こんにちは、ReverseAging.Tech 薬剤師の安藤です。
「ヒアルロン酸の注射を続けているけれど、以前ほど効いている感じがしない」
「かといって、人工関節の手術はまだ考えたくない」
膝の痛みを抱える50代以降の方から、このお話をよく伺います。
変形性膝関節症で悩み始めた方は、ヒアルロン酸の注射による対症療法を受けることが一般的ですが、効果を感じにくくなっていく方も少なくありません。
そして、その先には人工関節を入れる手術という選択肢があります。
ヒアルロン酸注射と、人工関節の手術、それ以外に治療法はないのでしょうか。
膝の関節の中に幹細胞を直接届けるという方法の研究が、世界中で積み重ねられています。
この記事では、いま何がどこまで報告されているのか、そして日本で何が選べて何が選べないのかを整理します。
読み終えたときに、次にどんな選択肢を検討できるのか、ご自身で考えるための材料をお届けします。
✔️ 投資対効果を最大化する「幹細胞の選び方」
✔️ 日本ではできない海外の幹細胞とは?比較情報も
変形性膝関節症で「ヒアルロン酸が効かない」と感じ始めたとき、膝はどの段階にいるのか

「条件付きで適切」と「日常的には勧めない」── ヒアルロン酸への専門家の評価は割れている
膝の痛みに対するヒアルロン酸の関節内注射は、日本でも非常に広く行われている治療です。
ところが、変形性膝関節症(以下、OA)に対するこの治療の位置づけは、国際的な指針のあいだで評価が分かれています。
変形性関節症を研究する国際的な学会(OARSI)が2019年に公表した指針では、膝への関節内ヒアルロン酸注射は「条件付きで適切」と評価されています¹⁰。
12週以降も続く痛みの軽減と、比較的良好な安全性がその根拠として挙げられています。
一方、米国の整形外科医の学会(AAOS)が2021年にまとめた指針の第3版では、ヒアルロン酸の関節内注射について「日常的な使用は推奨しない」という中程度の強さの推奨が示されました⁹。
痛みの改善幅が、患者さんが「良くなった」と実感できる最小限の変化量に届かない、という理由です。
少なくとも、専門家のあいだでも「これさえ続けていれば大丈夫」と言い切れる治療ではない、ということです¹¹。
もちろん、ヒアルロン酸が効きにくくなったからといって、次がすぐ手術になるわけではありません。
運動療法や体重管理、薬の調整など、見直せる保存療法はほかにもあります。
効きにくくなったと感じたら、気のせいと片づけず、膝の状態と治療方針を見直すタイミングです。
人工膝関節置換術は年間8万件超・最多は70代 ── 「まだ早い」と感じる人が多い理由
保存療法で痛みが抑えきれなくなったとき、次に検討されるのが人工膝関節置換術(TKA)です。
これは非常に確立した手術で、日本人工関節学会などが運営する登録制度には、2022年度の1年間で初回手術だけで8万件を超える件数が登録されています¹²。
痛みを取り除く手段として、大きな実績を積み重ねてきた治療です。
一方で、登録された初回手術を年代別に見ると、最も多いのは70代で、次いで80代が続きます¹²。
この分布が、50代・60代の方が「自分にはまだ早い」と感じる背景のひとつになっていると考えられます。
膝OA患者さんの意思決定を調べた研究でも、手術をためらう理由として最も多かったのは回復までに長い時間がかかることへの不安で、次いで合併症や麻酔への不安が挙げられていました¹⁵。
手術そのものを否定する必要はありません。
問いはむしろ、「その日が来るまでの時間を、どう使うか」に置き換わります。
手術は最後まで残る確かな選択肢です。だからこそ、その手前でできることを知っておく価値があります。
変形性膝関節症の「保存療法と手術のあいだ」── 膝に幹細胞を直接届ける関節内注射という発想

点滴ではなく「関節内注射」── 変形性膝関節症で研究が進んでいる届け方
幹細胞治療と聞くと、点滴で全身に届けるイメージを持たれる方が多いと思います。
ただ、変形性膝関節症(OA)の領域で臨床のデータが積み上がっているのは、点滴ではなく、膝の関節の中に直接注射するという届け方です。
わたしが調べた範囲では、膝OAに対する点滴(静脈からの投与)の臨床試験のデータは現時点で見当たらず、報告されているのは関節内注射によるものでした。
背景には、関節の構造があると考えられます。
軟骨そのものには血管がほとんど通っていないため、血流に乗って全身をめぐる点滴では、関節の内側まで細胞が届きにくいのです。
そのため、この記事では関節内注射に絞ってお伝えします。
イメージとしては、体じゅうをめぐらせて届くのを待つのではなく、炎症がくすぶっている場所に、働きかける細胞を直接届ける発想です。
膝の場合は、体全体をめぐらせるのではなく、痛みが起きているその関節に直接届けるという研究が進んでいます。
関節内注射という届け方については、半月板の記事でも詳しく扱っています。

膝は「閉じた部屋」── 届けた細胞がその場に留まりやすいという条件のよさ
膝の関節は、関節包という膜に囲まれた、いわば閉じた空間です。
そのため、注射で届けた細胞は全身に散らばりにくく、その場に留まりやすいと考えられています。
しかも、注射する場所はヒアルロン酸注射と同じ膝の関節内なので、多くの方にとってなじみのある形です。
ただし、注射する中身は同じではありません。
なぜ膝という部位で研究が先に進んできたのか。
その理由のひとつが、この「届けたものが働きやすい構造」にあります。
膝は、届けたものがその場で働きやすい「閉じた部屋」のような構造をしています。
なぜ膝の痛みが和らぐのか ── 幹細胞注射が変形性膝関節症の関節の中で担う3つの仕事

軟骨がすり減るのは「摩耗」だけではない ── 関節の中でくすぶり続ける炎症
変形性膝関節症(OA)は、長らく「軟骨がすり減っていく病気」と説明されてきました。
けれど現在の理解では、それだけではないと考えられています。
関節の内側を覆っている滑膜(かつまく=関節を内張りしている薄い膜)に慢性的な炎症が起こり、そこから出る炎症性の物質が、軟骨をさらに壊す方向に働く。
この炎症と軟骨の傷みが同時進行する構図が、現在の主流の見方です。
平たく言えば、使いすぎて一方通行に減っていくのではなく、火種がくすぶっていて、そこから壊れ方が加速していくということです。
膝の痛みの奥では、すり減りだけでなく「くすぶる炎症」が同時に進んでいると考えられています。
だとすれば、働きかける相手は3つあります。
炎症そのもの、軟骨そのもの、そして関節の中の環境です。
幹細胞がこの3つに対してどう働くと考えられているのか、ひとつずつ確認していきます。
炎症にブレーキをかけ、軟骨を守る ── 幹細胞が出す2種類の働き
ひとつめは、免疫調節・抗炎症の働きです。
間葉系幹細胞は、IL-10・TGF-β・IL-1Ra といった、いずれも炎症を抑える方向に働くたんぱく質を分泌することが報告されています¹。
分かりやすく言うと、滑膜でくすぶっている火を鎮める側の物質を、その場でつくり出すということです。
ふたつめは、軟骨保護と軟骨のもとになる成分の合成です。
間葉系幹細胞は軟骨の細胞に変化する能力を持っており、II型コラーゲン(軟骨の土台になるたんぱく質)など、軟骨基質の合成を促すと考えられています¹。
ただし、これは「すり減った軟骨が元どおりに再生する」という意味ではありません。
これらはレビュー論文やメタ解析の考察で議論されている経路で、細胞実験や動物実験の知見も含まれます。
現時点で言えるのは、軟骨を守る方向・つくる方向に働くことが示唆されているところまでです。
炎症を抑える働きと、軟骨のもとをつくる働き。幹細胞はその両方を同時に担いうる存在だと考えられています。
細胞そのものより「細胞が出すもの」── 関節内の環境ごと整えるパラクリン作用
3つめが、パラクリン作用と呼ばれる働きです。
パラクリン作用とは、細胞が自分の周囲に向けて物質を放出し、近くにいる細胞のふるまいを変えることを指します。
幹細胞は、さまざまな因子に加えて、細胞外小胞(さいぼうがいしょうほう)という小さな袋を出しています。
この袋の中には、周りの細胞に届けられるメッセージのような物質が詰まっています。
つまり、注射した細胞が全部そのまま軟骨に変わるのではなく、細胞が出した「メッセージ物質」が周りの軟骨細胞に働きかけ、老化や細胞死を抑えて、炎症が続いている関節内の環境を整えていくイメージです¹。
細胞そのものが軟骨に変わるだけでなく、関節の中の環境を整える働きが注目されています。
この3つの経路は、どれも「加齢にともなって慢性炎症が進んだ関節の環境」に働きかけるものとして議論されています⁸。
そのため、進行度の違う膝であっても、共通した経路が働く可能性が示唆されています。
点滴による全身的な作用のメカニズムについては、こちらの記事で解説しています。

幹細胞治療で膝の痛みと動きはどれだけ変わったのか ── 502名の臨床データが示す1年後

6ヶ月後も12ヶ月後も改善 ── 手術をしていない患者だけを集めた幹細胞注射8つの試験の結論
ここからは、実際に人を対象とした臨床試験のデータを見ていきます。
2025年に発表されたメタ解析(複数の臨床試験の結果を統計的にまとめ直した研究)では、変形性膝関節症(OA)の患者さんのみを対象にした8件のランダム化比較試験・合計502名分のデータが統合されました¹。
対象は平均60.11歳で、手術を行わず、関節内注射だけを受けた方に限定されています。
まさに、この記事を読んでくださっている方と近い立場の集団です。
効果の評価には、WOMAC(ウォマック)という質問票が使われました。
「階段の上り下りはつらいか」「歩き始めに痛むか」といった質問に患者さん自身が答え、膝の痛み・こわばり・日常の動作のしにくさを点数にするもので、点数が低いほど膝の状態が良いことを示します。
もうひとつのVASは、いま感じている痛みの強さを、本人が1本の線の上に印をつけて表すシンプルな指標です。
結果は、6ヶ月の時点でWOMACが有意に改善し、12ヶ月の時点でも改善が保たれていたと報告されています。
痛みの強さを見るVASも、6ヶ月時点で有意な改善が示されました。
平たく言えば、注射のあと半年で良くなり、その状態が1年後まで続いていた、ということです。
安全性については、有害事象・重篤な有害事象とも対照群と統計的な差はなく、報告された内容の多くは注射後の痛みと腫れでした。
なお、どれくらいの細胞量が最も適しているかについては、メタ解析どうしで異なる結論が出ており、研究が続いている段階です。
また、注射という行為そのものに伴う期待や安心感(文脈効果)が改善の一部を占めるという分析もあります¹⁶。
ただしそれを差し引いてもなお、複数の試験で比較群を統計的に上回る改善が報告されています。
手術をしていない膝に、注射だけで1年後まで続く変化が報告されています。
骨髄でも臍帯でも脂肪でも同じ方向へ ── 「関節に幹細胞を届ける」という方法そのものへの裏づけ
もうひとつ、目を引く報告があります。
2025年に発表された、変形性関節症を主な対象とした試験が中心を占めるメタ解析では、幹細胞の由来を骨髄・臍帯・脂肪に分けて解析しても、痛みの改善はいずれも同じ方向で報告されていました²。
こわばりの項目では明確な差が出ていないなど、すべての項目がそろって改善したわけではありません。
それでも、由来の異なる細胞が同じ方向の結果を出しているという事実には、意味があります。
由来が違っても同じ方向の結果が出ているというのは、このアプローチ自体への裏づけになります。
つまりここまでで確かめられているのは、「どの由来が一番か」ではなく、関節に幹細胞を届けるというアプローチ自体が、複数の由来で同じ方向の結果を出しているということです。
そして実際にどれを選べるかを分けるのは、由来の違いよりも、「誰の細胞か(すでに膝を傷めている自分の細胞か、若く健康なドナーの細胞か)」と、「どの国で何が受けられるか」という2点です。
ここから先は、その2点を順に見ていきます。
✔️ 投資対効果を最大化する「幹細胞の選び方」
✔️ 日本ではできない海外の幹細胞とは?比較情報も
「他人の幹細胞」を膝に注射して大丈夫なのか ── 3つの試験でわかっていること

臍帯由来:12ヶ月後の痛みスコアがヒアルロン酸群を上回った29名の試験
続いて、他人の細胞を使う「他家(たか)」の幹細胞を膝に注射した臨床試験を3つご紹介します。
ひとつめは、臍帯(へその緒)由来の間葉系幹細胞を使った、試験の初期段階(少人数で安全性と効果の見通しを確認する段階)のランダム化比較試験です³。
40〜65歳・症状のある変形性膝関節症(OA)の患者さん29名が、ヒアルロン酸を受ける群、幹細胞を1回受ける群、幹細胞を最初と6ヶ月後の2回受ける群に振り分けられました。
注目したいのは、比較の相手がヒアルロン酸注射だったことです。
いま実際に多くの方が続けている治療と、直接比べた試験だということです。
12ヶ月の時点で、幹細胞を2回受けた群のWOMACの痛みの項目は1.1±1.3、ヒアルロン酸群は4.3±3.5(点数が低いほど痛みが軽いことを示します)で、統計的に有意な差がついていました。
痛みの強さを表すVASでも、有意な差が報告されています。
安全性については、この試験の追跡期間内では、重篤な有害事象・死亡・永続的な障害・腫瘍・化膿性の関節炎はいずれも報告されていません。
一過性に関節に水がたまる例は両群で見られましたが、群間に差はありませんでした。
臍帯由来の細胞が注目される背景には、こうした直接比較の報告があります。
いま続けているヒアルロン酸注射と直接比べた試験で、1年後の痛みに差が出たという報告があります。
骨髄由来:MRIで「軟骨の質」の変化まで確認された30名の試験
ふたつめは、他家の骨髄由来間葉系幹細胞を使った試験です⁴。
保存療法で改善しなかった慢性的な膝の痛みを抱える患者さん30名が、幹細胞群15名とヒアルロン酸群15名に振り分けられ、1年間追跡されました。
結果として、幹細胞群では痛みと機能の指標がヒアルロン酸群より有意に良好でした。
さらにこの試験で特徴的なのは、T2 MRIという、軟骨の状態を数値で評価できる撮影法を使っている点です。
平たく言えば、患者さんの「痛みが減った」という主観だけでなく、画像の上でも変化を捉えようとした試験です。
その結果、状態の良くない軟骨の領域が有意に減っていたと報告されています。
軟骨が再生した、という話ではありません。
ただ、主観とは別の軸でも変化が捉えられているという点が、この試験の価値です。
痛みの感じ方だけでなく、画像で見る軟骨の状態にも変化が捉えられています。
若く健康なドナーの骨髄から ── 9ヶ月後も改善が続いた24名の試験
3つめは、2025年に韓国から報告された二重盲検のランダム化比較試験です⁵。
使われたのは、20〜55歳の健康なドナーから提供された骨髄由来の間葉系幹細胞です。
3ヶ月以上、手術以外の治療で改善しなかった膝の痛みを抱える患者さん24名に、超音波で位置を確認しながら関節内注射が行われました。
9ヶ月の時点で、WOMACの痛みの項目、そして膝の状態を多面的に評価するKOOSの痛みの項目のいずれも、対照群と比べて有意に改善していました。
安全性については、追跡期間を通じて重篤な有害事象は報告されていません。
この試験でわたしが注目したのは、ドナーが「若く、健康な人」であると明示されている点です。
ドナーの年齢は、細胞の質を左右しうる要素として注目されています。
若く健康なドナーの細胞を使った試験で、注射から9ヶ月後まで痛みの改善が続いていました。
なぜそれが重要なのかを、次にお話しします。
変形性膝関節症だからこそ、「自分の幹細胞」より「若いドナーの幹細胞」を考える理由

変形性関節症の患者さん由来の幹細胞は、軟骨をつくる力が落ちていたという報告
自分の細胞を使うほうが自然に思える、というお気持ちはよく分かります。
ただ、変形性関節症(OA)という病気の性質を踏まえると、少し違う見方も出てきます。
関節置換術を受けるほど進行したOAの患者さんから採取した骨髄の間葉系幹細胞と、健康なドナーから採取した細胞を比べた研究では、患者さん由来の細胞では、軟骨に変化する働きが有意に低下していたと報告されています⁶。
これは細胞を培養して比べた実験室での研究です。
また、若い個体と老いた個体の骨髄由来幹細胞が出す細胞外小胞を比べた研究では、若い個体由来のものは軟骨を保ち滑膜の炎症を抑える働きに優れていた一方、老いた個体由来のものではその効果が見られなかったと報告されています⁷。
こちらはマウスを使った動物実験と細胞実験による知見です。
一方で、幹細胞が軟骨に変化する能力はドナーの年齢や変形性関節症の有無に左右されない、とする報告もあります。
複数の有力な報告がある一方で、すべての研究が一致しているわけではないというのが正確なところです。
そのうえで機序の面から見ると、これらの研究が共通して示しているのは、関節の中の環境を整える力そのものが、年齢や関節の状態の影響を受けうるという視点です。
すでに膝を長く傷めてきた方にとって、無関係な話ではありません。
膝を傷めている本人の細胞ほど、修復を担う力が落ちている可能性が指摘されています。
ドナーの若さがなぜ効いてくるのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

待たずに使える、質がそろっている ── 臍帯由来と骨髄由来という2つのライン
もうひとつ、実務的な違いがあります。
自分の細胞を使う場合は、採取して、培養して、増えるのを待つという時間が必要になります。
他家の細胞であれば、あらかじめ準備されたものを、必要なタイミングで使えます。
さらに、事前に品質を確認したうえで揃えられるという特徴もあります。
わたしたち ReverseAging.Tech が扱っているのは、臍帯由来(ウォートンジェリー=臍帯内のゼリー状組織に由来する細胞)と、骨髄由来(「金太郎細胞」)の2つです。
いずれも若く健康なドナーから提供された他家の細胞です。
他家だからこそ、必要なときにすぐ届けられます。
若いドナー由来の細胞は、待たずに、質のそろった状態で使えるという実務的な強みがあります。
他家幹細胞の安定性とスピードについては、こちらもあわせてご覧ください。

日本でも2026年1月に動いた ── それでも「若いドナーの幹細胞注射」が国内の承認治療にない理由

自家培養軟骨が変形性膝関節症へ ── 2026年1月に保険収載された「手術と組み合わせる」再生医療
まず、明るいニュースからお伝えします。
自家培養軟骨「ジャック®」は、2026年1月15日付で「変形性膝関節症」への適応が追加され、保険収載されました¹³。
日本整形外科学会の移植・再生医療委員会からの通知で、適正使用指針と添付文書の改訂が示されています。
軟骨欠損面積の要件も「2cm²以上」に変更されました¹³。
国内でも、変形性膝関節症(OA)に対する再生医療が制度として前進しているのは確かな事実です。
そのうえで、この記事を読んでくださっている方にとっての前提条件を、3点だけ正確に整理しておきます。
ひとつめは、手術と組み合わせることが前提である点です。
対象は保存的な治療で改善しない患者さんで、培養した軟骨を欠損部に移植する外科的な治療です。
ふたつめは、自分の軟骨を採取し、培養してから移植するという流れである点です。
採取と培養のための時間が必要になります。
みっつめは、軟骨欠損面積2cm²以上といった対象要件がある点です。
誰でも受けられる枠組みではありません。
なお、2026年5月に承認されたセイビスカス®注は、適応が半月板損傷であり、変形性膝関節症ではありません¹⁴。
名前が近い時期に並ぶため、混同しないようご注意ください。
日本国内でも変形性膝関節症の再生医療は前進しています。ただし保険診療としての前提は「手術と組み合わせること」です。
制度の前進は歓迎すべきことです。
ただその前進は「手術をしたうえで、自分の細胞を使う」という前提の上にあり、「手術をせずに」を望む方のニーズとは出発点が異なります。
手術を伴わない・若いドナー由来 ── その幹細胞治療を求めるならマレーシアという選択
ここまで見てきた組み合わせを整理すると、こうなります。
他家(若く健康なドナー由来)で、手術を伴わない関節内注射。先ほどご紹介した臍帯由来の試験のように、複数回の投与を検討した研究もあります³。
なお、国内でも、再生医療等安全性確保法という法律に基づく届出のもと、自分自身の幹細胞を膝に注射する自由診療は行われています。
ただしその場合に使われるのは、すでに膝を傷めてきたご本人の細胞です。
若く健康なドナー由来の細胞を、手術を伴わずに関節へ届けるという組み合わせは、現時点で国内の承認された治療の中にはなく、海外で研究と実施が先行しています。
良い悪いの話ではありません。
承認制度と選べる治療の範囲が、国によって異なるということです。
わたしたち ReverseAging.Tech は、マレーシア・クアラルンプールのクリニックと連携し、臍帯由来と骨髄由来という2つのラインを扱っています。
手術を伴わずに、若いドナー由来の細胞を関節に届けるという選択肢が、海外では現実に存在しています。
日本と海外で選べる治療がどう違うのかは、こちらの記事で詳しく解説しています。

「手術しかない」と決める前に、いま持ち帰ってほしい3つのこと
ここまで長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。
最後に、3つだけお持ち帰りください。
– ヒアルロン酸の効きが落ちてきたと感じるのは、気のせいではありません。次の選択肢を考え始めていいタイミングのサインです。
– 膝の痛みの奥にある「くすぶる炎症」に働きかけるという道筋があり、1年後まで続く改善・画像で捉えられた軟骨の変化・ヒアルロン酸との直接比較という形で、報告が積み上がっています。
– 国内でも再生医療は前進していますが、保険診療の前提は「手術と組み合わせること」です。選べる範囲は国によって違います。知ったうえで選ぶことが、いちばん納得できる決め方だと思います。
手術は、最後まで残る確かな選択肢です。
だからこそ、その手前の時間をどう使うかを、わたしたち ReverseAging.Tech は一緒に考えたいと思っています。
半月板の損傷をきっかけに膝を痛めた方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

膝に限らず、若いドナー由来の幹細胞で何がどこまで期待できるのかを、15分の動画にまとめています。
参考文献
1. Efficacy and safety of mesenchymal stem cells in knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials — Stem Cell Research & Therapy, 2025
2. Efficacy and safety of mesenchymal stromal cell transplantation in the treatment of autoimmune and rheumatic immune diseases: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials — Stem Cell Research & Therapy, 2025
3. Umbilical Cord-Derived Mesenchymal Stromal Cells for Knee Osteoarthritis: Repeated MSC Dosing Is Superior to a Single MSC Dose and to Hyaluronic Acid in a Controlled Randomized Phase I/II Trial — Stem Cells Translational Medicine, 2019
4. Treatment of Knee Osteoarthritis With Allogeneic Bone Marrow Mesenchymal Stem Cells: A Randomized Controlled Trial — Transplantation, 2015
5. Intra-Articular Injection of Human Bone Marrow-Derived Mesenchymal Stem Cells in Knee Osteoarthritis: A Randomized, Double-Blind, Controlled Trial — Cell Transplantation, 2025
6. Reduced chondrogenic and adipogenic activity of mesenchymal stem cells from patients with advanced osteoarthritis — Arthritis & Rheumatism, 2002
7. Comparative Analysis of the Therapeutic Potential of Extracellular Vesicles Secreted by Aged and Young Bone Marrow-Derived Mesenchymal Stem Cells in Osteoarthritis Pathogenesis — Cell Proliferation, 2024
8. Intra-Articular Mesenchymal Stem Cell Injection for Knee Osteoarthritis: Mechanisms and Clinical Evidence — International Journal of Molecular Sciences, 2023
9. AAOS Clinical Practice Guideline Summary: Management of Osteoarthritis of the Knee (Nonarthroplasty), Third Edition — Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons, 2022
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12. 日本人工関節登録制度 TKAレジストリー 2022年度症例統計 — 日本整形外科学会/日本人工関節学会
13. 自家培養軟骨「ジャック」の適正使用指針改訂および保険収載について(周知依頼) — 日本整形外科学会 移植・再生医療委員会, 2026
14. 2026年度承認品目一覧(再生医療等製品) — 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA), 2026
15. A qualitative analysis of decision-making for total knee replacement in patients with osteoarthritis — Journal of Clinical Rheumatology, 2010
16. Contextual effects of mesenchymal stem cell injections for knee osteoarthritis: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials — Frontiers in Medicine, 2025

