明るいジムで、軽いダンベルを持ってスクワットをする60代の日本人女性(イメージ)

トップ / 動く

動く

壁にもたれて止まる「空気いす」で、血圧は下がる? 比較試験のまとめで分かったこと

壁に背中をつけて膝を曲げ、そのまま止まる運動(ウォールスクワット)が、血圧を下げる運動として注目されています。比較試験をまとめた研究で、どのくらい下がったのか、何が分かっていないのかを整理しました。

根拠 確立5分で読めます公開 2026.11.03更新 2026.11.03
RATRAT編集部
生成AIで下書きし、編集部が出典と内容を確認しました
この記事の要点
  • 270の比較試験をまとめた2023年の解析では、体を動かさずに力を入れ続ける運動で、診察室の血圧が上で約8、下で約4下がったと報告されている
  • 同じ解析で、ウォーキングなどの有酸素運動や筋トレよりも下がり幅が大きく、種目では壁を使ったスクワットが上の血圧で最も上位だった
  • 多くの試験は、2分止まって2分休むことを4回、週3回、4〜12週続ける方法で行われている
  • 24時間つけて測る血圧では、はっきり下がらなかったというまとめもあり、脳卒中や心臓病が減るかはまだ確かめられていない

壁にもたれて膝を曲げたまま止まる運動を続けると、診察室で測る血圧が下がったと、多くの比較試験のまとめで報告されています。下がり幅は上の血圧で数mmHg〜8mmHgほどで、ウォーキングや筋トレと同じか、それより大きい値でした。

ただし、試験の多くは人数が少なく期間も数週間です。24時間の血圧や、脳卒中・心臓病が減るかまでは確かめられていません。

どんな運動のこと?

筋肉の長さを変えずに力を入れ続ける運動を、アイソメトリック運動(等尺性運動)といいます。研究でよく使われているのは、壁に背中をつけて膝を曲げ、椅子に座るような姿勢のまま止まる「ウォールスクワット」と、握力計のような器具を握り続ける「ハンドグリップ」です。日本では「空気いす」と呼ばれる姿勢に近い運動です。

英国で行われた試験では、2分止まって2分休むことを4回くり返し、週3回、4週間続けました。膝の角度は、心拍数を目安に一人ひとり決めています。1回あたりの運動は8分ほどで、道具は要りません。

血圧はどのくらい下がった?

2023年に英国の研究チームが、運動と血圧を調べた270の比較試験(くじ引きで組に分け、運動する組としない組を比べる方法)をまとめました。参加者は合わせて1万5,827人です。運動しない組と比べた血圧の下がり幅は、次のとおりでした。

有酸素運動では上が約4.5、下が約2.5mmHgでした。筋トレは上が約4.6、下が約3.0mmHg、両方を組み合わせた運動は上が約6.0、下が約2.5mmHgです。アイソメトリック運動は上が約8.2、下が約4.0mmHgで、最も大きな下がり幅でした。種目ごとに比べると、上の血圧ではウォールスクワットが最も上位でした。

2026年に中国の研究チームが、この10年ほどの40の比較試験を新たにまとめた解析でも、上が約6.7、下が約2.7mmHg下がっていました。週3回・8週間より長く続けた試験や、高血圧の人を対象にした試験で、下がり幅が大きい傾向がありました。ただし、試験ごとの結果のばらつきは大きいとされています。

24時間の血圧でも下がる?

診察室の血圧と、24時間つけたままにする機器で測る血圧では、結果が異なります。高血圧の人415人を対象にした12の試験のまとめでは、診察室の血圧は上が約7.5mmHg下がりましたが、24時間の平均は、はっきりとは下がっていませんでした。夜の間の血圧は下がっていました。

ハンドグリップの試験をまとめた2024年の解析でも、24時間の上の血圧ははっきり変わらず、下がったのは起きている間の下の血圧(約2mmHg)だけでした。診察室で測る値だけで判断するのは早いと考えられます。

やめたら元に戻る?

南米のコロンビアで、薬を飲んでいない高血圧の大人77人が参加した比較試験があります。職場で週3回、12週間続けたところ、上の血圧はウォールスクワットの組で約12.9mmHg、ハンドグリップの組で約11.2mmHg下がりました。運動しない組はほぼ変わりませんでした。下の血圧には、組の間で差がありませんでした。

その後の12週間は週1回に減らしましたが、下がった値はおおむね保たれていました。続ける回数を減らしても維持できる可能性がありますが、1つの試験の結果です。

効果ごとの根拠の強さ判定の基準
調べたこと根拠結果
アイソメトリック運動で診察室の血圧が下がるか(270の比較試験のまとめ)根拠 確立上が約8.2、下が約4.0mmHg低下。運動の種類の中で最も大きい
同じ解析での種目の比較根拠 確立上の血圧ではウォールスクワットが最も上位
最近10年ほどの40の比較試験のまとめ根拠 確立上が約6.7、下が約2.7mmHg低下。結果のばらつきは大きい
24時間の血圧(高血圧の人・12の試験のまとめ)根拠 確立診察室では低下。24時間の平均ははっきり下がらず、夜間は低下
ハンドグリップで24時間の血圧が下がるか(まとめ)根拠 確立起きている間の下の血圧だけ約2mmHg低下
週1回に減らしても保たれるか(77人の比較試験)根拠 有望12週間はおおむね保たれた
脳卒中や心臓病が減るか—確かめた試験はない
まだ分かっていないことまとめられた試験の多くは、数十人規模で、期間は4〜12週ほどです。まとめによっては、試験ごとの結果のばらつきが大きいとされています。24時間つけて測る血圧では、はっきりした低下が見られなかったまとめがあり、診察室の値の低下がそのまま日常の血圧に当てはまるかは分かっていません。脳卒中や心臓病が減るか、何年も続けたときにどうなるかを調べた試験はありません。この記事で紹介した個別の試験は英国とコロンビアで行われたもので、日本の人や高齢の方、膝に痛みのある方にどこまで当てはまるかもはっきりしません。各まとめの抄録には、研究資金の記載がありません。

では、どうすればよいか

ウォーキングや筋トレと組み合わせる運動の一つとして、短い時間で取り入れられる方法です。多くの試験は、2分を4回、週3回という形で行われています。血圧の薬を飲んでいる方や、心臓・血管の病気がある方は、薬の調整にも関わるため、始める前に医師に相談してください。

今日からできること
  • 壁に背中をつけ、膝を軽く曲げた、無理のない深さから始める。太ももがきつく感じる程度を目安にし、膝を深く曲げすぎない
  • 研究でよく使われた形は、2分止まって2分休むことを4回、週3回。最初は30秒ほどから始めてもよい
  • 止まっている間も息を止めず、ふつうに呼吸を続ける
  • ウォーキングや筋トレの代わりにせず、組み合わせる
  • 血圧の薬を飲んでいる方、心臓や血管の病気がある方、膝に痛みがある方は、始める前に医師に相談する。めまい・胸の痛み・息苦しさが出たらすぐにやめる
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
270の比較試験のまとめ(Br J Sports Med 2023)1990年〜2023年2月に発表された、2週間以上の運動と運動しない組を比べた比較試験270本・1万5,827人。安静時の血圧の低下は、有酸素運動−4.49/−2.53、筋トレ−4.55/−3.04、組み合わせ−6.04/−2.54、高強度インターバル−4.08/−2.50、アイソメトリック運動−8.24/−4.00mmHg。ネットワーク解析で上の血圧はアイソメトリック運動が最上位、種目ではウォールスクワットが上の血圧で最上位。英国カンタベリー・クライストチャーチ大学など。著者は利益相反なしと開示
40の比較試験のまとめ(Front Public Health 2026)2025年9月までの比較試験40本(主に最近10年)。上の血圧−6.72(95%信頼区間−8.21〜−5.23、I²=74%)、下の血圧−2.72mmHg。週3回・8週間超のウォールスクワット、男性、高血圧の人で低下が大きい傾向(部分集団の解析)。回帰分析では有意な要因なし。中国の研究チーム。商業上の利益相反なしと開示。2026年5月に訂正(erratum)あり
高血圧の人の12試験のまとめ(Curr Hypertens Rep 2023)高血圧の成人を対象に、アイソメトリック運動と運動なし・偽の運動を比べた試験12本・415人。診察室の上の血圧−7.47、下−3.17mmHg。24時間・日中の平均は有意な低下なし。夜間は上−4.28、下−2.22mmHg。オーストラリア・ニューイングランド大学。著者は利益相反なしと開示
ハンドグリップと24時間血圧のまとめ(J Cardiopulm Rehabil Prev 2024)18歳以上を対象にした、未発表の研究も含めたまとめ(2023年7月まで)。起きている間の下の血圧のみ−2.02mmHg。24時間の上の血圧(−1.31)、睡眠中・起きている間の上の血圧などは有意な差なし。ブラジルの研究チーム。利益相反なしと開示
コロンビアの77人の比較試験(J Clin Hypertens 2023)薬を飲んでいない高血圧(上の血圧130以上)の成人77人。職場で1回4セット、週3回12週間。上の血圧はハンドグリップ−11.2、ウォールスクワット−12.9、運動なし−0.4mmHg。下の血圧は組の間で差なし。その後12週間は週1回で、組の中の有意な変化なし。著者は利益相反なしと開示
英国の28人の試験(Eur J Appl Physiol 2017)血圧が正常な健康な男性28人のクロスオーバー試験(同じ人が運動する期間としない期間を経験)。自宅でウォールスクワットを2分×4回、週3回、4週間。安静時の上の血圧−4、下−3mmHg、心拍数−5拍/分。少人数・男性のみ
出典
  1. Edwards JJ, et al. Exercise training and resting blood pressure: a large-scale pairwise and network meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Sports Med. 2023. PMID 37491419
  2. Yan Y, et al. Effects of isometric training based on the entire population on blood pressure regulation: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Front Public Health. 2026. PMID 41846839
  3. Baffour-Awuah B, et al. Isometric Resistance Training to Manage Hypertension: Systematic Review and Meta-analysis. Curr Hypertens Rep. 2023. PMID 36853479
  4. Oliveira MS, et al. Effects of Isometric Handgrip Training on Ambulatory Blood Pressure in Individuals Over 18 Years Old: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Cardiopulm Rehabil Prev. 2024. PMID 39185910
  5. Cohen DD, et al. Reductions in systolic blood pressure achieved by hypertensives with three isometric training sessions per week are maintained with a single session per week. J Clin Hypertens (Greenwich). 2023. PMID 36965163
  6. Wiles JD, et al. Home-based isometric exercise training induced reductions resting blood pressure. Eur J Appl Physiol. 2017. PMID 27853886
無料動画セミナーのサムネイル
動画 約15分
特集・無料動画セミナー若返り研究の最前線にある「幹細胞」。いま、どこまで来ている?

15分の無料動画で、幹細胞の仕組みと最新の研究、受けられる場所や費用の考え方までお伝えします。

この記事は役に立ちましたか?

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。

次に読む

ReverseAging.Tech をつくる人

加藤順彦
代表者加藤順彦MARUICHI PTE. LTD. CEO

自らの体験をきっかけに、幹細胞点滴の魅力を広めています。100名を超える方々をご案内する中で、その可能性をますます実感しています。人生100年時代にふさわしい選択肢として、あなたの選択肢のひとつに加えていただけたら嬉しいです。

山中大介医師
監修者・医師山中大介DMTC CLINIC 院長

美容医療に携わる中で、幹細胞治療の可能性に注目しています。医師としての視点から、安心できる正しい情報を皆さんにお届けします。

よく読まれている記事

  1. シューマッハ氏の近況報道と、幹細胞治療について分かっていること
  2. マレーシアで受ける幹細胞点滴のご案内
  3. 半月板の再生医療「セイビスカス注」承認、誰がいつ受けられる?
  4. Muse細胞はいまどうなっている?開発中止の背景と研究の現在地
  5. 自分の脂肪から採る幹細胞、利点と限界は?自家と他家の比べ方
健康長寿のニュースを、メールで

世界の研究と話題から、編集部が選んだ記事をお届けします。