
壁にもたれて止まる「空気いす」で、血圧は下がる? 比較試験のまとめで分かったこと
壁に背中をつけて膝を曲げ、そのまま止まる運動(ウォールスクワット)が、血圧を下げる運動として注目されています。比較試験をまとめた研究で、どのくらい下がったのか、何が分かっていないのかを整理しました。
- 270の比較試験をまとめた2023年の解析では、体を動かさずに力を入れ続ける運動で、診察室の血圧が上で約8、下で約4下がったと報告されている
- 同じ解析で、ウォーキングなどの有酸素運動や筋トレよりも下がり幅が大きく、種目では壁を使ったスクワットが上の血圧で最も上位だった
- 多くの試験は、2分止まって2分休むことを4回、週3回、4〜12週続ける方法で行われている
- 24時間つけて測る血圧では、はっきり下がらなかったというまとめもあり、脳卒中や心臓病が減るかはまだ確かめられていない
壁にもたれて膝を曲げたまま止まる運動を続けると、診察室で測る血圧が下がったと、多くの比較試験のまとめで報告されています。下がり幅は上の血圧で数mmHg〜8mmHgほどで、ウォーキングや筋トレと同じか、それより大きい値でした。
ただし、試験の多くは人数が少なく期間も数週間です。24時間の血圧や、脳卒中・心臓病が減るかまでは確かめられていません。
どんな運動のこと?
筋肉の長さを変えずに力を入れ続ける運動を、アイソメトリック運動(等尺性運動)といいます。研究でよく使われているのは、壁に背中をつけて膝を曲げ、椅子に座るような姿勢のまま止まる「ウォールスクワット」と、握力計のような器具を握り続ける「ハンドグリップ」です。日本では「空気いす」と呼ばれる姿勢に近い運動です。
英国で行われた試験では、2分止まって2分休むことを4回くり返し、週3回、4週間続けました。膝の角度は、心拍数を目安に一人ひとり決めています。1回あたりの運動は8分ほどで、道具は要りません。
血圧はどのくらい下がった?
2023年に英国の研究チームが、運動と血圧を調べた270の比較試験(くじ引きで組に分け、運動する組としない組を比べる方法)をまとめました。参加者は合わせて1万5,827人です。運動しない組と比べた血圧の下がり幅は、次のとおりでした。
有酸素運動では上が約4.5、下が約2.5mmHgでした。筋トレは上が約4.6、下が約3.0mmHg、両方を組み合わせた運動は上が約6.0、下が約2.5mmHgです。アイソメトリック運動は上が約8.2、下が約4.0mmHgで、最も大きな下がり幅でした。種目ごとに比べると、上の血圧ではウォールスクワットが最も上位でした。
2026年に中国の研究チームが、この10年ほどの40の比較試験を新たにまとめた解析でも、上が約6.7、下が約2.7mmHg下がっていました。週3回・8週間より長く続けた試験や、高血圧の人を対象にした試験で、下がり幅が大きい傾向がありました。ただし、試験ごとの結果のばらつきは大きいとされています。
24時間の血圧でも下がる?
診察室の血圧と、24時間つけたままにする機器で測る血圧では、結果が異なります。高血圧の人415人を対象にした12の試験のまとめでは、診察室の血圧は上が約7.5mmHg下がりましたが、24時間の平均は、はっきりとは下がっていませんでした。夜の間の血圧は下がっていました。
ハンドグリップの試験をまとめた2024年の解析でも、24時間の上の血圧ははっきり変わらず、下がったのは起きている間の下の血圧(約2mmHg)だけでした。診察室で測る値だけで判断するのは早いと考えられます。
やめたら元に戻る?
南米のコロンビアで、薬を飲んでいない高血圧の大人77人が参加した比較試験があります。職場で週3回、12週間続けたところ、上の血圧はウォールスクワットの組で約12.9mmHg、ハンドグリップの組で約11.2mmHg下がりました。運動しない組はほぼ変わりませんでした。下の血圧には、組の間で差がありませんでした。
その後の12週間は週1回に減らしましたが、下がった値はおおむね保たれていました。続ける回数を減らしても維持できる可能性がありますが、1つの試験の結果です。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| アイソメトリック運動で診察室の血圧が下がるか(270の比較試験のまとめ) | 根拠 確立 | 上が約8.2、下が約4.0mmHg低下。運動の種類の中で最も大きい |
| 同じ解析での種目の比較 | 根拠 確立 | 上の血圧ではウォールスクワットが最も上位 |
| 最近10年ほどの40の比較試験のまとめ | 根拠 確立 | 上が約6.7、下が約2.7mmHg低下。結果のばらつきは大きい |
| 24時間の血圧(高血圧の人・12の試験のまとめ) | 根拠 確立 | 診察室では低下。24時間の平均ははっきり下がらず、夜間は低下 |
| ハンドグリップで24時間の血圧が下がるか(まとめ) | 根拠 確立 | 起きている間の下の血圧だけ約2mmHg低下 |
| 週1回に減らしても保たれるか(77人の比較試験) | 根拠 有望 | 12週間はおおむね保たれた |
| 脳卒中や心臓病が減るか | — | 確かめた試験はない |
では、どうすればよいか
ウォーキングや筋トレと組み合わせる運動の一つとして、短い時間で取り入れられる方法です。多くの試験は、2分を4回、週3回という形で行われています。血圧の薬を飲んでいる方や、心臓・血管の病気がある方は、薬の調整にも関わるため、始める前に医師に相談してください。
- 壁に背中をつけ、膝を軽く曲げた、無理のない深さから始める。太ももがきつく感じる程度を目安にし、膝を深く曲げすぎない
- 研究でよく使われた形は、2分止まって2分休むことを4回、週3回。最初は30秒ほどから始めてもよい
- 止まっている間も息を止めず、ふつうに呼吸を続ける
- ウォーキングや筋トレの代わりにせず、組み合わせる
- 血圧の薬を飲んでいる方、心臓や血管の病気がある方、膝に痛みがある方は、始める前に医師に相談する。めまい・胸の痛み・息苦しさが出たらすぐにやめる
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 270の比較試験のまとめ(Br J Sports Med 2023) | 1990年〜2023年2月に発表された、2週間以上の運動と運動しない組を比べた比較試験270本・1万5,827人。安静時の血圧の低下は、有酸素運動−4.49/−2.53、筋トレ−4.55/−3.04、組み合わせ−6.04/−2.54、高強度インターバル−4.08/−2.50、アイソメトリック運動−8.24/−4.00mmHg。ネットワーク解析で上の血圧はアイソメトリック運動が最上位、種目ではウォールスクワットが上の血圧で最上位。英国カンタベリー・クライストチャーチ大学など。著者は利益相反なしと開示 |
|---|---|
| 40の比較試験のまとめ(Front Public Health 2026) | 2025年9月までの比較試験40本(主に最近10年)。上の血圧−6.72(95%信頼区間−8.21〜−5.23、I²=74%)、下の血圧−2.72mmHg。週3回・8週間超のウォールスクワット、男性、高血圧の人で低下が大きい傾向(部分集団の解析)。回帰分析では有意な要因なし。中国の研究チーム。商業上の利益相反なしと開示。2026年5月に訂正(erratum)あり |
| 高血圧の人の12試験のまとめ(Curr Hypertens Rep 2023) | 高血圧の成人を対象に、アイソメトリック運動と運動なし・偽の運動を比べた試験12本・415人。診察室の上の血圧−7.47、下−3.17mmHg。24時間・日中の平均は有意な低下なし。夜間は上−4.28、下−2.22mmHg。オーストラリア・ニューイングランド大学。著者は利益相反なしと開示 |
| ハンドグリップと24時間血圧のまとめ(J Cardiopulm Rehabil Prev 2024) | 18歳以上を対象にした、未発表の研究も含めたまとめ(2023年7月まで)。起きている間の下の血圧のみ−2.02mmHg。24時間の上の血圧(−1.31)、睡眠中・起きている間の上の血圧などは有意な差なし。ブラジルの研究チーム。利益相反なしと開示 |
| コロンビアの77人の比較試験(J Clin Hypertens 2023) | 薬を飲んでいない高血圧(上の血圧130以上)の成人77人。職場で1回4セット、週3回12週間。上の血圧はハンドグリップ−11.2、ウォールスクワット−12.9、運動なし−0.4mmHg。下の血圧は組の間で差なし。その後12週間は週1回で、組の中の有意な変化なし。著者は利益相反なしと開示 |
| 英国の28人の試験(Eur J Appl Physiol 2017) | 血圧が正常な健康な男性28人のクロスオーバー試験(同じ人が運動する期間としない期間を経験)。自宅でウォールスクワットを2分×4回、週3回、4週間。安静時の上の血圧−4、下−3mmHg、心拍数−5拍/分。少人数・男性のみ |
- Edwards JJ, et al. Exercise training and resting blood pressure: a large-scale pairwise and network meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Sports Med. 2023. PMID 37491419
- Yan Y, et al. Effects of isometric training based on the entire population on blood pressure regulation: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Front Public Health. 2026. PMID 41846839
- Baffour-Awuah B, et al. Isometric Resistance Training to Manage Hypertension: Systematic Review and Meta-analysis. Curr Hypertens Rep. 2023. PMID 36853479
- Oliveira MS, et al. Effects of Isometric Handgrip Training on Ambulatory Blood Pressure in Individuals Over 18 Years Old: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Cardiopulm Rehabil Prev. 2024. PMID 39185910
- Cohen DD, et al. Reductions in systolic blood pressure achieved by hypertensives with three isometric training sessions per week are maintained with a single session per week. J Clin Hypertens (Greenwich). 2023. PMID 36965163
- Wiles JD, et al. Home-based isometric exercise training induced reductions resting blood pressure. Eur J Appl Physiol. 2017. PMID 27853886

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この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。










