
年齢とともに肌が乾くのはなぜ? 保湿剤を塗る試験で分かったこと
すねが粉をふく、背中がかゆい。年齢とともに増える肌の乾燥は、高齢の方の約半数に見られると報告されています。保湿剤を毎日塗った比較試験を中心に、分かっていることと、まだ分からないことを整理しました。
- 28の研究をまとめた解析では、高齢の方の肌の乾燥は全体の53%に見られ、すねに多いと報告されている
- 保湿成分を含む塗るものを毎日使うことや、洗い方と塗り方を決めたお手入れが、乾燥を和らげる助けになったとまとめられている
- 介護施設の比較試験では、1日2回の保湿で皮膚の裂け傷が少なかったという報告もあるが、根拠の確実性は低い
- 試験の多くは介護施設の80代が対象で、自宅で暮らす40〜60代にどこまで当てはまるかは分かっていない
年齢とともに肌が乾きやすくなることは、多くの研究で確認されています。保湿剤を毎日塗ると乾燥の程度が和らぐという比較試験はありますが、いずれも小規模で、確実性は低いと評価されています。
年をとると、どのくらいの人の肌が乾く?
2023年に、高齢の方の皮膚の乾燥(医学では乾皮症と呼びます)を調べた28の研究をまとめた解析が発表されました。乾燥が見られた人は、全体の53%でした。研究によって幅があり、推定の範囲は36〜69%です。
介護施設で暮らす方や、先進国での割合が高く、男女の差はほとんどありませんでした。程度は軽いものが多く、場所はすねなど脚に多いと報告されています。
肌の表面には角層(ごく薄い一番外側の層)があり、水分を保ち、外からの刺激を防いでいます。この働きを肌のバリアと呼びます。北海道大学のチームは2024年に、高齢の方のバリアの働きが落ちる要因を調べた20の研究をまとめました。年齢や栄養、住まいの環境など多くの要因が調べられていましたが、研究の質のばらつきが大きく、要因として認められたのは慢性腎臓病と肌の乾燥の2つだけでした。
保湿剤を毎日塗ると、何が変わった?
2020年のコクラン・レビュー(質の高い研究のまとめ)は、60歳以上の方を対象にした6つの比較試験、1,598人分を集めました。対象はすべて介護施設の入居者で、平均年齢は80歳以上です。
洗い方と塗り方を決めたお手入れや、保湿成分を含む石けんなどを使った組では、乾燥の程度が軽くなった可能性があると報告されています。一方、角層の水分量には、はっきりした差は出ていません。
984人の試験では、いつものお世話に加えて保湿剤を1日2回塗った組で、皮膚の裂け傷(薄くなった肌が、ぶつけたりこすれたりして裂ける傷)が少なくなっていました。ただし、この結果の確実性は「非常に低い」とされています。
2023年には、肌のお手入れに関する12の系統的レビューをまとめた報告も出ました。刺激の少ない洗浄料と塗るものを組み合わせ、決まった手順で続けるお手入れのほうが、せっけんと水だけのお手入れより、乾燥の予防と改善に向いていると結論しています。
日本やアジアの試験では、どんな結果が出た?
福井大学のチームは、介護施設で暮らす65歳以上の方を、3種類の保湿剤のどれかを塗る組と、いつものお手入れの組に分けました。保湿剤は1日2回、8週間塗っています。2種類の保湿剤の組では、いつものお手入れの組より角層の水分量が多くなりました。ただし、各組は4〜7人と非常に少なく、試しに行った段階の試験です。
インドネシアでは、肌の乾燥がある60〜80歳の36人が、片脚の3か所に別々のローションを4週間塗りました。分子の小さいヒアルロン酸を含むものでは、分子の大きいヒアルロン酸を含むものや、保湿成分を入れていない基剤より、肌の水分量の値が高くなっていました。一方、肌から逃げる水分の量と、かゆみなどの症状の点数には差がありませんでした。副作用は報告されていません。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 高齢の方で肌の乾燥がどのくらい見られるか(28研究のまとめ) | 根拠 初期 | 53%。介護施設・すねに多い |
| 保湿成分を含む塗るものや、決まった手順のお手入れで乾燥は和らぐか(試験のまとめ) | 根拠 有望 | 和らぐ可能性。確実性は低い |
| 角層の水分量は増えるか(コクラン・レビュー) | 根拠 有望 | はっきりした差なし |
| 1日2回の保湿で皮膚の裂け傷は減るか(984人の試験) | 根拠 有望 | 少なかったと報告。確実性は非常に低い |
| 保湿剤を8週間塗ると角層の水分量は増えるか(福井の22人の試験) | 根拠 有望 | 2種類で増えた。人数が非常に少ない |
| かゆみ・痛み・暮らしの質(ベルリンの314人の試験) | 根拠 有望 | 影響はごくわずか |
お手入れをまとめて変えると、どうなった?
ドイツのベルリンでは、17の介護施設をくじ引きで2つに分けた試験が行われました(2024年発表)。片方の施設では、肌の状態の定期的な確認と、一人ひとりに合わせた洗い方と保湿の手順を6か月続けました。
この手順を取り入れた施設では、皮膚の裂け傷ができた人の割合が19.2%で、取り入れなかった施設の27.2%より低くなっていました。乾燥の程度も平均では軽くなりましたが、人によるばらつきがありました。一方、かゆみや痛み、暮らしの質への影響はごくわずかで、肌のバリアを示す測定値にも変化は見られていません。
では、どうすればよいか
保湿剤で肌の乾燥が和らぐという報告は複数ありますが、どの成分が最もよいか、自宅で暮らす40〜60代でも同じかは分かっていません。試験で多く使われていたのは、保湿成分を含む塗るものを1日2回、毎日続ける方法です。かゆみや赤みが続くときは、皮膚科で相談しましょう。
- すねや腕、背中など、乾きやすい場所の粉ふき・かゆみがないか、入浴後に確かめる
- 保湿成分を含む塗るものを、試験で多かった1日2回を目安に、毎日続けてみる
- 洗浄料は刺激の少ないものを選び、こすりすぎないようにする
- かゆみや赤み、ひび割れが続くとき、持病のある方は、自己判断せず皮膚科の医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 高齢の方の乾皮症の割合とお手入れのまとめ(Geriatr Nurs 2023) | 10のデータベースを2023年8月まで検索し、28研究を採用。乾皮症の割合は統合で53%(95%信頼区間36〜69%)。介護施設と先進国で高く、男女差はほぼなし。軽度・下肢が多い。保湿成分(ヒューメクタント)を含む塗るものの定期的な使用と、決まった手順のお手入れが有用と報告。著者は利益相反なしと開示 |
|---|---|
| 高齢の方の肌のバリアの働きが落ちる要因のまとめ(Jpn J Nurs Sci 2024・北海道大学) | 4,833件から20研究を採用。結果のばらつきと偏りの大きさから統合せず記述でまとめた。要因として認められたのは慢性腎臓病と肌の乾燥のみ。著者は前向きの追跡研究が必要と記載 |
| 介護施設の高齢の方の清潔と保湿のコクラン・レビュー(Cochrane Database Syst Rev 2020) | 60歳以上、6試験・1,598人(すべて介護施設、平均80歳以上)。984人の試験で、1日2回の保湿を加えた組の皮膚の裂け傷は月1,000床日あたり5.76件、通常のお世話の組は10.57件(p=0.004、非常に低い確実性)。乾燥の点数は低下の可能性(低い確実性)。角層の水分量は明らかな差なし。133人の試験で副作用は介入の2組で計4件、通常の組で0件(非常に低い確実性)。著者の一部に企業からの研究資金・講演料の開示あり |
| 肌のお手入れの系統的レビューのまとめ(Int J Nurs Stud 2023・ドイツ) | 12の系統的レビューを採用。刺激の少ない洗浄料と塗るものを用いた決まった手順のお手入れは、せっけんと水によるお手入れより、肌の健康の維持、皮膚の裂け傷の予防、乾皮症の予防と改善に向くと報告。多くのレビューは偏りの危険が高いと評価。著者は利益相反なしと開示 |
| SKINCARE試験(Int J Nurs Stud 2024・ドイツ) | ベルリンの17介護施設をくじ引きで分けたクラスター比較試験(介入9施設・165人、対照8施設・149人)、6か月。皮膚の裂け傷の累積発生19.2%対27.2%、床ずれ13.6%対16.9%、皮膚のこすれによる炎症27.0%対37.8%。失禁に関連する皮膚炎は26.3%対23.1%で介入側が高かった。乾燥は平均で低下。痛み・かゆみ・生活の質への影響はごくわずか。角層の水分量などは変化なし。登録: NCT03824886。著者は利益相反なしと開示 |
| 3種類の保湿剤の比較試験(Dermatol Res Pract 2023・福井大学) | 介護施設の65歳以上。保湿剤A・B・Cの組(6人・7人・5人)と通常のお手入れの組(4人)。1日2回・8週間。角層の水分量はAとBで通常の組より高い(p=0.01、p=0.047)。肌から逃げる水分量は差なし。試験的な段階の試験。著者は利益相反なしと開示 |
| 分子量の異なるヒアルロン酸の塗る試験(Arch Dermatol Res 2024・インドネシア) | 介護施設の60〜80歳・乾皮症の36人。二重盲検で、脚の3か所に低分子・高分子ヒアルロン酸と基剤を割り付け、4週間。肌の水分量の値は低分子56.37、高分子52.37、基剤49.01で低分子が高い。肌から逃げる水分量と症状の点数は差なし。副作用の報告はなかった。登録: NCT06178367。資金・利益相反は抄録に記載なし |
- Yao D, et al. The prevalence and interventions of xerosis cutis among older adults: A systematic review and meta-analysis. Geriatr Nurs. 2023. PMID 37844538
- Konya I, et al. Risk factors of skin barrier dysfunction in older adults: A systematic review. Jpn J Nurs Sci. 2024. PMID 38516948
- Cowdell F, et al. Hygiene and emollient interventions for maintaining skin integrity in older people in hospital and residential care settings. Cochrane Database Syst Rev. 2020. PMID 32006460
- Fastner A, et al. Skin assessments and interventions for maintaining skin integrity in nursing practice: An umbrella review. Int J Nurs Stud. 2023. PMID 37099847
- Völzer B, et al. Enhancing skin health and safety in aged care (SKINCARE trial): A cluster-randomised pragmatic trial. Int J Nurs Stud. 2024. PMID 37956524
- Aoki M, et al. Effectiveness of Three Types of Moisturizers on Senile Dry Skin: A Randomized Controlled Pilot Trial. Dermatol Res Pract. 2023. PMID 37520456
- Muhammad P, et al. Effectiveness of topical hyaluronic acid of different molecular weights in xerosis cutis treatment in elderly: a double-blind, randomized controlled trial. Arch Dermatol Res. 2024. PMID 38829483

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この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。










