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健診のALT(GPT)、30を超えたら? 肝臓の数値の読み方と研究で分かったこと

健診の結果で、ALT(GPT)に印がついていても、そのままにしている方は少なくありません。日本肝臓学会が示した「30を超えたら受診」の目安と、その背景にある研究を整理しました。

根拠 有望5分で読めます公開 2026.10.26更新 2026.10.26
RATRAT編集部
生成AIで下書きし、編集部が出典と内容を確認しました
この記事の要点
  • 日本肝臓学会は2023年、ALTが30 U/Lを超えたら、まずかかりつけ医を受診するよう呼びかけている
  • 肝臓の病気のない健康な人を集めた解析では、ALTの上限の目安は男性36、女性28 U/L前後と報告されている
  • ALTが高くなる理由として多いのは脂肪肝で、日本の健診でも脂肪肝の人の割合は増え続けている
  • 減量や運動でALTや肝臓の脂肪が下がることは、比較試験のまとめで報告されている

日本肝臓学会は、健診などでALTが30 U/Lを超えた人に、まずかかりつけ医を受診するよう勧めています。健康な人のデータを集めた解析でも、ALTの上限の目安は30前後と報告されており、「基準値の範囲だから大丈夫」とは言い切れない数字です。

ALT(GPT)は何を表している?

ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ。古い呼び名はGPT)は、主に肝臓の細胞の中にある酵素です。肝臓の細胞が傷むと血液の中に漏れ出るため、血液中の量が増えます。健診ではAST(GOT)やγ-GTPと並んで、肝臓の状態を見る数値として測られています。

ALTが高くなる理由はいくつかあります。ウイルス性の肝炎やお酒の飲みすぎのほか、近年多いのが脂肪肝です。お酒をあまり飲まなくても、肥満や高血糖などに伴って肝臓に脂肪がたまる状態は、2023年に欧米などの肝臓の学会が合意し、MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)という新しい名前で呼ばれるようになりました。

「30を超えたら受診」は、どこから来た目安?

日本肝臓学会は2023年、「奈良宣言」として、ALTが30 U/Lを超えたらかかりつけ医を受診するよう呼びかけました。学会の論文によると、かかりつけ医がまず原因を調べます。脂肪肝が疑われる場合は、年齢や血小板の数などから計算するFIB-4という指標で、肝臓が硬くなる線維化の危険を見積もり、危険が高い人を専門医に紹介する流れです。

背景には、ALTの上限をどこに置くかという議論があります。2024年に発表された解析では、肝臓の病気のない健康な人を集めた12の研究、約35万人のデータから、上位5%に当たる値を上限の目安として計算しました。結果は全体で32、男性36、女性28 U/Lでした。一方、太り気味の人を含めると上限は40まで上がり、BMIや中性脂肪が高い集団ほどALTも高い傾向がありました。

日本で脂肪肝はどれくらい増えている?

世界の92の研究、約940万人分をまとめた2023年の解析では、脂肪肝の人の割合は約30%でした。1990〜2006年の約25%から、2016〜2019年には約38%に増えています。

日本でも、健診で腹部の超音波検査を受けた人を2008〜2019年度にわたって調べた研究があります。脂肪肝の人の割合は、男性で26.9%から43.1%に、女性で9.9%から17.9%に増えていました。特定健診が始まった後も、増える流れは止まっていません。

脂肪肝は、肝臓以外にも関係する?

2024年に発表された129の研究のまとめでは、脂肪肝のある人は、ない人に比べて、心臓や血管の病気が起きる危険が1.43倍でした。糖尿病は2.56倍、高血圧は1.75倍、慢性腎臓病は1.38倍と報告されています。ただし、いずれも観察研究で、脂肪肝そのものが原因かどうかまでは分かりません。

効果ごとの根拠の強さ判定の基準
調べたこと根拠結果
ALTが30 U/Lを超えたら受診する目安(日本肝臓学会の奈良宣言)根拠 有望学会が受診の流れとともに呼びかけている
健康な人のALTの上限(12研究・約35万人の解析)根拠 初期全体32、男性36、女性28 U/L
脂肪肝の人は、心臓や血管の病気・糖尿病が起きやすいか(129研究のまとめ)根拠 初期心臓や血管の病気1.43倍、糖尿病2.56倍
減量の取り組みでALTや肝臓の脂肪は下がるか(22の比較試験のまとめ)根拠 確立ALTが平均約10 U/L低下、肝臓の脂肪も減少
運動で肝臓の脂肪は減るか(14の比較試験のまとめ)根拠 確立30%以上減る割合が約3.5倍。週150分の早歩き程度から

数値を下げるために、何が分かっている?

脂肪肝の人を対象にした22の比較試験、2,588人分をまとめた2019年の解析では、減量の取り組みを行った組は、体重が平均3.6kg多く減りました。ALTは平均で約10 U/L下がり、肝臓の脂肪も減っていました。主に食事や運動の指導を中心とした試験で、期間の中央値は6か月です。同じ研究チームの別のまとめでは、体重が1kg減るごとにALTが約0.8 U/L下がる関係が報告されています。

運動については、14の比較試験、551人分をまとめた2023年の解析があります。運動をした組は、MRIで測った肝臓の脂肪が30%以上減る割合が、しなかった組の約3.5倍でした。この差は、体重が5%以上減ったかどうかとは関係なく見られています。効果が見られたのは、早歩きで週150分程度に当たる運動量からで、それより少ない量でははっきりした差が出ていません。

なお、ALTが30以下でも安心とは限りません。日本の研究では、ALTが30以下の脂肪肝の人の中にも線維化が進んだ人がおり、特に糖尿病があってFIB-4の値が高い人で多く見られました。

まだ分かっていないことALTの上限の目安は、どの集団を「健康」とみなすかで変わり、30という線で区切ることがどこまで将来の病気を減らすかは、まだ確かめられていません。脂肪肝と心臓や血管の病気、糖尿病との関係は観察研究によるもので、原因かどうかは区別できていません。減量や運動の比較試験は多くが数か月から1年ほどで、肝臓の線維化や肝臓の病気、寿命への影響を長く追った研究は限られています。減量の比較試験のまとめには薬や手術の試験も一部含まれ、試験ごとのばらつきも大きく報告されています。運動のまとめは551人と小さく、著者の一部には製薬企業との関係が開示されています。日本の健診の研究は超音波検査による判定で、施設の受診者が日本人全体を代表しているかは分かりません。

では、どうすればよいか

ALTが30を超えていたら、1回の数値で自己判断せず、かかりつけ医で原因を調べてもらうことが勧められています。脂肪肝が原因の場合は、体重を少し減らすことや、週150分ほどの早歩きなどの運動が、数値を下げる方法として研究されています。

今日からできること
  • 健診の結果で、ALT(GPT)とAST(GOT)、γ-GTPの値を確認し、前の年と比べてみる
  • ALTが30を超えていたら、基準値の範囲内かどうかにかかわらず、かかりつけ医に相談する
  • 体重が増えてきた方は、体重の数%を目安に、無理のない範囲で減らすことを考える
  • 早歩きなどの運動を、少しずつ週150分程度に近づける
  • 糖尿病などの持病がある方や、お酒を毎日飲む方は、ALTが30以下でも肝臓の検査について医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
脂肪肝の新しい呼び名の合意(Hepatology 2023)欧米などの3つの大きな肝臓の学会が主導し、56か国236人が参加した合意形成。NAFLDに代わる名前としてMASLDを選び、5つの心臓や代謝の危険因子のうち1つ以上があることを定義に含めた
奈良宣言の解説(Hepatol Res 2026)日本肝臓学会の役員による特別記事。ALTが30 U/Lを超えたらかかりつけ医を受診し、ウイルス性肝炎、MASLD、アルコール関連肝疾患、自己免疫性の肝臓の病気などの原因を調べる。MASLDが疑われる場合はFIB-4や血小板数で線維化の危険を分け、高い人を専門医に紹介する流れを示す
ALTの上限の目安の解析(Aliment Pharmacol Ther 2024)健康な人の12研究・34万9,367人と、代謝の病気がある可能性のある人を含む35研究・23万2,388人。上位5%値を上限として推定。代謝の病気のない人で全体32、男性36、女性28 U/L。太り気味・肥満の人で40(標準体重29)、2型糖尿病で36(なし33)。BMI・中性脂肪と正、HDLと負の相関。資金・利益相反は抄録に記載なし
ALT30以下の脂肪肝の線維化(Diagnostics 2025)肝生検を受けたMASLD患者1,381人のうちALT30以下の115人を分析し、別の818人のうち174人で検証した後ろ向き研究。FIB-4が2.67以上、特に2型糖尿病を伴う人で進んだ線維化が多く、糖尿病がなくFIB-4が2.67未満の人では進んだ線維化は見られなかった。一部の著者に企業からの講演料・研究費あり
日本の健診での脂肪肝の推移(Intern Med 2024)2008〜2019年度に腹部超音波検査を含む健診を受けた人の分析(抄録では48,332人)。脂肪肝の割合は男性26.9%→43.1%、女性9.9%→17.9%。脂肪の摂取の傾向と相関。利益相反なし
世界の脂肪肝の割合(Hepatology 2023)92研究・936万1,716人。全体の割合30.05%。1990〜2006年25.26%から2016〜2019年38.00%に増加。東アジア29.71%。筆頭著者に製薬企業などとの顧問関係あり
脂肪肝と長期の病気のまとめ(Clin Gastroenterol Hepatol 2024)129研究のメタ解析。脂肪肝のある人はない人に比べ、心臓や血管の病気のハザード比1.43、高血圧1.75、糖尿病2.56、慢性腎臓病1.38。観察研究のまとめ
減量の取り組みと肝臓の数値(JAMA Intern Med 2019)脂肪肝の人の比較試験22本・2,588人(平均45歳、約66%が男性)。生活指導15本、薬6本、手術1本。期間の中央値6か月。体重−3.61kg、ALT−9.81 U/L、肝臓の脂肪も減少。線維化には有意な変化なし。試験間のばらつきが大きい。一部の著者に減量プログラムの企業からの研究費(本研究外)あり
減量の幅と肝臓の数値(Metabolism 2021)43研究・2,809人。体重1kgの減少ごとにALT−0.83 U/L、AST−0.56 U/L、肝臓の脂肪−0.77ポイント。追跡の中央値6か月
運動と肝臓の脂肪(Am J Gastroenterol 2023)脂肪肝の成人の比較試験14本・551人(平均53.3歳、平均BMI31.1)。MRIで肝臓の脂肪が30%以上減る割合のオッズ比3.51。週750 MET・分以上(早歩き週150分程度)で有意、それ未満では有意差なし。5%以上の体重減少とは独立。著者に製薬企業からの研究費・顧問料あり
出典
  1. Rinella ME, et al. A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. Hepatology. 2023. PMID 37363821
  2. Kawaguchi T, et al. The Nara Declaration: A New Collaborative Flow for Chronic Liver Disease Between Primary Care Physicians and Gastroenterologists/Hepatologists. Hepatol Res. 2026. PMID 41250978
  3. Tan EX, et al. Upper limit of normal ALT levels in health and metabolic diseases: Pooled analysis of 423,355 individuals with bootstrap modelling. Aliment Pharmacol Ther. 2024. PMID 38372477
  4. Kawanaka M, et al. Tips for Hepatologist Referral of Patients with Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease with Alanine Aminotransferase Levels ≤ 30 U/L. Diagnostics (Basel). 2025. PMID 40647590
  5. Sato A, et al. Nonalcoholic Fatty Liver Disease in Japan Continue to Increase Even after the Launch of Specific Health Checkups. Intern Med. 2024. PMID 37532550
  6. Younossi ZM, et al. The global epidemiology of nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD) and nonalcoholic steatohepatitis (NASH): a systematic review. Hepatology. 2023. PMID 36626630
  7. Chan KE, et al. Longitudinal Outcomes Associated With Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease: A Meta-analysis of 129 Studies. Clin Gastroenterol Hepatol. 2024. PMID 37775028
  8. Koutoukidis DA, et al. Association of Weight Loss Interventions With Changes in Biomarkers of Nonalcoholic Fatty Liver Disease: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Intern Med. 2019. PMID 31260026
  9. Koutoukidis DA, et al. The effect of the magnitude of weight loss on non-alcoholic fatty liver disease: A systematic review and meta-analysis. Metabolism. 2021. PMID 33259835
  10. Stine JG, et al. Exercise Training Is Associated With Treatment Response in Liver Fat Content by Magnetic Resonance Imaging Independent of Clinically Significant Body Weight Loss in Patients With Nonalcoholic Fatty Liver Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis. Am J Gastroenterol. 2023. PMID 36705333
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加藤順彦
代表者加藤順彦MARUICHI PTE. LTD. CEO

自らの体験をきっかけに、幹細胞点滴の魅力を広めています。100名を超える方々をご案内する中で、その可能性をますます実感しています。人生100年時代にふさわしい選択肢として、あなたの選択肢のひとつに加えていただけたら嬉しいです。

山中大介医師
監修者・医師山中大介DMTC CLINIC 院長

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