窓辺の明るい部屋に並んだ3本のギターと鍵盤
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60代から楽器を習うと、脳の衰えはゆっくりになる? 比較試験と追跡研究で分かったこと

定年後にピアノを始めてみたい、という声をよく聞きます。楽器を習うことが、記憶や考える力にどう関わるのか。60歳以上の初心者の比較試験と、楽器を弾く人を追った研究を分けて整理しました。

根拠 有望5分で読めます公開 2026.10.31更新 2026.10.31
RATRAT編集部
生成AIで下書きし、編集部が出典と内容を確認しました
この記事の要点
  • 60歳以上の初心者が楽器を習った13の研究のまとめでは、注意を切り替える力や処理の速さのテストで点数がやや上がった
  • 短い時間の記憶や言葉を覚える力では、まとめた結果では差がなかった
  • 楽器を弾く人は認知症になる危険が3割ほど低いという関連があるが、観察研究の結果で、原因とは言えない
  • 13の研究の多くは人数が少なく、偏りの危険が低いと判定されたのは1つだけだった

60歳を過ぎて初めて楽器を習った人の比較試験をまとめると、注意を切り替える力や処理の速さのテストで、点数がやや上がったと報告されています。一方、楽器を弾く人は認知症になりにくいという結果は観察研究のもので、楽器が認知症を防ぐかどうかは、まだ確かめられていません。

楽器を習うと、頭の働きのテストの点数は変わる?

2024年に、英国の研究チームが比較試験をまとめた解析を発表しました。対象は、楽器を習った経験のない60歳以上の健康な人です。ピアノなどの楽器を習う組と、習わない組を比べた13の研究、合わせて502人分を分析しています。

楽器を習った組では、実行機能(目の前の作業に合わせて注意を向け直したり、反射的な反応を抑えたりする力)のテストで、点数がやや上がっていました。差が最も大きかったのは処理の速さで、効果の大きさは「中程度」とされています。反対に、短い時間の記憶(ワーキングメモリ)や言葉を覚える力、目で探す注意の力では、差は見られませんでした。

ただし、偏りの評価で「偏りの危険が低い」とされた研究は13のうち1つだけでした。3つは「高い」、残りの9つは「いくつか懸念がある」と判定されています。

比較試験では、どんな習い方をした?

まとめに含まれる研究の一つに、米国の155人の試験があります。60〜80歳の人を、くじ引きで3つの組に分けました。ピアノのグループレッスンを受ける組、パソコンを使った脳トレをする組、何もしない組です。2つの練習の組は、週2回・1回90分の練習を16週間続けました。

ピアノの組とパソコンの脳トレの組は、何もしない組よりも、短い時間の記憶と処理の速さのテストで点数が上がっていました。ピアノの組だけに見られたのは、言葉を次々に挙げる課題で、分類を切り替える力の伸びです。ストレスに関わるホルモン(コルチゾール)や免疫の数値には、差がありませんでした。

この試験では、短い時間の記憶でも差が出ており、先ほどのまとめとは結果が分かれています。ピアノに限った効果なのか、新しいことを週に何時間も学ぶこと自体の効果なのかも、この試験からは区別できません。

脳の画像では、何か変わった?

ドイツとスイスでは、64〜78歳の健康な人を、ピアノを習う組と、音楽を聴いて学ぶ講座に通う組に分けた試験が行われています。6か月後の脳の画像を132人分調べた報告では、両方の組を合わせると、脳の一部で灰白質(神経細胞が集まる部分)の量が増えていました。ただし、組のあいだでの差はありませんでした。

音を聞き取る脳の部分に絞って調べると、音楽を聴く講座の組では量が減り、ピアノの組では保たれていたと報告されています。一方で、6か月のあいだに脳全体は年齢相応に縮んでいました。画像の変化が、暮らしの中の物忘れの減り方にどうつながるかは、分かっていません。

効果ごとの根拠の強さ判定の基準
調べたこと根拠結果
実行機能(注意の切り替え・反応を抑える力)(13研究のまとめ)根拠 有望点数がやや上がる。研究の質に懸念が多い
処理の速さ(同じまとめ)根拠 有望中程度の差で上がる
短い時間の記憶・言葉を覚える力(同じまとめ)根拠 有望差なし。米国の155人の試験では上がっており、結果が分かれる
脳の灰白質の量(132人の比較試験)根拠 初期ピアノの組と音楽を聴く講座の組で、脳全体では差なし
楽器を弾く人は認知症になりにくいか(3つの追跡研究のまとめ)根拠 初期危険が36%低い関連
楽器をよく弾く70歳以上の人(約1万900人の追跡研究)根拠 初期認知症の危険が35%低い関連。音楽を聴く人でも39%低い

楽器を弾く人は、認知症になりにくい?

2022年に、大阪の国立循環器病研究センターの研究者らが、高齢者を追った3つの研究をまとめました。米国の2つと日本の1つです。楽器を弾く人は、弾かない人に比べて認知症になる危険が36%低いという関連が示されました。

2025年には、70歳以上のオーストラリア人1万893人を追った研究も発表されています。楽器をよく弾く人では、認知症になる危険が35%低くなっていました。ただ、音楽をいつも聴く人でも、危険は39%低くなっていました。教育を受けた年数が長い人ほど、関連は強く出ています。

楽器を続けられる人は、もともと健康で、時間や暮らしに余裕があるのかもしれません。観察研究では、こうした違いの影響を取りきれません。また、認知症の始まる前の段階で、楽器から離れていった人もいる可能性があります。

まだ分かっていないことまとめた13の研究は合わせて502人と小さく、偏りの危険が低いと判定されたのは1つだけでした。練習の期間は多くが数か月で、テストの点数の差が何年も続くのか、日々の物忘れや暮らしの困りごとが減るのかは確かめられていません。楽器を習う組と比べる組で、新しいことを学ぶ時間や人と会う機会が違うため、楽器そのものの効果と区別しにくい点も残ります。認知症との関連は観察研究だけで、もともと健康で余裕のある人が楽器を続けている可能性を取りきれません。オーストラリアの研究では、楽器を弾く人の関連は統計の境目に近く、音楽を聴くだけの人でも同じくらいの関連が出ていました。日本人を含む研究は、3つの追跡研究のうちの1つだけです。

では、どうすればよいか

楽器を習うことで認知症を防げるとまでは、まだ言えません。それでも、60歳を過ぎてから始めても、注意や処理の速さのテストで点数がやや上がったという比較試験は複数あります。楽しみとして続けられそうな楽器があれば、週に何回か練習する習慣を作ることは、試してよい選択肢の一つです。

今日からできること
  • 昔習っていた楽器や、気になっていた楽器があれば、地域の教室や公民館の講座を調べてみる
  • テストの点数が変わったと報告された試験では、週に数回の練習を数か月続けていたので、無理なく続けられる回数から始める
  • 楽器だけに頼らず、運動や人と話す機会もあわせて続ける
  • 物忘れが急に増えた、暮らしに困りごとが出てきたと感じるときは、医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
楽器の練習と高齢者の実行機能のまとめ(Brain Cogn 2024)楽器経験のない60歳以上の健康な人、対照群のある13研究・502人。抑制 d=0.27、切り替え d=0.39、言語の分類切り替え d=0.39、処理速度 d=0.47。選択的視覚注意・ワーキングメモリ・言語記憶は効果なし。偏りの危険(RoB 2)は高い3・懸念あり9・低い1。著者は利益相反なしと開示
ピアノの比較試験(J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci 2022)米国、60〜80歳の155人。ピアノのグループ練習・パソコンの認知トレーニング・何もしない組に割り付け。練習は週2回90分を16週間。ピアノと認知トレーニングはワーキングメモリと処理速度で対照より改善。言語流暢性の分類切り替えはピアノのみ改善。コルチゾール・免疫の指標は差なし。登録: NCT02564601
ピアノと音楽鑑賞講座の比較試験・脳画像(Neuroimage Rep 2023)ドイツ・スイスの試験の一部、健康な高齢者132人の6か月の解析。両群を合わせると尾状核・小脳などの灰白質が増加、群間差なし。右の一次聴覚野は鑑賞講座の組で減少、ピアノの組で維持。6か月で脳全体の萎縮を確認。後ろ向きの数字作業記憶の成績が向上。著者は利益相反なしと開示
楽器演奏と認知症のまとめ(BMC Neurol 2022)前向きコホート3研究(米国2・日本1)。楽器を弾く人の認知症のハザード比0.64(95%信頼区間0.41〜0.98)。異質性 I²=23.3%。出版の偏りの兆候なし。著者は利益相反なしと開示
ASPREE の追跡研究(Int J Geriatr Psychiatry 2025)オーストラリアの70歳以上・認知症の診断のない1万893人。年齢・性別・教育で調整。楽器をよく弾く人の認知症のハザード比は35%低下(95%信頼区間0.42〜0.99)。いつも音楽を聴く人は39%低下(0.45〜0.82)。主観的な認知の健やかさとは関連なし。教育16年超の人で関連が強い
出典
  1. Rogers F, et al. The effects of musical instrument training on fluid intelligence and executive functions in healthy older adults: A systematic review and meta-analysis. Brain Cogn. 2024. PMID 38340535
  2. Bugos JA, et al. Piano Training Enhances Executive Functions and Psychosocial Outcomes in Aging: Results of a Randomized Controlled Trial. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci. 2022. PMID 35134913
  3. Marie D, et al. Music interventions in 132 healthy older adults enhance cerebellar grey matter and auditory working memory, despite general brain atrophy. Neuroimage Rep. 2023. PMID 40568451
  4. Arafa A, et al. Playing a musical instrument and the risk of dementia among older adults: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies. BMC Neurol. 2022. PMID 36303117
  5. Jaffa E, et al. What Is the Association Between Music-Related Leisure Activities and Dementia Risk? A Cohort Study. Int J Geriatr Psychiatry. 2025. PMID 41088732
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ReverseAging.Tech をつくる人

加藤順彦
代表者加藤順彦MARUICHI PTE. LTD. CEO

自らの体験をきっかけに、幹細胞点滴の魅力を広めています。100名を超える方々をご案内する中で、その可能性をますます実感しています。人生100年時代にふさわしい選択肢として、あなたの選択肢のひとつに加えていただけたら嬉しいです。

山中大介医師
監修者・医師山中大介DMTC CLINIC 院長

美容医療に携わる中で、幹細胞治療の可能性に注目しています。医師としての視点から、安心できる正しい情報を皆さんにお届けします。

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