
寝る時刻と起きる時刻がばらばらだと、体に悪い? 睡眠の規則性の研究で分かったこと
平日は早起き、休日は昼近くまで。寝起きの時刻が日によって違う人は少なくありません。睡眠時間とは別に「毎日どれだけ同じ時刻に寝起きしているか」と健康の関係を、追跡研究と小さな比較試験に分けて整理しました。
- 英国の約6万1,000人の追跡では、寝起きの時刻がそろっている人ほど、追跡中に亡くなる割合が20〜48%低かったと報告されている
- 寝起きが不規則な人は、心臓・血管の病気や2型糖尿病になる割合も高く、睡眠時間が十分でも差が残っていた
- 時刻をそろえる試験は16人・約2週間の小規模なもので、脈拍は下がったが血圧や血管の働きは変わらなかった
寝る時刻と起きる時刻が日によってばらつく人ほど、その後に亡くなる割合や、心臓・血管の病気、2型糖尿病になる割合が高いことが、英国の大規模な追跡研究で報告されています。ただし、いずれもふだんの生活を調べた観察研究で、時刻をそろえれば健康になると確かめた試験はまだ小規模なものに限られます。
睡眠の「規則性」とは何を指す?
睡眠の研究では、何時間眠ったかに加えて、毎日どれだけ同じ時刻に眠り、同じ時刻に起きているかが注目されています。これを睡眠の規則性と呼びます。英国の研究では、手首に7日間つけた計測機器の記録から、睡眠規則性指数(日ごとの寝起きの時刻がそろっているほど高くなる点数)を計算しました。
平日と休日で起きる時刻が大きくずれる状態は、社会的時差ぼけとも呼ばれます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、休日の寝だめで起床時刻が大きく遅れると、体内時計が乱れて健康を損なう危険性があると説明しています。
寝起きの時刻がばらつく人は、どうなっていた?
オーストラリアのモナシュ大学などのチームは、英国の約6万1,000人(平均62.8歳)の記録を、平均6.3年追いました。最も不規則な2割の人と比べ、それより規則的な人たちでは、追跡中に亡くなる割合が20〜48%低くなっていました。がんによる死亡や、心臓・血管と代謝の病気による死亡でも、同じ傾向が見られました。研究チームは、睡眠の規則性は睡眠時間よりも、亡くなる割合とより強く関係していたと報告しています。
同じ英国のデータで、40〜79歳の約7万2,000人を8年間追った研究もあります。最も不規則な組は、規則的な組より、心筋梗塞や心不全、脳卒中を起こす割合が1.26倍でした。推奨される睡眠時間を満たしていても、不規則な組では1.19倍と差が残っていました。
約7万4,000人を8年間追った別の分析では、不規則な組が2型糖尿病になる割合は、規則的な組の1.38倍でした。やや不規則な組でも1.35倍で、7時間以上眠っている人に限っても差は残っていました。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 寝起きの時刻がそろっている人ほど、亡くなる割合が低いか(英国の約6万1,000人) | 根拠 初期 | 最も不規則な2割と比べて20〜48%低い |
| 心筋梗塞・心不全・脳卒中との関係(英国の約7万2,000人) | 根拠 初期 | 不規則な組で1.26倍。睡眠時間が十分でも1.19倍 |
| 2型糖尿病との関係(英国の約7万4,000人) | 根拠 初期 | 不規則な組で1.38倍、やや不規則な組で1.35倍 |
| 気分・体重・血圧・認知症などとの関係(59研究のまとめ) | 根拠 初期 | 不規則なほど悪い方向の関連。測り方がばらばらで数値はまとめられず |
| 時刻をそろえると体の指標が変わるか(16人の比較試験) | 根拠 初期 | 脈拍は下がり心拍の揺らぎは増加。血圧と血管の働きは変化なし |
研究全体をまとめると、どう言える?
2025年には、大人を対象にした59の研究を集めた系統的レビュー(あるテーマの研究を決まった方法で集めて評価するまとめ)が発表されました。寝起きの時刻が不規則な人ほど、気分の落ち込みや不安が強く、BMIや血圧が高く、インスリンの効きが悪い傾向があると、中程度の確かさで報告されています。
認知症になる割合が26〜53%高いという大規模なデータもありました。偏りの少ない5つの追跡研究では、最も不規則な人の死亡の割合が20〜88%高くなっていました。ただし、研究ごとに規則性の測り方がばらばらで、数字を1つにまとめる解析はできていません。
寝起きの時刻をそろえる試験では、何が分かった?
米国テキサス工科大学のチームは、平均35歳の16人に、12晩決まった時刻に寝起きする期間と、いつもどおり過ごす期間の両方を、順番をくじで決めて体験してもらいました。時刻をそろえた期間は、睡眠時間のばらつきが57分から31分に減り、安静時の脈拍が1分に65回から62回に下がりました。自律神経の働きの目安とされる心拍の揺らぎも大きくなっていました。
一方、同じ16人の別の分析では、腕の血管の広がり方や血圧に変化は見られませんでした。どちらも人数が少なく、期間も約2週間と短い試験です。
では、どうすればよいか
寝起きの時刻をそろえることで病気を防げるかは、まだ確かめられていません。それでも、厚生労働省の睡眠ガイドが規則正しい生活習慣を勧めており、時刻をそろえる方法は費用もかかりません。まずは起きる時刻を平日と休日でそろえることから始めるのが現実的です。
- 1週間、寝た時刻と起きた時刻を書き留め、日による差がどれくらいあるかを見てみる
- まずは起きる時刻を平日と休日でそろえ、ずらすとしても1時間程度にとどめる
- 起きたらカーテンを開けて朝の光を浴び、夜はやや暗い部屋でゆったり過ごす
- 交替勤務などで時刻をそろえにくい方は、無理に合わせず睡眠時間の確保を優先する。眠れない日が続く、日中の強い眠気がある場合は医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 英国の約6万1,000人の追跡(Sleep 2024) | UK Biobankで手首の加速度計を7日間つけた60,977人(平均62.8歳、女性55%)。平均6.3年の追跡で1,859人が死亡。睡眠規則性指数が最も低い5分の1と比べ、上位4つの組で全死亡が20〜48%、がん死亡が16〜39%、心臓・代謝の病気による死亡が22〜57%低い。年齢・性別・生活習慣・健康状態などで調整。睡眠時間より強い予測因子とされた。米国立衛生研究所(NIH)の研究費の記載あり |
|---|---|
| 心臓・血管の病気との関係(J Epidemiol Community Health 2025) | UK Biobankの40〜79歳72,269人、8年追跡。規則的な組(指数87.3超)と比べ、不規則な組(71.6未満)でハザード比1.26、やや不規則な組で1.08。年齢に応じた推奨睡眠時間を満たしても不規則な組では1.19。著者の一部に睡眠機器メーカーなどからの研究支援・顧問料の開示あり |
| 2型糖尿病との関係(Diabetes Care 2024) | UK Biobankの40〜79歳73,630人、8年追跡。規則的な組と比べ、不規則な組でハザード比1.38、やや不規則な組で1.35。指数80未満で発症が多い傾向。推奨睡眠時間を満たしても1.35・1.29と差が残る。著者の1人に睡眠機器メーカーからの研究支援・顧問の開示あり |
| 59研究の系統的レビュー(Sleep Med Rev 2025) | 2025年7月までの大人を対象にした研究59本。不規則な寝起きと抑うつ・不安・BMI・インスリン抵抗性・高血圧・心血管の病気との関連に中程度の確かさの根拠。認知症の危険が26〜53%高いデータ、偏りの少ない5つのコホートで全死亡が20〜88%高い。指標や結果がばらばらでメタ解析は行わず。著者は利益相反なしと開示 |
| 時刻をそろえる比較試験(Sleep Med 2025/J Appl Physiol 2025) | 平均35歳前後の16人、12晩ずつのクロスオーバー試験。睡眠時間のばらつき(標準偏差)は57分から31分に減少、平均の睡眠時間は同程度。安静時心拍数65→62回、心拍変動が増加、中心血圧は変化なし。別の分析では前腕の血管の広がりや血圧反応に変化なし。著者は利益相反なしと開示(Sleep Med) |
| 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省 2024) | 規則正しい生活習慣が主観的な睡眠の質を高め、日中の眠気を改善すると説明。休日の寝だめで起床時刻が大きく遅れると体内時計が乱れ、健康を損なう危険性があるとしている |
- Windred DP, et al. Sleep regularity is a stronger predictor of mortality risk than sleep duration: A prospective cohort study. Sleep. 2024. PMID 37738616
- Chaput JP, et al. Sleep regularity and major adverse cardiovascular events: a device-based prospective study in 72 269 UK adults. J Epidemiol Community Health. 2025. PMID 39603689
- Chaput JP, et al. Sleep Irregularity and the Incidence of Type 2 Diabetes: A Device-Based Prospective Study in Adults. Diabetes Care. 2024. PMID 39388339
- Kalkanis A, et al. Sleep regularity as an important component of sleep hygiene: a systematic review. Sleep Med Rev. 2025. PMID 41259946
- Gonzales JU, Narvaez G. Short-term reduction in sleep irregularity modulates cardiac autonomic function and central hemodynamic parameters at rest. Sleep Med. 2025. PMID 40543253
- Narvaez G, Gonzales JU. Reduced sleep irregularity does not impact peripheral vascular function before or following total sleep deprivation. J Appl Physiol. 2025. PMID 40924703
- 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023. 2024. リンク

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この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。










