
バクチオールはレチノールの代わりになる? 比較試験とまとめで分かったこと
「肌にやさしいレチノールの代わり」として、植物由来の成分バクチオールを配合した化粧品が増えています。しわやシミへの働きがレチノールと比べてどうなのか、人を対象にした試験と研究のまとめから整理しました。
- 米国の44人の比較試験では、バクチオールのクリームとレチノールのクリームで、12週間後のしわの面積と色むらは同じ程度に減ったと報告されている
- かさつきやひりつきは、レチノールの組のほうが多く報告されていた
- ただし、バクチオールの人の試験15本のうち12本は比べる組がなく、研究のまとめは「試験の質が低い」としている
- 32の研究のまとめでは、しわへの推奨の強さはレチノールとビタミンCがA、バクチオールはCとされた
- まれにかぶれた例の報告もあり、刺激が少ないとされる成分でも、合うかどうかは人によって異なる
米国の44人の比較試験で、バクチオールのクリームは、レチノールのクリームと同じ程度にしわの面積や色むらを減らしたと報告されています。ただし、人の試験は少なく質も十分ではないため、「レチノールの代わりになる」と言えるだけの根拠はまだそろっていません。
バクチオールとは、どんな成分?
バクチオールは、インドなどで使われてきたマメ科の植物(オランダビユ)の種や葉に多く含まれる成分です。レチノール(ビタミンAの一種)とは形がまったく違いますが、培養した皮膚の実験では、レチノールとよく似た遺伝子の働きの変化を起こすと報告されました。この実験をきっかけに、「レチノールに似た働きをする植物の成分」として化粧品に使われるようになりました。
レチノールは、しわへの研究が多い成分ですが、使い始めに赤みやかさつき、ひりつきが出やすいことが知られています。そのため、刺激の少ない代わりの成分として、バクチオールに関心が集まっています。
レチノールと比べた試験では、どうだった?
2019年に、米国カリフォルニア大学デービス校のチームが、44人を対象にした比較試験(くじ引きで組に分けて比べる方法)の結果を発表しました。参加者は、0.5%のバクチオールのクリームを1日2回、または0.5%のレチノールのクリームを1日1回、12週間顔に塗りました。どちらを塗っているかは、参加者にも評価する医師にも分からないようにしています。
高解像度の写真で調べたところ、どちらの組でも、しわの面積と色素の沈着がはっきり減っていました。2つの組の間に、統計的な差はありませんでした。一方、皮膚がかさついてむける、ひりひりするといった訴えは、レチノールの組で多くなっていました。
注意したいのは、何も入っていないクリームを塗る組がなかったことです。また、44人という人数では、2つの成分の差が小さいときに、その差を見分けることは困難です。「同じ程度」という結果は、この点を含めて受け止める必要があります。
ほかの研究を集めたまとめでは?
2024年に、バクチオールを肌に塗った人の試験を集めた系統的レビュー(決まった方法で研究を集めて評価するまとめ)が発表されました。対象は15本の試験で、しわのほか、にきびや、にきびの後の色素沈着を調べたものも含まれます。
15本のうち12本は、比べる組がなく、どの成分を塗るか本人も分かっている試験でした。10本はほかの成分も配合した製品を使っており、4本はバクチオールの濃度が書かれていませんでした。そのため結果を数字でまとめることはできず、著者は「試験の方法に厳密さが足りず、偏りの危険が高い」としています。
同じ2024年には、しわなどに使われる化粧品の成分を広く比べたまとめも出ています。32の研究、1,236人分を評価し、推奨の強さを付けました。レチノールとビタミンCはA、バクチオールはCでした。全体として大きな副作用は少なかったものの、長い期間のデータが足りないとされています。
2025年には、中国の敏感肌の34人が、バクチオールと植物のエキスを配合した美容液を28日間使った試験も報告されました。肌から逃げる水分やしわの面積が減ったとされていますが、化粧品会社の研究所による試験で、抄録には比べる組の記載がありません。
刺激はまったくない?
バクチオールは刺激が少ないとされていますが、かぶれ(アレルギー性の接触皮膚炎)が起きた例も報告されています。2022年のまとめでも、この1例が副作用の報告として挙げられていました。報告は多くありませんが、刺激の少ない成分でも、肌に合わないことはあり得ます。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| しわの面積(44人・12週間の比較試験) | 根拠 有望 | レチノールと同程度に減った。組の間に差なし |
| シミ・色素の沈着(同じ試験) | 根拠 有望 | レチノールと同程度に減った。組の間に差なし |
| かさつき・ひりつき(同じ試験) | 根拠 有望 | レチノールの組のほうが多く報告された |
| 人の試験の質(15試験のまとめ) | 根拠 確立 | 12本は比べる組なし。偏りの危険が高い |
| しわへの推奨の強さ(32研究のまとめ) | 根拠 確立 | レチノール・ビタミンCはA、バクチオールはC |
| かぶれ | 根拠 初期 | アレルギー性の接触皮膚炎の例が報告されている |
では、どう考えればよいか
しわについての研究の量と質は、いまのところレチノールのほうが上です。レチノールで赤みやひりつきが出てしまう方にとって、バクチオールは試してみる候補の一つになりますが、根拠は1本の小さな比較試験が中心です。新しい化粧品は、目立たない場所で少量から試すと安心です。
- しわやシミが気になるときは、まず毎日の日焼け止めと保湿を続ける
- レチノールで赤みやひりつきが出る方は、バクチオールを候補の一つとして考えてよい。ただし根拠はまだ限られている
- 新しい化粧品は、腕の内側など目立たない場所で少量から試し、赤みやかゆみが出たら使うのをやめる
- かぶれが続く方、妊娠中・授乳中の方、皮膚の病気で治療中の方は、使う前に皮膚科の医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| バクチオールとレチノールの比較試験(Br J Dermatol 2019) | 米国カリフォルニア大学デービス校。44人をくじ引きで2組に分け、0.5%バクチオールのクリームを1日2回、または0.5%レチノールのクリームを1日1回、12週間。参加者と評価者の両方に分からない二重盲検。写真解析で、両組ともしわの面積と色素沈着が有意に減少し、組の間に統計的な差はなし。レチノールの組で皮膚のむけ・ひりつきの訴えが多い。何も入っていない基剤の組はなし。抄録に資金の記載なし |
|---|---|
| バクチオールの人の試験15本のまとめ(J Drugs Dermatol 2024) | 2022年8月までの4つのデータベースを検索。15本の試験(老化・にきび・炎症後の色素沈着)。12本は対照のない非盲検、10本は複数成分の配合製品、4本は濃度の記載なし。ばらつきが大きく、メタ解析は不可能。著者は方法の厳密さが足りず、偏りの危険が高いと結論 |
| 抗老化の化粧品成分のまとめ(Arch Dermatol Res 2024) | 2023年1月までの検索で32研究・1,236人(比較試験20本、非ランダム化の非盲検試験12本)。オックスフォードの基準で推奨の強さを付け、レチノールとビタミンCはグレードA、バクチオールなど4成分はグレードC。全体に重い有害事象は少ない。限界: 比較試験の数が少なく、長期のデータが不足 |
| 敏感肌の34人の試験(Health Sci Rep 2025) | 中国の敏感肌の34人が、バクチオールと植物(ミロバラン)のエキスを配合した美容液を1日2回、28日間使用。経皮水分蒸散量が24.90%、しわの面積が16.06%減少し、有害事象の報告なし。著者は化粧品会社の研究開発部門の所属で、利益相反なしと記載。抄録に対照の組の記載なし |
| バクチオールの皮膚科での研究のまとめ(J Cosmet Dermatol 2022) | PubMed の30本のうち、前臨床16本、臨床7本、論評3本、総説2本、有害事象の報告1本。光老化・にきび・炎症後の色素沈着で研究が多い。副作用の報告は接触皮膚炎の1例 |
| かぶれの報告(Contact Dermatitis 2019) | 化粧品に含まれるバクチオールによるアレルギー性の接触皮膚炎の報告(リトアニア・ビリニュス大学)。抄録なし |
- Dhaliwal S, et al. Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing. Br J Dermatol. 2019. PMID 29947134
- Fanning JE, et al. Human Clinical Trials Using Topical Bakuchiol Formulations for the Treatment of Skin Disorders: A Systematic Review. J Drugs Dermatol. 2024. PMID 38564402
- Lau M, et al. Cosmeceuticals for antiaging: a systematic review of safety and efficacy. Arch Dermatol Res. 2024. PMID 38758222
- Shi X, et al. Prospective, Randomized, Double-Blind Assessment of Supramolecular Bakuchiol and Terminalia Chebula Extract for Facial Photoaging in Chinese Sensitive Skin Population. Health Sci Rep. 2025. PMID 41424674
- Puyana C, et al. Applications of bakuchiol in dermatology: Systematic review of the literature. J Cosmet Dermatol. 2022. PMID 36176207
- Malinauskiene L, et al. Bakuchiol-A new allergen in cosmetics. Contact Dermatitis. 2019. PMID 30644106

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この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。










