走ると膝を痛める? ランニングと膝の関節の研究で分かったこと
健康のために走りたいけれど、膝が心配で踏み出せない方もいます。走る人の膝の関節症や軟骨を調べた研究から、分かっていることと分かっていないことを整理しました。
- 趣味で走る人の股関節・膝の関節症の割合は3.5%で、運動をしない人などの10.2%より多くはなかったと、約12万6,000人分のまとめで報告されている
- 競技として長年走る選手では13.3%と多い傾向があり、走る量が多すぎることや過去のけがが関係する可能性がある
- 走った直後に膝の軟骨は3〜5%ほど薄くなるが、短い時間で元に戻ると報告されている
- どれも観察研究で、走ることが膝を守るかを比較試験で確かめた研究はない
ふだん趣味で走っている人は、走らない人より膝の変形性関節症(関節の軟骨がすり減り、痛みや動かしにくさが出る状態)が多いわけではないと、複数の研究のまとめで報告されています。ただし、どれも観察研究で、走ることが膝を守ると確かめた比較試験はありません。
走る人は、膝の関節症が多い?
2017年に、25の研究、約12万6,000人分をまとめた解析が発表されました。股関節か膝の関節症がある人の割合は、趣味で走る人で3.5%、競技として走る選手で13.3%、ふだん運動をしない人などの比較の組で10.2%でした。
比較の組と比べた差は、趣味で走る人では統計的にはっきりしませんでした。競技の選手では多い傾向が見られています。研究チームは、運動の少ない暮らしと、長年にわたる多い量・高い強度の走りの両方が関節症と関係する可能性を挙げています。一方で、過去のけがなどの影響を取りきれず、原因かどうかは判断できないとしています。
2023年のまとめでは、週の走る距離ごとに調べています。9つの研究、1万2,273人分です。走る人と、週8km未満の人とで、膝の関節症の割合に差はありませんでした。週48kmを超える人でも、多いという結果は出ていません。ただ、含まれた研究の多くは偏りの危険が高いと評価されています。
中高年が走っても、膝は大丈夫?
米国の膝の研究(OAI)では、平均64歳の2,637人に、これまでの運動の歴史を尋ねました。約3割が、人生のどこかで走っていた人です。今も走っている人は、一度も走ったことのない人より、膝の痛みが多いことはありませんでした。痛みを伴う関節症の割合は、むしろ低い傾向でした。
2024年には、シカゴ・マラソンの参加者3,804人へのアンケートの結果が出ています。平均43.9歳で、平均9.5回のマラソンを走った人たちです。股関節か膝の関節症があると答えた人は7.3%でした。関係していたのは、年齢、体格(BMI)、過去のけがや手術、家族に関節症の人がいることです。走った年数や回数、週の距離、走る速さとの関係は見られませんでした。
ただし、回答したのは案内を受けた人の1割だけです。膝を痛めて走るのをやめた人は、そもそもマラソンに出ていません。このような偏りがあるため、「何年走っても大丈夫」とまでは言えません。
走ると、膝の軟骨はすり減る?
走った直後の膝をMRI(磁気で体の中を写す検査)で調べた研究が、24本まとめられています。走った直後は、軟骨の厚さや体積が3〜5%ほど小さくなっていました。軟骨の状態を表す指標の一つは、約1時間半で元に戻っていました。もともとあった軟骨の傷が、48時間以内に悪化した例もありませんでした。ただし、この結論の確かさは「非常に低い」とされています。
カナダなどの研究チームによる2022年のまとめ(43本)も、同じ方向の結果でした。走った直後の変化は、軟骨の中の水分の動きを映している可能性が高く、長くは続かないとしています。くり返し走っても新しい軟骨の傷ができるわけではないことは、中程度の根拠で示されたと書かれています。
チェコの18〜65歳の1,164人を調べた2024年の研究もあります。週6〜20kmほど走る人は、走らない人や、最も長い距離を走る人より、膝の軟骨の状態がよい傾向でした。一度だけ調べた研究なので、走ったから軟骨がよくなったのかは分かりません。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 趣味で走る人は、股関節・膝の関節症が多いか(17研究のまとめ) | 根拠 初期 | 3.5%。比較の組の10.2%と比べて多くない |
| 競技の選手は、関節症が多いか(同じまとめ) | 根拠 初期 | 13.3%。多い傾向だが統計的な差ははっきりしない |
| 週の走る距離と膝の関節症(9研究のまとめ) | 根拠 初期 | どの距離でも差なし。研究の質は低め |
| 今も走っている中高年の膝の痛み(米国2,637人) | 根拠 初期 | 走ったことのない人より少ない傾向 |
| マラソン参加者の関節症と走った量(3,804人) | 根拠 初期 | 年数・回数・距離・速さと関係なし。過去のけが・年齢・体格・家族歴と関係 |
| 走った直後の膝の軟骨(24研究のまとめ) | 根拠 初期 | 3〜5%薄くなるが短時間で回復。確かさは非常に低い |
| くり返し走ると、軟骨に新しい傷ができるか(43研究のまとめ) | 根拠 初期 | できないという中程度の根拠。変化は一時的 |
では、どうすればよいか
今の研究からは、健康な膝で、無理のない量を走ることが膝を傷めるとは言えないと考えられます。注意したいのは、走る量そのものより、過去のけがや体重、急に量を増やすことです。膝にけがをしたことがある方や、すでに痛みがある方は、走り始める前に医師に相談してください。
- 走り始めるときは、歩きと短い走りを交互にするなど少ない量から始め、距離や回数は少しずつ増やす
- 週6〜20kmほどの研究で膝の状態がよい傾向があったことを、ひとつの参考にする
- 太ももやお尻の筋トレを合わせて行う
- 膝のけがや手術をしたことがある方、膝に痛みや腫れがある方は、走り始める前に医師に相談する。走っている途中や翌日に痛みが続くときも医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 走る人の股関節・膝の関節症のまとめ(J Orthop Sports Phys Ther 2017) | 25研究・12万5,810人、メタ解析は17研究・11万4,829人。関節症の有病率は競技の選手13.3%、趣味で走る人3.5%、比較の組10.2%。比較の組に対するオッズ比は競技1.34(95%信頼区間0.97〜1.86)、趣味0.86(0.69〜1.07)。走った期間15年未満ではオッズ比0.6。因果関係や過去のけがなどの交絡は判断できないと著者が記載 |
|---|---|
| 週の走る距離と膝の関節症のまとめ(Phys Ther Sport 2023) | 観察研究(症例対照)9本・1万2,273人(走る人1,272人)。比較の組は週8km未満。全体のオッズ比0.97(0.56〜1.68)。週8〜32.1km 1.17、32.2〜48km 1.04、48km超 0.62で、いずれも有意差なし。多くの研究が偏りの危険が高い。利益相反なし |
| 米国の膝の研究OAI(Arthritis Care Res 2017) | 2004〜2014年の参加者2,637人、平均64.3歳、女性55.8%。29.5%が走った経験あり。一度も走ったことのない人と比べ、今走っている人の膝の痛みのオッズ比0.71、痛みを伴う関節症0.64(調整前)。調整後もほぼ同じで、X線上の関節症だけ差が弱まった。後ろ向きの横断研究 |
| シカゴ・マラソン参加者の調査(Sports Health 2024) | 2019年・2021年の登録者3万7,917人に送付し3,804人が回答(回答率10.0%)。平均43.9歳、平均9.5回のマラソン。股関節・膝の関節症は7.3%。関連したのは過去のけがや手術、年齢、家族歴、BMI。走った年数・回数・週の距離・速さは関連なし。著者2人が医療機器企業から報酬を受けたと開示 |
| 走る量と膝の軟骨のMRI(Med Sci Sports Exerc 2024) | チェコの18〜65歳の走る人・走らない人1,164人の横断研究。大腿骨内側の軟骨をMRI(T2値)で評価。週6〜20km走る人は、走らない人や最も長い距離を走る人より軟骨の状態がよい傾向。35〜49歳は最も若い組より軟骨の変化がある割合が84%高く、女性も高い傾向 |
| 走った直後の膝の軟骨のまとめ(Osteoarthritis Cartilage 2023) | MRIで走る前後48時間以内の軟骨を調べた24研究・446膝。走った直後に軟骨の体積・厚さが3.3〜4.9%減少。脛骨と大腿骨の間の軟骨のT2値は91分以内に元に戻った。もともとの軟骨の傷は48時間以内に変化なし。確かさは非常に低い(GRADE)。利益相反なし |
| 走ることと下肢の軟骨のまとめ(Sports Med 2022) | MRIで走る前後の軟骨を調べた前向きの研究43本(質は高19本・中24本)。走った直後に膝の軟骨の体積・厚さ・T1ρ値・T2値が下がるが持続しない。メタ解析ではT2値の小〜中程度の低下。中程度の根拠で、走ることは新しい軟骨の傷を生じない。くり返し走っても足首と足の軟骨に変化なし |
- Alentorn-Geli E, et al. The Association of Recreational and Competitive Running With Hip and Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2017. PMID 28504066
- Burfield M, et al. The association between running volume and knee osteoarthritis prevalence: A systematic review and meta-analysis. Phys Ther Sport. 2023. PMID 36809693
- Lo GH, et al. Is There an Association Between a History of Running and Symptomatic Knee Osteoarthritis? A Cross-Sectional Study From the Osteoarthritis Initiative. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017. PMID 27333572
- Hartwell MJ, et al. Does Running Increase the Risk of Hip and Knee Arthritis? A Survey of 3804 Marathon Runners. Sports Health. 2024. PMID 37555313
- Jandacka D, et al. Regular Running Is Related to the Knee Joint Cartilage Structure in Healthy Adults. Med Sci Sports Exerc. 2024. PMID 38233979
- Coburn SL, et al. Is running good or bad for your knees? A systematic review and meta-analysis of cartilage morphology and composition changes in the tibiofemoral and patellofemoral joints. Osteoarthritis Cartilage. 2023. PMID 36402349
- Khan MCM, et al. The Influence of Running on Lower Limb Cartilage: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Med. 2022. PMID 34478109

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この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。











