みなさん、こんにちは、ReverseAging.Tech 薬剤師の安藤です。
幹細胞治療に興味を持って調べてみると、日本のクリニックで提供されているのは、ほぼすべてが「自家(自分の細胞)」を使った治療です。
しかし世界に目を向けると、「他家(ドナー由来の細胞)」を使った治療が急速に広がっています。
なぜ日本では他家細胞を選べないのか?
その背景にある法律や規制、そして海外で広がるもうひとつの選択肢について、わかりやすく解説します。
✔️ 投資対効果を最大化する「幹細胞の選び方」
✔️ 日本ではできない海外の幹細胞とは?比較情報も
自分の細胞?他人の細胞? — 幹細胞治療の2つのアプローチ

自家細胞:自分の体から採取する方法
自家細胞点滴とは、患者さん自身の体から採取した細胞を培養し、再び体内に点滴で戻す治療法です。
日本のクリニックで最も多いのは、お腹や太ももの脂肪組織から採取する「脂肪由来間葉系幹細胞」で、自分の細胞を使うため拒絶反応のリスクが低いという安心感があります。
他家細胞:健康なドナーから提供される方法
一方、他家細胞は、健康なドナーから提供された細胞を使用します。
代表的なのは、出産時の臍帯(へその緒)から採取する「臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSC)」や、若いドナーの骨髄から採取する「骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)」です。
これらの2種については、あらかじめ培養・品質管理された細胞を使うため、患者さん側の採取が不要で、すぐに投与できるという特徴があります。
自家と他家の違いについて、さらに詳しくはこちらの記事もあわせてご覧ください。

なぜ日本のクリニックでは「自家(自分の細胞)」しか選べないのか

再生医療等安全性確保法の3分類
日本では2014年に施行された「再生医療等安全性確保法」² により、幹細胞治療はリスクに応じて3段階に分類されています。
| 分類 | リスク | 対象となる細胞 |
|---|---|---|
| 第一種 | 高 | iPS細胞・ES細胞・他家細胞 |
| 第二種 | 中 | 自家細胞(培養あり) |
| 第三種 | 低 | 自家細胞(培養なし・相同利用) |
分類が上がるほど、求められる審査や手続きが厳格になります。
第一種と第二種では「特定認定再生医療等委員会」の審査が必要ですが、第一種はさらに厚生労働大臣への計画提出と承認が求められます。
他家細胞は「第一種」——iPS細胞と同じ最高リスク分類
注目すべきは、他家細胞がiPS細胞やES細胞と同じ「第一種」に分類されている点です。
iPS細胞は万能性を持つがゆえに腫瘍化リスクが指摘される細胞ですが、間葉系幹細胞(MSC)は成体幹細胞であり、性質が大きく異なります。
それでも「他人の細胞を使う」という一点で、最も高いリスク分類が適用されます。
この規制の厳しさが、日本のクリニックが他家細胞治療に参入しにくい最大の理由です。
テムセルの事例——日本唯一の他家MSC製品、しかし用途は限定的
「日本では他家細胞が使えない」と言われることがありますが、厳密には禁止されているわけではありません。
2015年には、JCRファーマが開発した「テムセル®HS注」が、日本初の他家由来間葉系幹細胞製品として承認されています。
ただし、テムセルの適応は「造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病(GVHD)」という非常に限定的な疾患で、一般のクリニックで受けられる治療ではありません。
現在、日本でPMDA(医薬品医療機器総合機構)に承認された他家由来の再生医療等製品は、このテムセルと、2026年に承認されたiPS細胞由来の心筋シート「リハート®」のわずか2製品のみです。
つまり、制度上は不可能ではないものの、実態として日本で他家細胞治療を受けられる機会は極めて限られているのが現状です。
自分の細胞なら安心——それ、本当?(80代では新生児の1%以下に)

自家細胞の最大のメリットは「自分の細胞だから安心」という点です。
しかし、その安心感だけで選ぶ前に、知っておきたい事実があります。
年齢とともに幹細胞の数は激減する
体内の幹細胞は、年齢とともに確実に減少していきます。
新生児の体内にある幹細胞の数を基準にすると、80代では1%を下回るほどにまで減少すると報告されています³。
脂肪由来の幹細胞は骨髄由来と比べて年齢の影響を受けにくいとされていますが、高齢になるほど培養に時間がかかる傾向があります。
採取時の身体的負担
自家細胞を得るには、脂肪吸引などの採取手術が必要です。
局所麻酔で行われる比較的安全な処置ではあるものの、術後の腫れや痛み、回復期間といった身体的負担が伴います。
また、採取した細胞を培養して投与可能な状態にするまでに数週間を要するため、すぐに治療を開始できるわけではありません。
治療が必要な人ほど、細胞の質が低い?
自家細胞の最大の課題は、患者さん自身の年齢や健康状態がそのまま細胞の質に反映されるという点です。
加齢によって幹細胞の増殖能力や分化能力は低下していきます。
さらに糖尿病や慢性炎症などの全身疾患があると、その低下はより顕著になると報告されています⁴。
つまり、治療を最も必要としている方ほど、自家細胞の質が十分でないというジレンマが生じうるのです。
✔️ 投資対効果を最大化する「幹細胞の選び方」
✔️ 日本ではできない海外の幹細胞とは?比較情報も
世界が注目する臍帯由来・骨髄由来幹細胞という選択肢

臍帯由来幹細胞(UC-MSC)の特徴
臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSC)は、出産後に役目を終えた臍帯(へその緒)から採取されます。
臍帯のウォートンジェリー(臍帯内のゼリー状組織)に豊富に含まれており、倫理的な問題がなく安定して採取できることが大きな特徴です。
若いドナー由来のため細胞の活性が高く、増殖能力に優れています。
また、免疫調節能力が高いため、投与後の拒絶反応リスクが低いとされています。
糖尿病、肺線維症、免疫性疾患など、幅広い領域で臨床試験が進んでいます。
骨髄由来幹細胞(BM-MSC)の特徴
骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)は、間葉系幹細胞研究の出発点ともいえる存在で、最も長い研究の歴史を持っています。
前述のテムセル®HS注も骨髄由来MSCです。
組織修復能力や免疫調節機能に関する豊富なエビデンスが蓄積されており、急性GVHDの治療では実際に承認製品が複数の国で使用されています。
臨床試験の7割が他家を採用——FDA・EMAでも承認製品が登場
自己免疫疾患に対する幹細胞療法の臨床試験234件を分析した研究¹ によると、全体の約70.9%が他家細胞を採用しています。
自家ではなく他家がスタンダードになりつつあるのです。
規制当局の承認も進んでいます。
2024年12月には、米国FDAが他家骨髄由来の間葉系幹細胞製品「Ryoncil(remestemcel-L)」を承認しました。
小児のステロイド抵抗性急性GVHD(移植片対宿主病)が適応で、FDAが承認した初の間葉系幹細胞製品です。
こうした世界的な流れは、他家細胞の安全性と有効性に対する信頼が着実に高まっていることを示しています。
マレーシアに渡航してまで受ける人がいる理由

なぜマレーシアなのか
マレーシアでは、保健省(MOH)と国家薬事規制庁(NPRA)の監督のもと、GMP(適正製造規範)基準に準拠した施設で他家細胞治療が提供されています。
日本のように「他家細胞=最高リスク分類」という画一的な規制ではなく、品質管理とドナースクリーニングを軸とした枠組みであるため、他家UC-MSCやBM-MSCの点滴を受けることが可能です。
クアラルンプールは東京から直行便で約7時間。
医療インフラが整備されており、英語でのコミュニケーションも可能なことから、日本からの渡航先として選ばれています。
渡航して治療を受けるまでの流れ
一般的な流れとしては、事前のオンライン相談で健康状態や目的を確認した後、渡航スケジュールを調整します。
現地では医師の診察を経て、点滴による幹細胞投与を受けます。
滞在期間は施術内容によりますが、多くの場合は数日間です。
日本語でのサポート体制が整ったコーディネーターを利用することで、言葉の不安なく治療を受けることができます。
渡航から施術までの詳しい流れについては、こちらのページもご覧ください。

まず知ることから始めてみませんか

日本では規制の仕組みにより、他家細胞治療を受ける機会が極めて限られています。
しかし、世界ではすでに臨床試験の多数が他家細胞を採用し、FDA・EMAの承認製品も登場しています。
「自分の細胞だから安心」という考え方は、ひとつの事実ではあります。
しかし、年齢による幹細胞の減少や品質の変化を考えると、それだけが最良の選択とは限りません。
大切なのは、自家と他家それぞれの特徴を正しく理解した上で、ご自身にとって最適な選択肢を見つけることです。
ReverseAging.Techでは、幹細胞治療を検討されている方に向けて、無料の動画セミナー「後悔しない幹細胞選び」をご用意しています。
まずは知ることから、始めてみませんか。
参考文献
1. Global clinical trials on stem cell therapy for autoimmune diseases: trends and future directions. Frontiers in Immunology, 2025. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12328461/
2. 再生医療等の安全性の確保等に関する法律について. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/index.html
3. Mesenchymal Stem Cell Senescence during Aging: From Mechanisms to Rejuvenation Strategies. Aging and Disease, 2023. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10529739/
4. Allogeneic vs. autologous mesenchymal stem/stromal cells in their medication practice. Cell & Bioscience, 2021. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8561357/

