木の盆にのせた急須と3つの湯のみの緑茶

トップ / 目と脳

目と脳

歯が少ないと、物忘れが増える? 歯の本数と認知症の研究で分かったこと

歯を失った人ほど、その後に認知機能が落ちやすいという関連が、世界の追跡研究で報告されています。入れ歯を使う人ではどうか、歯の手入れで変わるのかまで、研究の段階を分けて整理しました。

根拠 初期5分で読めます公開 2026.10.25更新 2026.10.25
RATRAT編集部
生成AIで下書きし、編集部が出典と内容を確認しました
この記事の要点
  • 歯が少ない人や歯がすべてない人は、認知症や認知機能の低下が起きる危険が1.2〜1.5倍程度高いと、追跡研究のまとめで報告されている
  • 入れ歯を使っている人では、この関連がはっきりしなかったという分析がある
  • いずれも観察研究で、歯を失うことが原因なのか、もともとの健康状態や暮らしの違いなのかは区別できていない
  • 歯科衛生士の指導で考える力のテストの点が上がったという日本の比較試験はあるが、50人の小さな試験にとどまる

歯を失った人ほど、のちに認知症や認知機能の低下が起きやすいという関連が、多くの追跡研究で報告されています。ただし、ほとんどが観察研究で、歯を守れば認知症を防げるかは、まだ確かめられていません。

歯の本数と認知症には、どんな関係がある?

2021年に、時間を追った14の研究、3万4,074人分をまとめた解析が発表されました。歯を多く失った人は、認知機能(覚える・考える・判断する力)が落ちた状態になる危険が約1.5倍でした。認知症と診断される危険は約1.3倍です。

歯の数と危険の関係も調べられています。8つの研究の分析では、失った歯が1本増えるごとに危険が少しずつ高まる、直線的な関係が見られました。歯がすべてない人では、認知機能の低下が約1.5倍、認知症が約1.4倍でした。

2023年には、18の追跡研究、約35万6,000人のまとめも出ています。平均8.6年の追跡で、歯を失った人は認知症の危険が1.15倍、認知機能の低下が1.20倍と報告されました。

最新のまとめでは、どう評価されている?

2026年9月には、米国などの研究チームが59の研究を集めたまとめを発表しました。認知症や軽度認知障害(物忘れなどがあるが、暮らしにはほぼ支障がない段階)との関係を、28の研究で統合しています。

歯がすべてない人では危険が1.26倍、歯が少ない人では1.27倍でした。重い歯周病(歯ぐきの炎症が進み、歯を支える骨がやせる病気)でも1.16倍です。

一方で研究チームは、ほかの要因の調整が不十分な研究が多かったと指摘しています。偏りの少ない質の高い研究ほど、関連は弱く出る傾向がありました。結論は「関連は控えめで、原因と言い切るには慎重であるべき」というものです。

2022年の別のまとめも、根拠の質は全体として低いと評価しました。認知機能が落ちて歯の手入れが難しくなり、その結果として歯を失う、という逆の流れも一部含まれているとしています。

効果ごとの根拠の強さ判定の基準
調べたこと根拠結果
歯を多く失った人は、認知機能の低下・認知症が起きやすいか(14の追跡研究のまとめ)根拠 初期認知機能の低下は約1.5倍、認知症は約1.3倍
歯がすべてない人・歯が少ない人(59研究のまとめ、2026年)根拠 初期認知症・軽度認知障害が約1.26〜1.27倍。質の高い研究ほど関連は弱い
入れ歯を使っている人(14の追跡研究のまとめ)根拠 初期関連ははっきりしない
歯が少なく入れ歯もない日本の高齢者(4,425人・4年の追跡)根拠 初期認知症になる危険が約1.9倍
歯科衛生士の指導で、考える力のテストの点は上がるか(55人の比較試験)根拠 初期注意力などのテストで改善。小規模で、認知症の発症は調べていない

入れ歯を使っている人は、どうだった?

2021年のまとめでは、入れ歯を使っている人に限ると、認知機能の低下との関連ははっきりしませんでした。日本の研究もあります。愛知県の65歳以上の4,425人を4年間追った研究です。歯が少なく入れ歯も使っていない人では、認知症になる危険が約1.9倍と報告されました。かかりつけの歯科医がいない人でも約1.4倍でした。

入れ歯を使う人は、歯科に通う習慣があったり、食事を十分にとれていたりする人が多いのかもしれません。観察研究では、こうした違いの影響を取りきれません。

研究者たちは、よく噛めることで栄養がとりやすくなることや、口の中の炎症が全身に及ぶことなどを、考えられる仕組みとして挙げています。ただし、いずれも仮説の段階です。

歯の手入れを続けると、変わる?

日本の研究チームによる小さな比較試験があります。1年以上歯科に通っていない、軽い認知機能の低下がある高齢者55人を、くじ引きで2つの組に分けました。片方の組は、歯科衛生士による口の手入れの指導を月に1回、8か月間受けました。

最後まで参加したのは各組25人です。指導を受けた組では、歯ぐきの出血や噛む力が改善しました。注意力や段取りの力をみるテストの点数も上がったと報告されています。ただし、人数が少なく、2つの組で平均年齢に約4歳の差がありました。認知症になる人が減るかは調べていません。

まだ分かっていないこと紹介した研究のほとんどは観察研究で、歯を失うことが認知機能の低下の原因なのか、もともとの健康状態や収入、生活習慣の違いを映しているだけなのかは区別できません。認知機能が落ちて歯の手入れが難しくなる、という逆の流れも一部含まれているとされています。研究ごとに歯の数え方や認知機能の測り方が違い、結果のばらつきも大きくなっています。入れ歯で関連が弱まるという結果も観察研究からで、入れ歯を作ることで認知症が減るかを確かめた比較試験はありません。日本の比較試験は55人と小さく、追跡は8か月で、2つの組の年齢にも差がありました。2026年のまとめは雑誌に正式に載る前の早期公開の段階です。

では、どうすればよいか

歯を守ることが認知症を防ぐと言えるだけの根拠は、まだありません。それでも、歯や入れ歯の状態は、食事や会話のしやすさに直結します。定期的に歯科で健診を受け、歯を失ったら入れ歯などで噛める状態を保つことが、日々の暮らしのうえでも勧められます。

今日からできること
  • 1年以上歯科に行っていなければ、歯科で健診と歯のクリーニングを受ける
  • 歯を失ったままにしているときや、入れ歯が合わず噛みにくいときは、歯科で相談して調整を受ける
  • 毎日の歯みがきに加え、歯間ブラシやフロスで歯と歯の間も手入れする
  • 物忘れが気になるときは、歯や噛むことの困りごとも合わせて医師に伝える
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
歯の喪失と認知障害・認知症の用量反応のまとめ(J Am Med Dir Assoc 2021)追跡研究14本・3万4,074人(認知機能低下4,689人)。歯の喪失が多い人で認知障害の相対危険1.48、認知症1.28。入れ歯の使用者では1.10(有意差なし)。8研究の用量反応分析で歯1本ごとに認知障害0.014、認知症0.011の相対危険の上昇。無歯顎で認知障害1.54、認知症1.40。根拠の質は中等度。著者は利益相反なしと開示
歯の喪失と認知機能低下・認知症の追跡研究のまとめ(Front Neurol 2023)追跡研究18本・35万6,297人、平均追跡8.6年(2〜20年)。認知症の相対危険1.15、認知機能低下1.20。アルツハイマー病1.12、血管性認知症1.25。入れ歯の有無や地域などで結果が異なった。出版の偏りは検出されず。利益相反なし
歯周病・歯の喪失と認知障害・認知症のまとめ(J Periodontal Res 2026、早期公開)59研究、うち28研究で統合。重い歯周病のハザード比1.16、無歯顎1.26、歯が少ない1.27。偏りの危険が低いと評価された研究ほど関連が弱かった。ほかの要因の調整不足が多く、因果の解釈は慎重にすべきと結論。資金・利益相反は抄録に記載なし
歯周の健康と認知機能低下・認知症の追跡研究のまとめ(J Am Geriatr Soc 2022)47研究(認知機能低下24・認知症23)。歯周の状態が悪い人で認知機能低下のオッズ比1.23、認知症のハザード比1.21。歯の喪失だけでは認知機能低下1.23、認知症1.13。全体の根拠の質は低く、関連の一部は逆の因果によると評価。利益相反なし
日本の高齢者の歯の状態と認知症の発症(Psychosom Med 2012、AGES)愛知県の65歳以上4,425人を2003〜2007年に追跡、認知症の発症220人(介護保険の記録)。歯が少なく入れ歯なしでハザード比1.85、かかりつけ歯科医なしで1.44。噛めない1.25、手入れをしない1.76はいずれも有意差なし。資金・利益相反は抄録に記載なし
口の手入れの指導と認知機能の比較試験(Arch Gerontol Geriatr 2021、日本)前年に歯科受診のない、MMSE 21〜26点の地域在住の高齢者55人を無作為に2組に分け、介入組は歯科衛生士の指導を月1回・8か月。完了は各25人(平均年齢77.0歳と72.8歳)。介入組でTrail Making Test A・B、歯ぐきの出血、舌の力、噛む力などが改善。資金・利益相反は抄録に記載なし
出典
  1. Qi X, et al. Dose-Response Meta-Analysis on Tooth Loss With the Risk of Cognitive Impairment and Dementia. J Am Med Dir Assoc. 2021. PMID 34579934
  2. Li L, et al. Tooth loss and the risk of cognitive decline and dementia: A meta-analysis of cohort studies. Front Neurol. 2023. PMID 37139053
  3. Demmer RT, et al. Periodontitis, Tooth Loss, and Risk of Cognitive Impairment and Dementia: A Systematic Review With Meta-Analysis. J Periodontal Res. 2026. PMID 42747062
  4. Asher S, et al. Periodontal health, cognitive decline, and dementia: A systematic review and meta-analysis of longitudinal studies. J Am Geriatr Soc. 2022. PMID 36073186
  5. Yamamoto T, et al. Association between self-reported dental health status and onset of dementia: a 4-year prospective cohort study of older Japanese adults from the Aichi Gerontological Evaluation Study (AGES) Project. Psychosom Med. 2012. PMID 22408130
  6. Matsubara C, et al. Effect of oral health intervention on cognitive decline in community-dwelling older adults: A randomized controlled trial. Arch Gerontol Geriatr. 2021. PMID 33035763
無料動画セミナーのサムネイル
動画 約15分
特集・無料動画セミナー若返り研究の最前線にある「幹細胞」。いま、どこまで来ている?

15分の無料動画で、幹細胞の仕組みと最新の研究、受けられる場所や費用の考え方までお伝えします。

この記事は役に立ちましたか?

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。

次に読む

ReverseAging.Tech をつくる人

加藤順彦
代表者加藤順彦MARUICHI PTE. LTD. CEO

自らの体験をきっかけに、幹細胞点滴の魅力を広めています。100名を超える方々をご案内する中で、その可能性をますます実感しています。人生100年時代にふさわしい選択肢として、あなたの選択肢のひとつに加えていただけたら嬉しいです。

山中大介医師
監修者・医師山中大介DMTC CLINIC 院長

美容医療に携わる中で、幹細胞治療の可能性に注目しています。医師としての視点から、安心できる正しい情報を皆さんにお届けします。

よく読まれている記事

  1. シューマッハ氏の近況報道と、幹細胞治療について分かっていること
  2. マレーシアで受ける幹細胞点滴のご案内
  3. 半月板の再生医療「セイビスカス注」承認、誰がいつ受けられる?
  4. Muse細胞はいまどうなっている?開発中止の背景と研究の現在地
  5. 自分の脂肪から採る幹細胞、利点と限界は?自家と他家の比べ方
健康長寿のニュースを、メールで

世界の研究と話題から、編集部が選んだ記事をお届けします。