
瞑想で、物忘れや脳の衰えは防げる? 比較試験とまとめで分かったこと
瞑想やマインドフルネスは、ストレスを和らげる方法として広まり、脳の働きを保つ方法としても関心が高まっています。中高年を対象にした比較試験と、そのまとめから、どこまで分かっているかを整理しました。
- 高齢者を対象にした30の比較試験のまとめでは、瞑想で注意力や記憶の検査の成績が小さく上がったと報告されている
- フランスで65歳以上の137人が18か月瞑想を続けた試験では、記憶や注意の成績、脳の大きさに、ほかの組との差は出なかった
- 同じ試験で、気持ちの持ち方や心の落ち着きを測る指標は、英語の学習の組より高くなっていた
- 瞑想の比較相手が「何もしない組」だと差が出やすく、「別の活動をする組」だと差が小さくなる傾向がある
瞑想を続けると、注意力や記憶の検査の成績がわずかに上がる可能性が、比較試験のまとめで報告されています。ただし、65歳以上が18か月続けた大きめの試験では、記憶や脳の大きさに差は出ませんでした。
物忘れを防ぐ方法として確かめられた段階ではなく、気持ちの落ち着きなど、ほかの面での変化が報告されている段階です。
瞑想で、記憶や注意力の成績は変わる?
ここでいう瞑想は、呼吸や体の感覚に注意を向け、浮かんだ考えにとらわれずに眺める練習です。マインドフルネス(今この瞬間に意識を向ける心の状態)を育てる方法として、病院や企業の研修にも取り入れられています。
2023年に、米国の研究チームが、高齢者を対象にした30の比較試験(くじ引きで組に分け、片方だけ瞑想してもらって比べる方法)をまとめました。瞑想をした組では、認知機能の検査の成績が、比べた組より小さく上がっていました。注意力や、昔のことを覚えておく力などで差が見られています。
一方で、軽度認知障害(物忘れが年齢相応より目立つが、暮らしには大きな支障がない状態)の人に限ると、はっきりした差は出ていません。健康な高齢者のほうが、差が出やすい傾向でした。また、ほかの心身の方法とは同じくらいでしたが、それ以外の種類の方法と比べると、瞑想のほうが成績の伸びは小さいとも書かれています。
何と比べるかで、結果は変わる?
2022年には、英国の研究チームなどが、大人を対象にした56の比較試験(約2,900人)をまとめています。全体では瞑想の組がわずかに上回り、考えをまとめる力と、一時的に情報を覚えておく力で差が出ていました。60歳以上の人を対象にした試験でも、差が見られています。
ただし、差が出たのは、比べる相手が「何もしない組」や「順番待ちの組」の場合でした。リラックス法や運動など、別の活動をする組と比べると、差ははっきりしなくなっています。人と集まって何かに取り組むこと自体が、成績に影響している可能性もあります。
長く続けた試験では、どうだった?
フランスでは、65歳以上の健康な137人を対象にした「Age-Well試験」が行われました。参加者を、瞑想の組、英語を学ぶ組、何もしない組の三つに分け、18か月続けています。瞑想と英語の組は、週1回2時間の集まりに加え、自宅で毎日20分以上練習しました。脱落した人はほとんどいませんでした。
この試験では、まず脳の画像を調べました。注意や感情に関わる脳の部分の大きさと血の流れに、組の間で差は出ていません。記憶や注意力、考えをまとめる力の検査でも、三つの組に差はありませんでした。2025年には、脳の画像から推定した「脳の年齢」も調べましたが、18か月の瞑想による変化は見られなかったと報告されています。
一方、注意を自分で整える力や、人との関わり・感情に関する力、自分を知る力をまとめた指標では、瞑想の組が英語の組を上回りました。心の満たされ方を測る指標の一部でも、瞑想の組の伸びが大きくなっています。
長年続けている人の脳は違う?
同じ研究チームは、20年以上瞑想を続けてきた高齢者25人の脳も調べています。この人たちの「脳の年齢」は、同年代の参加者より若く推定され、瞑想の時間が長い人ほどその傾向が強くなっていました。
ただし、これは瞑想を選んで続けてきた人を比べた観察で、瞑想のおかげとは言えません。もともとの生活習慣や性格の違いが影響している可能性があります。研究チームは、18か月では変化が見られなかったことから、より長い期間の実践が必要な可能性を挙げています。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 認知機能の検査の成績(高齢者・30の比較試験のまとめ) | 根拠 有望 | 小さく上がった。注意力・記憶などで差 |
| 軽度認知障害の人の成績(同じまとめ) | 根拠 有望 | はっきりした差なし |
| 別の活動をする組と比べた場合(大人・56の比較試験のまとめ) | 根拠 有望 | 差ははっきりせず。何もしない組とだけ差 |
| 18か月の瞑想で、記憶・注意の成績(65歳以上137人の比較試験) | 根拠 有望 | ほかの組と差なし |
| 18か月の瞑想で、脳の大きさ・脳の年齢(同じ試験) | 根拠 有望 | 差なし |
| 気持ちの持ち方・心の満たされ方の指標(同じ試験) | 根拠 有望 | 英語の学習の組より高く |
| 20年以上続けている人の脳の年齢(25人の観察) | 根拠 初期 | 同年代より若く推定。因果は不明 |
では、どう考えればよいか
瞑想は、物忘れを防ぐ方法として確かめられたものではありません。脳の働きを保つ方法としては、運動や人との交流など、ほかにも研究が積み重なっている習慣があります。瞑想は、気持ちを落ち着ける習慣のひとつとして、無理のない範囲で取り入れるのがよさそうです。
- 物忘れを防ぐ方法としてではなく、気持ちを落ち着ける習慣として取り入れる
- 1日数分から、静かな場所で呼吸に注意を向ける時間をつくってみる
- 脳の働きを保つ習慣として研究が多い、運動や人との交流と組み合わせる
- 物忘れが急に増えた、日常の暮らしに支障が出てきたと感じる場合は、医師に相談する。気分の落ち込みが強いときに瞑想でかえってつらくなる場合は中止し、医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 高齢者の30の比較試験のまとめ(J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci 2023) | 健康な高齢者と、軽度認知障害・認知症の高齢者を対象にした比較試験30本の3段階メタ解析。認知機能全体の効果量 g=0.36(95%信頼区間0.06〜0.65)。注意力 g=0.22、長期記憶 g=0.32、視空間処理 g=0.22。健康な高齢者 g=0.27、軽度認知障害 g=−0.09(有意差なし)。出版バイアスの証拠なし。ほかの心身の方法と同程度、それ以外の方法よりは小さい効果。資金・利益相反は抄録に記載なし。米ジョージア工科大学 |
|---|---|
| 大人の56の比較試験のまとめ(Neuropsychol Rev 2022) | マインドフルネスのプログラムの比較試験56本(2,931人)、うち45本(2,238人)を統合。全体の効果量 g=0.15(0.05〜0.24)。実行機能 g=0.15、作業記憶 g=0.23で差。60歳以上の試験でも有意。何もしない組には上回ったが、別の活動をする組には上回らず。多くの試験で偏りの危険が不明。著者1人がマインドフルネスの研修の謝礼と本の共著を開示。英ロンドン大学(UCL)など |
| Age-Well試験・脳の画像(JAMA Neurol 2022) | フランス・カーン在住の認知機能に問題のない65歳以上137人(平均69.4歳、女性61%)。瞑想45人・英語学習46人・介入なし46人に分け18か月。週1回2時間の集まり、自宅で毎日20分以上の練習、1日の集中練習。主な評価項目の前帯状皮質・島の体積と血流に有意差なし。注意の調整・社会性・自己理解の総合指標で瞑想が英語学習を上回る(効果量 d=0.52)。完了しなかったのは1人。資金は欧州連合のHorizon 2020など。著者1人が瞑想の指導を開示。ClinicalTrials.gov NCT02977819 |
| Age-Well試験・認知機能(JAMA Netw Open 2023) | 同じ試験の副次解析(135人)。記憶・注意・実行機能などの総合検査(PACC5)と、記憶・実行機能・注意の各指標で、3組の間に差なし。感度分析でも結果は同じ。著者2人が瞑想関連の本・研修・指導を開示 |
| Age-Well試験・心の満たされ方(PLoS One 2023) | 同じ試験の副次解析。瞑想に関連した気づき・つながり・洞察の総合指標で、瞑想が英語学習を上回る(0.54)。心理的な暮らしの質の差は多重比較の補正後に有意でなくなり、心理的な幸福度の尺度の合計点には差なし |
| Age-Well試験・脳の年齢(Sci Rep 2025) | 20年以上瞑想を続けた高齢者25人と、試験参加者135人を比較。脳の画像から機械学習で推定した脳の年齢は、長年の実践者で若く、瞑想の時間と関連。18か月の瞑想による変化はなし。著者は利益相反なしと開示 |
- Mirabito G, Verhaeghen P. The Effects of Mindfulness Interventions on Older Adults' Cognition: A Meta-Analysis. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci. 2023. PMID 36148552
- Whitfield T, et al. The Effect of Mindfulness-based Programs on Cognitive Function in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. Neuropsychol Rev. 2022. PMID 34350544
- Chételat G, et al. Effect of an 18-Month Meditation Training on Regional Brain Volume and Perfusion in Older Adults: The Age-Well Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2022. PMID 36215061
- Demnitz-King H, et al. Effects of Meditation Training and Non-Native Language Training on Cognition in Older Adults: A Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2023. PMID 37450303
- Schlosser M, et al. An 18-month meditation training selectively improves psychological well-being in older adults: A secondary analysis of a randomised controlled trial. PLoS One. 2023. PMID 38039341
- Haudry S, et al. Impact of meditation on brain age derived from multimodal neuroimaging in experts and older adults from a randomized trial. Sci Rep. 2025. PMID 41152396

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この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。










