
生物学的年齢とは? 血液で測るエピジェネティック年齢で分かること
結論は、生物学的年齢は老化の研究の物差しとしては有望ですが、個人の健康を判断する検査としては、まだ根拠が足りないということです。DNAの印から年齢を推定する「エピジェネティック時計」について、体の衰えとの関係、生活習慣で変わるか、測定のぶれを、研究から整理しました。
- 生物学的年齢は、血液のDNAに付く印(メチル化)から推定する年齢。計算式(時計)の種類がいくつもある
- 24の研究のまとめでは、GrimAgeなどで年齢の加速が大きい人ほどフレイルの程度が高い傾向。初期の時計では関連が見られなかった
- 食べる量を減らす試験やオメガ3の試験で、数値の進み方がゆっくりになったと報告。ただし差は数か月分と小さい
- 同じ血液を測り直して最大9年ずれた報告があり、個人で1回の数値を判断に使うのは難しい
結論から言うと、血液のDNAの印から計算する生物学的年齢は、同じ年齢の人どうしで体の衰え方の差を見る手がかりとして研究が進んでいますが、個人の健康の判断に使える段階ではありません。数値が生活習慣で変わるという報告は出始めているものの、変化は数か月分と小さく、それで病気が減るかは分かっていません。
生物学的年齢とは、何を測っている?
生まれてからの年数を暦の年齢と呼ぶのに対し、体の状態から推定した年齢を生物学的年齢と呼びます。いま研究で最も使われているのは、エピジェネティック年齢です。DNAには、遺伝子の働きを調整する小さな印(メチル化)が付いていて、その付き方は年齢とともに変わります。血液などから数百か所の印を読み取り、計算式で年齢を推定します。この計算式は「時計」と呼ばれ、HorvathやGrimAge、DunedinPACEなど、作り方の違う種類がいくつもあります。
推定した年齢が暦の年齢より高いことを、年齢の加速と言います。例えば60歳の人が65歳と出れば、5年分の加速です。DunedinPACEだけは年齢ではなく、1年あたりに老化がどれだけ進むかという速さを示します。
数値が高い人は、本当に体が衰えている?
2025年に、生物学的年齢とフレイル(体力や気力が落ち、病気や転倒をしやすくなった状態)の関係を調べた24の研究、2万8,325人分のまとめが発表されました。参加者の平均年齢の中央値は65.2歳です。
初期の時計で推定した年齢そのものには、フレイルとの関連が見られませんでした。一方、GrimAgeなど後から作られた時計で年齢の加速が大きい人ほど、その時点でフレイルの程度が高い傾向がありました。時間を追った分析で関連が残ったのはGrimAgeだけで、その大きさもわずかでした。どの時計を使うかで、結果がかなり変わるということです。
運動している人は、生物学的年齢が低い?
2026年には、体を動かす量と生物学的年齢の関係を調べた44の研究、14万5,465人分のまとめが出ました。全体として、よく体を動かす人ほど推定年齢が低い傾向がありましたが、一つひとつの研究では差がはっきりしないものも多くありました。
数値をまとめて計算できたのは7つの研究だけです。運動量が多いほど、HorvathとGrimAgeでは年齢の加速が小さくなっていましたが、HannumとPhenoAgeでは差が見られませんでした。ほとんどが一時点だけを調べた研究のため、運動したから数値が下がったのか、もともと健康な人がよく動いているのかは区別できません。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 年齢の加速が大きい人ほど、フレイルの程度が高いか(24の研究のまとめ) | 根拠 初期 | GrimAgeなどでは高い傾向。初期の時計の推定年齢では関連なし |
| よく体を動かす人ほど、推定年齢が低いか(44の研究のまとめ) | 根拠 初期 | HorvathとGrimAgeで低い傾向。HannumとPhenoAgeでは差なし。多くは一時点の調査 |
| 食べる量を25%減らすと、数値は変わるか(220人・2年の比較試験の追加分析) | 根拠 有望 | 老化の速さ(DunedinPACE)はゆっくりに。推定年齢では差なし。差は小さい |
| オメガ3・ビタミンD・運動で、数値は変わるか(777人・3年の比較試験の追加分析) | 根拠 有望 | オメガ3で3種類の時計がゆっくりに。差は約3〜4か月分 |
| 数値を下げると、病気や死亡が減るか | — | 調べた試験はない |
生活を変えると、数値は変わる?
くじ引きで組を分けた比較試験の結果を、後から追加で分析した報告が2つあります。
米国の試験(CALERIE)では、肥満のない大人220人を、食べる量を25%減らす組と、普段どおり食べる組に分けて2年間追いました。減らした組ではDunedinPACEで測る老化の速さがゆっくりになりましたが、PhenoAgeやGrimAgeの推定年齢には、はっきりした差が出ませんでした。研究チームも、差は小さいとしています。
欧州の高齢者の試験(DO-HEALTH)では、777人の血液を調べました。ビタミンD、オメガ3脂肪酸(魚の油に多い脂肪)、自宅での運動の3つを組み合わせて割り当て、3年間追っています。オメガ3の組では、3種類の時計で数値の進み方がゆっくりになっていました。3つを組み合わせると、PhenoAgeでは差がさらに大きくなりました。それでも3年間の差は、およそ3〜4か月分です。
個人で検査を受けて、数値を比べてよい?
同じ血液を2回測っても、数値がずれることがあります。2022年の研究では、同じ試料を繰り返し測ったところ、代表的な6つの時計で最大9年の開きが出ました。計算の方法を工夫した改良版では、多くの試料で差が1.5年以内に収まったと報告されています。
試験で見られた変化が数か月分であることを考えると、1回の検査の結果や、数年分の上下だけで体の状態を判断するのは難しいと言えます。個人で申し込める検査もありますが、どの時計を使い、測定のぶれをどう抑えているかは、会社によって違います。
どう受け止めればよいか
生物学的年齢は、老化の研究で、生活習慣の影響を早く見るための物差しとして期待されています。ただ、数値を下げることが長生きや病気の予防につながるかは、まだ確かめられていません。気になる方は、まず健診の血圧や血糖、体力の衰えといった、意味が分かっている数値を見直すのが現実的です。
- 生物学的年齢の検査を受けるなら、1回の数値で判断せず、どの時計を使っているか、測定のぶれをどう抑えているかを確認する
- 結果を比べるなら、同じ方法・同じ検査で比べる。数年分の上下は、測定のぶれの範囲に入ることがある
- 体を動かす、食べすぎを控えるといった習慣は、生物学的年齢とは別に、ほかの研究で健康との関係が調べられている。続けやすいものから取り入れる
- 数値に不安があるときや、持病がある方が食事や運動を大きく変えるときは、医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 生物学的年齢とフレイルのまとめ(Lancet Healthy Longev 2025) | 2011年〜2025年6月の論文から、24の研究(一時点17、追跡1、両方6)・2万8,325人。平均年齢の中央値65.2歳。初期の時計の推定年齢と年齢差はフレイルと関連なし。一時点の分析では、Hannum・PhenoAge・GrimAgeの年齢の加速と老化の速さが高いフレイルと関連(標準化β 0.06〜0.11)。追跡の分析で関連が残ったのはGrimAgeのみ(5研究・6,143人、β 0.02)。資金はシンガポール国立大学。責任著者が老化指標の学術団体の委員と、健康長寿医療のクリニックの共同創業者であることを開示 |
|---|---|
| 体を動かす量と生物学的年齢のまとめ(Lancet Healthy Longev 2026) | 44の研究・14万5,465人(18歳以上、平均年齢24.1〜78.5歳)。統合できたのは一時点の調査7本。運動量が1標準偏差多いと、Horvathの年齢の加速が0.03標準偏差、GrimAgeが0.09標準偏差小さい。HannumとPhenoAgeでは有意差なし。資金はシンガポール国立大学とシンガポール国立医学研究評議会。責任著者の利益相反は上と同じ |
| 食べる量を減らす試験(CALERIE、Nat Aging 2023) | 肥満のない大人220人を、摂取エネルギーを25%減らす組と普段どおりの組に分け、2年間。血液のDNAの印を追加で分析。DunedinPACEで老化の速さがゆっくりに。PhenoAgeやGrimAgeなどの推定年齢には有意な変化なし。効果の大きさは小さい。DunedinPACEの発明者として登録され、企業に権利が供与されている著者2人を開示 |
| ビタミンD・オメガ3・運動の試験(DO-HEALTH、Nat Aging 2025) | 高齢者777人。ビタミンD(1日2,000IU)、オメガ3(1日1g)、自宅での運動プログラムを組み合わせて割り当て、3年間。追加の分析。オメガ3でPhenoAge・GrimAge2・DunedinPACEの進み方がゆっくりに。3つの組み合わせでPhenoAgeに上乗せの効果。3年間の差は標準化で0.16〜0.32、約2.9〜3.8か月分。時計の特許を扱う非営利団体の創設者で、老化研究の企業に所属する著者を開示 |
| 測定のぶれの研究(Nat Aging 2022) | 同じ試料を繰り返し測ると、代表的な6つの時計で最大9年の開き。計算方法を変えた改良版では、多くの試料で1.5年以内に一致。著者が開発した指標は検査を扱う企業に権利が供与されており、その企業が一部のデータを提供したことを開示(資金提供はなし) |
- Tay JH, et al. Biological age measured by DNA methylation clocks and frailty: a systematic review and meta-analysis. Lancet Healthy Longev. 2025. PMID 41207303
- Shan J, et al. Physical activity and biological age measured by DNA methylation clocks: a systematic review and meta-analysis. Lancet Healthy Longev. 2026. PMID 42068988
- Waziry R, et al. Effect of long-term caloric restriction on DNA methylation measures of biological aging in healthy adults from the CALERIE trial. Nat Aging. 2023. PMID 37118425
- Bischoff-Ferrari HA, et al. Individual and additive effects of vitamin D, omega-3 and exercise on DNA methylation clocks of biological aging in older adults from the DO-HEALTH trial. Nat Aging. 2025. PMID 39900648
- Higgins-Chen AT, et al. A computational solution for bolstering reliability of epigenetic clocks: Implications for clinical trials and longitudinal tracking. Nat Aging. 2022. PMID 36277076

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この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。










