一部(13.5%=37名中5名)が、平均で約37週間にわたって、一時的にインスリン注射が不要な状態を維持したことです²。

全員に同じ結果が出たわけではありません。

けれども、「インスリンから離れられた人が現実に存在した」という到達点が、きちんとした試験の中で報告されている、という事実には大きな意味があります。

全員ではないものの、一部の方がインスリン注射を手放せたという到達点が報告されており、2型糖尿病の新たな選択肢として現実的に視野に入りつつあります。

8年間・301名の実臨床データ ── 炎症マーカーまで下がった

最後に、研究室の試験だけでなく、実際の臨床現場で積み重ねられたデータを見てみましょう。

マレーシアのクリニックで、2014年から2022年までの8年間、301名の2型糖尿病患者に他家の臍帯由来間葉系幹細胞を静脈投与した記録(後ろ向きレジストリ研究)が2025年に公表されました³。

対象となった患者さんの平均年齢は61.5歳、出発点の HbA1c は7.77%で、良好なコントロール目標(7%未満)にはまだ届いていない状態でした³。

この研究では、6ヶ月・12ヶ月の時点で HbA1c、空腹時血糖、そしてインスリン抵抗性の指標である HOMA-IR(7.06 → 4.91)が有意に改善しました³。

そして、ここが機序の話と美しくつながる点なのですが、炎症が強かったサブグループでは、炎症マーカーである hs-CRP が12ヶ月後に 3.39 → 1.45 mg/L へと大きく低下していました³。

分かりやすく言えば、血液中の炎症の火種を示す数値が、ほぼ半分以下にまで下がったということです。

炎症を消火するという機序と、血糖コントロールの改善という結果が、この炎症マーカーの低下によって一本の線でつながって見えてきます。

実際に臍帯由来幹細胞の点滴を受けた当社代表・加藤の体感については、本人が語るこちらの記事もあわせてご覧ください。

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なお、これらの研究を通じて、重篤な有害事象は報告されていません¹²³⁹。

複数の論文を読み込んで整理したかぎりでも、現時点で一定の安全性が示されている領域だと感じています。

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どこまで期待できる?── 幹細胞治療の「いま」

希望のある研究結果が積み重なる一方で、まだ確かめきれていないこともあります。

誠実な情報提供者として、その現在地も正直にお伝えします。

ただし、それは「だからダメ」という話ではなく、「だからこそ、こう捉えると前向きだ」という視点とセットで見ていきましょう。

長期データと最適な投与方法は「これから確かめる段階」

現在報告されている試験の多くは、フェーズI〜IIという初期段階で、参加人数も比較的少なく、追跡期間も短めです。

実際、臨床試験全体の8割以上がこの探索的な段階にあり、最適な投与量や投与回数、タイミングについては、まだ確立されていません⁸。

つまり、1年を超える長期的な効果や安全性のデータは、今まさに蓄積されている途中だということです。

とはいえ、ここまで見てきたように、複数の試験を通じて重篤な有害事象は報告されておらず、2025年にはエビデンス階層で最上位のアンブレラレビューまで登場しました⁹。

研究デザインの標準化や長期データはこれからの課題ですが、着実に上位のエビデンスが積み上がりつつある、勢いのある研究領域だと言えます。

「現時点で言えること」を誠実に伝えるという姿勢については、こちらの期待値をテーマにした記事もあわせてご覧ください。

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効果には個人差がある ── だからこそ「土台の状態」を整える視点

もう一つ正直にお伝えすべきは、効果には個人差があるということです。

臨床試験でも、全員が同じように改善したわけではありません。

ただ、ここで注目したいのは、マレーシアの研究で「炎症が強かった人ほど炎症マーカーがはっきり下がった」というデータです³。

これは裏を返せば、体の中でくすぶる炎症の状態、つまり「土台の状態」が、結果に関わっている可能性を示しています。

だとすれば、どんな細胞を、どんな状態で体に届けるのか、という視点が重要になってきます。

そこで次に考えたいのが、「そもそも、どんな幹細胞を選ぶのがよいのか」という問いです。


なぜ「若いドナーの他家幹細胞」が選択肢になるのか

06 youthful cells vitality

幹細胞治療と聞くと、「自分の細胞を使うほうが安心なのでは」と考える方も多いかもしれません。

ところが、2型糖尿病という文脈では、少し事情が異なります。

なぜ若く元気なドナー由来の他家幹細胞が有力な選択肢になるのか、その理由を見ていきます。

糖尿病の体の中では、自分の細胞は「炎症で疲れ」、さらに「加齢で老いている」

2型糖尿病の方が自分の細胞(自家細胞)を使う場合、2つのハンデが重なる可能性があります。

1つめは、慢性炎症と高血糖という環境です。

これまで見てきたように、2型糖尿病の体内は慢性炎症がくすぶり、血糖値の高い状態が続いています。

そうした環境で暮らしてきた自分自身の間葉系幹細胞は、機能が低下している可能性が研究で示唆されています。

2つめは、加齢そのものです。

間葉系幹細胞は、加齢とともに数が減り、質(周囲に信号物質を分泌する力、免疫のバランスを整える力、増殖する力)も低下していくことが知られています。

2型糖尿病は中高年に多い病気ですから、この「炎症で疲れ、さらに加齢で老いている」という二重のハンデが、ちょうど重なりやすいのです。

平たく言えば、根本の炎症に働きかけてほしい肝心の細胞そのものが、疲れて力を落としている可能性がある、ということです。

だからこそ、炎症や加齢の影響を受けていない、若く元気なドナー由来の他家幹細胞が、有力な選択肢として期待されています。

糖尿病と老化細胞・慢性炎症の関係については、こちらの記事でも別の角度から掘り下げています。

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なぜ「若い他家幹細胞」が選ばれるのか、加齢によって細胞の数と質がどう変わるのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

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臍帯由来と骨髄由来 ── 若い細胞を「必要なときにすぐ」届ける2つの選択肢

若く元気な他家幹細胞には、大きく2つの選択肢があります。

1つめは、臍帯由来の間葉系幹細胞(UC-MSC)です。

これは、赤ちゃんとお母さんをつないでいた臍帯(へその緒)に含まれる、若く生命力にあふれた細胞に由来します。

2型糖尿病の臨床試験で最も多く使われてきたのが、この臍帯由来の細胞であり、豊富なデータが蓄積されていることは、検討にあたっての心強い判断材料の一つになります。

2つめは、骨髄由来の間葉系幹細胞(金太郎細胞)です。

若く健康なドナーの骨髄に由来する細胞で、臨床試験でも使用実績のあるソースの一つです。

いずれのラインにも共通するのは、「若く健康なドナー由来である」という強みです。

若さは、細胞が持つ力の質に直結すると考えられています。

そして、他家の細胞だからこそ、あらかじめ準備しておき、必要なときにすぐ届けられるという利点があります。

臍帯由来(UC-MSC)と骨髄由来(金太郎細胞)という2つの選択肢は、いずれも若く元気な細胞を必要なときにすぐ届けられる点で、可能性を広げてくれます。

なお、2型糖尿病に対する他家間葉系幹細胞の治療は、現時点で日本国内では承認されていません。

ここで根拠としているのは、マレーシアをはじめとする海外の実臨床データや臨床試験の結果です。

だからこそ、マレーシアという環境が、この選択肢を現実的なものにしてくれます。


まとめ:2型糖尿病の「根本」に、新しい選択肢が生まれつつある

ここまでの内容を、4つのポイントに整理します。

2型糖尿病の本当の怖さは、血糖値の数字そのものではなく、その先にある合併症や動脈硬化にあり、それらの共通の上流には慢性炎症があります。

間葉系幹細胞は、炎症の火元を抑え、免疫細胞を修復モードに切り替え、メッセージ物質で全身を整えるという3つの経路で、その根本に働きかけ得ると考えられています。

複数の臨床試験やアンブレラレビューで、HbA1c の低下やインスリン量の減少、さらには炎症マーカーの改善が報告されています。

そして、長期データや最適な投与法はこれから確かめる段階ですが、重篤な有害事象は報告されておらず、着実に前進している研究領域です。

まずは仕組みを知り、自分に合うかどうかを考える。

その次の一歩を、この記事が少しでも後押しできていれば嬉しく思います。

もっと深く知りたい方へ。

わたしたち ReverseAging.Tech は、山中医師の監修体制のもと、幹細胞治療の可能性を誠実にお伝えしています。

より詳しい仕組みや最新の知見については、無料の動画セミナーでじっくり解説しています。

参考文献

1. Mesenchymal stem cell-based therapy for type 1 & 2 diabetes mellitus patients: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials — Diabetology & Metabolic Syndrome, 2025

2. Efficacy and safety of umbilical cord-derived mesenchymal stem cells in Chinese adults with type 2 diabetes: a single-center, double-blinded, randomized, placebo-controlled phase II trial — Stem Cell Research & Therapy, 2022

3. Umbilical Cord-Derived Mesenchymal Stem Cells Infusion in Type 2 Diabetes Mellitus Patients: A Retrospective Cytopeutics’ Registry Study — Diabetes, Metabolic Syndrome and Obesity, 2025

4. Human umbilical cord-derived mesenchymal stem cells ameliorate insulin resistance by suppressing NLRP3 inflammasome-mediated inflammation in type 2 diabetes rats — Stem Cell Research & Therapy, 2017

5. Human umbilical cord-derived mesenchymal stem cells direct macrophage polarization to alleviate pancreatic islets dysfunction in type 2 diabetic mice — Stem Cell Research & Therapy, 2018

6. Human umbilical cord-derived mesenchymal stem cells alleviate insulin resistance in diet-induced obese mice via an interaction with splenocytes — Frontiers in Endocrinology, 2022

7. Chronic Adipose Tissue Inflammation Linking Obesity to Insulin Resistance and Type 2 Diabetes — Frontiers in Physiology, 2019

8. Stem cell therapy for type-2 diabetes: keeping the pedal to the metal to deliver translation to the clinic — PMC, 2024

9. Mesenchymal stem cell therapy for diabetes: An umbrella review — Tissue and Cell, 2025

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