
クレアチンで薄毛になる? 髪と男性ホルモンを測った比較試験
結論は、クレアチンのサプリで薄毛になるという根拠は、いまのところ見つかっていません。髪を直接測った12週間の比較試験では差がなく、「薄毛になる」説のもとになった2009年の小規模な試験も、髪そのものは調べていませんでした。ただし髪を調べた試験は若い男性の1本だけで、女性や中高年については分かっていません。
- 「クレアチンで薄毛になる」説のもとは、ラグビー選手20人の3週間の試験。男性ホルモンの一種DHTが上がったが、髪は調べていない
- 髪の密度や太さを直接測った2025年の比較試験(18〜40歳の男性、12週間)では、クレアチン1日5gと偽の粉で差がなかった
- 閉経後の女性の試験のまとめや、腎臓の研究のまとめでは、副作用は軽く、腎臓の働きを示す値にもはっきりした差はなかった
- 女性や中高年の髪、1年以上続けた場合の影響を調べた試験はまだない
クレアチンのサプリで薄毛になるという根拠は、いまのところ見つかっていません。髪の密度や太さを直接測った12週間の比較試験では、クレアチンの組と偽の粉の組で差がありませんでした。ただし、髪を調べた試験はこの1本だけで、対象は18〜40歳の男性に限られています。
クレアチンは、肉や魚に含まれ、体の中でも作られる成分です。筋トレをする人のサプリとして広く使われ、最近は50代以上の筋肉の研究でも取り上げられています。
なぜ「クレアチンで薄毛になる」と言われる?
きっかけは、2009年に南アフリカで行われた小規模な試験です。大学のラグビー選手20人が、クレアチンと偽の粉(ブドウ糖)を時期を分けて両方とり、血液の男性ホルモンを比べました。最初の7日間は1日25g、その後の14日間は1日5gをとる方法です。
この試験では、テストステロン(代表的な男性ホルモン)の値は変わりませんでした。一方で、ジヒドロテストステロン(DHT)は7日後に56%高くなり、14日後も最初より40%高いままでした。DHTは、テストステロンから作られる、より作用の強い男性ホルモンです。日本皮膚科学会の診療ガイドラインでも、男性型脱毛症(AGA)に関わるホルモンとして説明されています。
この結果から「DHTが増えるなら薄毛につながるのでは」という見方が広まりました。ただ、この試験は髪そのものを調べていません。
髪を直接調べた試験では、どうだった?
2025年に、イランの研究チームなどが、髪を直接測る比較試験の結果を発表しました。くじ引きで組を分け、筋トレの習慣がある18〜40歳の男性45人に、クレアチン1日5gか、見た目の同じ偽の粉を12週間とってもらっています。最後まで参加したのは38人です。
髪は、毛の密度、毛穴から生える毛のまとまりの数、毛の太さの合計を専用の機器で測りました。抜け毛の状態を見る検査も行っています。その結果、どの項目でも、二つの組の変化に差はありませんでした。DHTの値や、テストステロンに対するDHTの比率にも差は出ていません。研究チームは、クレアチンが薄毛につながるという主張に反する結果だとしています。
注意したいのは、研究者の一部が、クレアチンの製造会社やサプリの会社の顧問を務めていると開示している点です。結果を読むときには、この点も頭に置いておく必要があります。
2009年の結果と違うのはなぜ?
理由ははっきりしていません。考えられる違いとして、2009年の試験は最初の1週間に1日25gという多い量をとっていたのに対し、2025年の試験は最初から1日5gでした。期間は3週間と12週間です。2009年のDHTの上昇が、その後ほかの試験で確かめられたかどうかも、今回調べた範囲では分かりませんでした。
2021年には、クレアチンを研究してきた専門家のチームが、よくある疑問を整理した解説を出しています。その中でも「薄毛になるのか」が問いの一つとして取り上げられました。この解説は、1日3〜5g程度の量であれば、おおむね問題なく使われていると述べています。
40代以上の女性や、腎臓への影響は?
閉経後の女性(平均約62歳)608人を対象にした7つの比較試験のまとめが、2026年に発表されています。期間は12〜104週間です。副作用は軽いもので、偽の粉の組と同じ程度でした。腎臓の検査の値にも変化はなかったと報告されています。ただし、このまとめは髪の変化を調べた項目に含めていません。
腎臓については、2025年に21の研究を調べたまとめもあります。クレアチンをとると、血液のクレアチニン(腎臓の働きを見る健診の項目)がわずかに上がっていました。一方、腎臓がどれだけ血液をろ過できているかを示す値(GFR)には、はっきりした差がありませんでした。研究チームは、腎臓の働きが落ちたためというより、クレアチンが体の中で分解される量が増えたためと考えられるとしています。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 髪の密度・太さが変わるか(18〜40歳の男性、12週間の比較試験) | 根拠 有望 | クレアチン1日5gと偽の粉で差なし |
| DHT(男性ホルモンの一種)が上がるか(2025年の比較試験) | 根拠 有望 | 偽の粉の組と差なし |
| DHTが上がるか(ラグビー選手20人、3週間) | 根拠 有望 | 7日後に56%上昇。髪は調べていない |
| 閉経後の女性の副作用・腎臓(7つの比較試験のまとめ) | 根拠 確立 | 副作用は軽く、偽の粉と同程度。腎臓の値に変化なし |
| 腎臓の働き(21の研究のまとめ) | 根拠 確立 | クレアチニンはわずかに上昇、GFRに差なし |
では、どうすればよいか
いまある研究からは、ふつうの量のクレアチンで薄毛が進むとは言えません。一方で、女性や中高年の髪を調べた試験はなく、長く続けた場合の髪への影響も分かっていません。31の観察研究をまとめた2026年の解析では、男性型の薄毛と、家族の薄毛(約2.7倍)や喫煙(約1.5倍)との関連が報告されています。抜け毛が急に増えたと感じたときは、サプリをやめるかどうかだけで判断せず、皮膚科で相談してください。
- クレアチンを使う場合、研究で多く使われている量は1日3〜5g程度。多い量を続けた場合の髪への影響は調べられていない
- 健診や通院で血液検査を受けるときは、クレアチンをとっていることを伝える。クレアチニンの値が少し上がることがある
- 腎臓の病気がある方、妊娠中・授乳中の方、持病で薬を飲んでいる方は、使う前に医師に相談する
- 抜け毛が急に増えた、まだらに抜けるといったときは、皮膚科で相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 髪を直接測った比較試験(J Int Soc Sports Nutr 2025) | 筋トレの習慣がある18〜40歳の男性45人をクレアチン1日5g群と偽薬(マルトデキストリン5g)群に無作為に割り付け、12週間。完了38人。総テストステロン・遊離テストステロン・DHT、毛の密度・毛包単位数・毛の太さの合計(専用の撮影機器)とトリコグラムで評価。すべての項目で群間差なし。著者の一部がクレアチンの製造会社・サプリの会社の顧問、研究用クレアチンの提供を受けたと開示。イラン・カナダ・米国の研究チーム |
|---|---|
| ラグビー選手の試験(Clin J Sport Med 2009) | 大学のラグビー選手20人の二重盲検・偽薬対照のクロスオーバー試験(休薬期間6週間)。クレアチン1日25gを7日間、その後1日5gを14日間。テストステロンは変化なし。DHTは7日後に56%、21日後に最初より40%高い(P<0.001)。DHT/テストステロン比は36%・22%上昇。髪は評価していない。南アフリカ・ステレンボッシュ大学 |
| 閉経後の女性の7試験のまとめ(J Int Soc Sports Nutr 2026) | 閉経後の女性(平均約62歳)を対象にした偽薬対照の比較試験7本・608人、12〜104週間。副作用は軽度で偽薬と同程度、腎臓の指標に変化なし。骨密度は全体で変化なし。事前登録なし。著者の一人がクレアチンの製造会社が支援する諮問委員会の委員長、掲載料の一部を同社が負担 |
| 腎臓の21研究のまとめ(BMC Nephrol 2025) | 2000年〜2025年3月の研究21本を系統的に検討し、12本(クレアチン群177人・対照群263人)でメタ解析。血清クレアチニンはわずかだが有意に上昇(1週間以内と12週間超の研究で有意)。GFRに有意差なし。著者は利益相反なしと開示。イランの研究チーム |
| 専門家のチームによる解説(J Int Soc Sports Nutr 2021) | クレアチンについてのよくある12の疑問(水分の貯留、腎臓、薄毛など)を専門家のチームが文献から検討したレビュー。推奨量(1日3〜5g、または体重1kgあたり0.1g)では比較的よく耐えられるとしている。著者の多くがクレアチンの製造会社の諮問委員などを務めると開示 |
| 日本皮膚科学会の診療ガイドライン(2017年版) | 男性型脱毛症の発症に、テストステロンから変換されるDHTが関わると説明している |
| 男性型の薄毛の危険因子のまとめ(BMC Public Health 2026) | 観察研究31本、薄毛のある人1万1,224人・ない人3万6,825人。家族の薄毛があることのオッズ比2.72、喫煙1.46。飲酒・睡眠不足・太りすぎは進行と関連。著者は利益相反なしと開示。中国の研究チーム |
- Lak M, et al. Does creatine cause hair loss? A 12-week randomized controlled trial. J Int Soc Sports Nutr. 2025. PMID 40265319
- van der Merwe J, et al. Three weeks of creatine monohydrate supplementation affects dihydrotestosterone to testosterone ratio in college-aged rugby players. Clin J Sport Med. 2009. PMID 19741313
- Naddafha S, et al. Creatine monohydrate for lean mass, strength, and bone density in postmenopausal women: a systematic review and meta-analysis. J Int Soc Sports Nutr. 2026. PMID 42141930
- Naeini EK, et al. Effect of creatine supplementation on kidney function: a systematic review and meta-analysis. BMC Nephrol. 2025. PMID 41199218
- Antonio J, et al. Common questions and misconceptions about creatine supplementation: what does the scientific evidence really show? J Int Soc Sports Nutr. 2021. PMID 33557850
- Li H, et al. Risk factors for androgenetic alopecia: a systematic review and meta-analysis. BMC Public Health. 2026. PMID 41606541
- 日本皮膚科学会. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版. 日皮会誌 127(13): 2763-2777, 2017. リンク

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この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。










