朝日が差し込む、霧のかかった草原
写真はイメージです

トップ / 動く

動く

太極拳のようなゆっくりした運動で、体は変わる? 比較試験で分かったこと

息が上がらないゆっくりした動きでも、運動として意味があるのでしょうか。中高年の太極拳について、バランスや転倒、血圧、眠りを調べた比較試験とそのまとめから整理しました。

根拠 有望5分で読めます公開 2026.11.01更新 2026.11.01
RATRAT編集部
生成AIで下書きし、編集部が出典と内容を確認しました
この記事の要点
  • 高齢者の24の比較試験のまとめでは、太極拳をした組で転んだ人の割合が24%少なかったと報告されている
  • 健康な高齢者の28試験のまとめでも、立ち上がって歩く動作や片足立ちの時間が改善した。週2回より多く、1回45分以上で差が大きかった
  • 血圧がやや高めの342人の試験では、1年後の上の血圧が有酸素運動の組より2.4多く下がった。ただし1本の試験の結果である
  • 不眠のある50歳以上の試験では、3か月の時点で認知行動療法に及ばず、1年後には劣らない程度だった

太極拳を続けた高齢者では、立つ・歩くときのバランスが良くなり、転ぶ人の割合が24%少なかったと、24の比較試験のまとめで報告されています。血圧や眠りについても、ほかの運動や治療法と比べた大きめの比較試験が出てきましたが、こちらは1本ずつの結果で、まだ確かめている段階です。

太極拳は、中国で生まれた武術をもとにした運動です。ゆっくりと体重を左右の足に移しながら、腕や体を大きく動かします。息が上がるほどではないので、激しい運動が苦手な方でも始めやすいとされています。

バランスは良くなる? 転びにくくなる?

2023年のまとめでは、高齢者を対象にした24の比較試験(くじ引きで組に分け、片方だけ運動してもらって比べる方法)を集めています。太極拳をした組では、転んだ人の割合が24%少なく、転んだ回数も少なくなっていました。健康な高齢者でも、転びやすい高齢者でも、同じ傾向が見られています。続ける期間が長く、回数が多いほど差が大きくなっていました。

2024年には、持病のない健康な高齢者だけを対象にした28の比較試験、約2,000人のまとめも出ています。椅子から立って3m歩き、戻って座るまでの時間(TUGテスト)は、平均で約1秒短くなっていました。片足で立っていられる時間も、平均で約5秒長くなっていました。週2回より多く、1回45分以上の組で差が大きかったと報告されています。流派で比べると、楊式のほうが、孫式より差が大きかったとされています。ただし、流派を比べた試験の数は多くありません。

血圧は下がる?

中国で、血圧がやや高め(上が120〜139、または下が80〜89)の18〜65歳、342人を対象にした比較試験があります。太極拳の組と、早歩きやジョギングなどの有酸素運動の組に分け、どちらも週4回・1回60分を1年間続けました。

1年後、上の血圧は太極拳の組で平均7.0、有酸素運動の組で平均4.6下がっていました。差は2.4で、太極拳の組のほうが大きく下がっていました。24時間つけて測る血圧や、夜間の血圧でも同じ傾向でした。ただし、この結果は1本の試験によるもので、指導者がつく週4回の教室に1年通った人の数字です。

13の比較試験、1,746人をまとめた2025年の解析では、運動をしない組と比べて、中性脂肪や空腹時の血糖値、下の血圧、腹囲が下がり、HDL(善玉)コレステロールが上がったと報告されています。

眠りは変わる?

香港で、慢性的な不眠のある50歳以上の200人を対象にした比較試験があります。太極拳の教室と、不眠の治療で最初に勧められる認知行動療法(眠りに関する考え方や習慣を見直す方法)の教室に分け、どちらも週2回・1回1時間を3か月続けました。

3か月の時点では、不眠の重さの点数は認知行動療法の組のほうが大きく下がっており、太極拳は及びませんでした。1年後に改めて調べると、両方の組の差は小さくなり、太極拳の組も認知行動療法に劣らない程度まで下がっていました。期間中に、運動による有害な出来事は起きていません。この試験は、もともと眠れない悩みを抱えた人を対象にしたもので、よく眠れている人が太極拳を始めて眠りが深くなるかは調べていません。

効果ごとの根拠の強さ判定の基準
調べたこと根拠結果
転んだ人の割合(高齢者・24の比較試験のまとめ)根拠 確立24%少ない
バランスの検査(健康な高齢者・28の比較試験のまとめ)根拠 確立立って歩く時間が約1秒短く、片足立ちが約5秒長く
上の血圧(血圧がやや高めの342人・1年の比較試験)根拠 有望有酸素運動の組より2.4多く下がった
中性脂肪・血糖値・腹囲(13の比較試験のまとめ)根拠 有望運動しない組より下がった。根拠の確かさは中程度
不眠の重さ(50歳以上の200人・認知行動療法との比較)根拠 有望3か月では及ばず、1年後は劣らない程度
まだ分かっていないことまとめに入った試験の多くは中国で行われた小規模なもので、太極拳の流派や回数、期間がまちまちです。結果のばらつきも大きく、バランスの検査では差の大きさが試験によって違っていました。血圧の試験は1本だけで、医療機関の指導つきで週4回を1年続けた人の結果です。自宅で独学で行った場合に同じ差が出るかは分かっていません。不眠の試験は、香港の中国系の人だけを対象にしており、3か月の時点では認知行動療法に及びませんでした。13試験のまとめでは、血圧や血糖値に関わる持病のある人も対象に含まれています。太極拳で寿命がのびるかを確かめた比較試験はありません。

どのくらい続ければよい?

研究で多かったのは、週2〜4回・1回45〜60分を3か月以上続ける形です。地域の教室や、公民館のサークルで習える場所もあります。ほかの運動の代わりにするより、ウォーキングや筋トレと組み合わせて続けるのがよいでしょう。不眠や高い血圧で治療を受けている方は、太極拳を治療の代わりにはせず、主治医と相談しながら加えてください。

今日からできること
  • 地域の教室や公民館のサークルなど、指導者のいる場所で基本の動きを習う
  • 研究で多かった週2〜4回・1回45〜60分を目安に、まずは3か月続けてみる
  • ウォーキングや筋トレなど、ほかの運動と組み合わせる
  • 膝や腰に痛みのある方、血圧や不眠で治療を受けている方は、始める前に医師に相談する。治療をやめて太極拳に置き換えることはしない
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
高齢者の24試験のまとめ(Front Public Health 2023)高齢者を対象にした比較試験24本。太極拳で転倒の危険が低下(リスク比0.76)、転倒回数も減少。TUGテスト・ファンクショナルリーチ・片足立ち・バーグバランススケール・歩行速度も改善。健康な人と転倒の危険が高い人の両方で効果があり、期間と頻度が多いほど大きい。著者は利益相反なしと開示
健康な高齢者の28試験のまとめ(Front Public Health 2024)健康な高齢者2,000人・比較試験28本。TUGテストが1.04秒短縮、片足立ちが5.03秒延長など。週2回を超える頻度、1回45分を超える時間で効果が大きい。ばらつきが大きい項目あり(I²=54〜88%)。成都体育学院。著者は利益相反なしと開示
血圧がやや高めの342人の試験(JAMA Netw Open 2024)中国の2病院、18〜65歳(平均49歳)、収縮期120〜139または拡張期80〜89mmHg。太極拳173人と有酸素運動169人、いずれも指導つき週4回・1回60分を12か月。12か月の診察室の収縮期血圧は太極拳で−7.01、有酸素運動で−4.61、群間差−2.40mmHg。24時間・夜間の収縮期血圧も太極拳で大きく低下。著者は利益相反なしと開示
不眠のある50歳以上の200人の試験(BMJ 2025)香港、慢性不眠と診断された50歳以上200人。太極拳と認知行動療法を週2回・1時間、3か月。不眠重症度指数は3か月で太極拳−6.67、認知行動療法−11.19で、太極拳は非劣性を示せず。15か月では−9.51と−10.18で非劣性。期間中の有害事象なし。資金は香港研究資助局・香港大学・米国立衛生研究所。著者は関連する利益相反なしと開示
心臓・代謝の危険因子のまとめ(J Integr Complement Med 2025)肥満・脂質異常・高血圧・血糖異常などのある成人を対象にした比較試験13本・1,746人。運動しない組と比べて中性脂肪・空腹時血糖・拡張期血圧(−4.49)・腹囲(−3.34)が低下、HDLコレステロールが上昇。根拠の確かさ(GRADE)は中程度。重い有害事象の報告なし
出典
  1. Chen W, et al. Tai Chi for fall prevention and balance improvement in older adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Front Public Health. 2023. PMID 37736087
  2. Cui Z, et al. Tai chi improves balance performance in healthy older adults: a systematic review and meta-analysis. Front Public Health. 2024. PMID 39588165
  3. Li X, et al. Effect of Tai Chi vs Aerobic Exercise on Blood Pressure in Patients With Prehypertension: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2024. PMID 38335001
  4. Siu PM, et al. Tai chi or cognitive behavioural therapy for treating insomnia in middle aged and older adults: randomised non-inferiority trial. BMJ. 2025. PMID 41297969
  5. Wang M, et al. The Effect of Tai Chi on Cardiometabolic Risk Factors: Systematic Review and Meta-Analysis. J Integr Complement Med. 2025. PMID 40042393
無料動画セミナーのサムネイル
動画 約15分
特集・無料動画セミナー若返り研究の最前線にある「幹細胞」。いま、どこまで来ている?

15分の無料動画で、幹細胞の仕組みと最新の研究、受けられる場所や費用の考え方までお伝えします。

この記事は役に立ちましたか?

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。

次に読む

ReverseAging.Tech をつくる人

加藤順彦
代表者加藤順彦MARUICHI PTE. LTD. CEO

自らの体験をきっかけに、幹細胞点滴の魅力を広めています。100名を超える方々をご案内する中で、その可能性をますます実感しています。人生100年時代にふさわしい選択肢として、あなたの選択肢のひとつに加えていただけたら嬉しいです。

山中大介医師
監修者・医師山中大介DMTC CLINIC 院長

美容医療に携わる中で、幹細胞治療の可能性に注目しています。医師としての視点から、安心できる正しい情報を皆さんにお届けします。

よく読まれている記事

  1. シューマッハ氏の近況報道と、幹細胞治療について分かっていること
  2. マレーシアで受ける幹細胞点滴のご案内
  3. 半月板の再生医療「セイビスカス注」承認、誰がいつ受けられる?
  4. Muse細胞はいまどうなっている?開発中止の背景と研究の現在地
  5. 自分の脂肪から採る幹細胞、利点と限界は?自家と他家の比べ方
健康長寿のニュースを、メールで

世界の研究と話題から、編集部が選んだ記事をお届けします。