安静時の脈拍は1分に何回がいい? 心拍数と健康の研究で分かったこと
健診や血圧計、スマートウォッチで目にする心拍数。落ち着いているときの心拍数が高い人ほど、亡くなる割合が高いという報告があります。何回くらいがふつうか、数字が高めのときに何が分かっているかを、人の研究から整理しました。
- 安静時心拍数の正常の範囲は1分間に60〜100回とされてきたが、50〜90回とする提案もある
- 約125万人の追跡研究のまとめでは、10回多いごとに追跡中に亡くなる割合が9%高かった
- 日本の8,363人の24年の追跡では、全体でははっきりした関係が見られず、結果は分かれている
- 持久力の運動やヨガで安静時心拍数は下がると、比較研究のまとめで報告されている
安静時の心拍数(脈拍)が高い人ほど、その後の追跡で亡くなる割合が高いことが、世界の追跡研究のまとめで報告されています。ただし、どれも観察研究で、心拍数を下げれば長生きできると確かめたものではなく、日本人の研究では結果が分かれています。
安静時の心拍数は、何回くらいがふつう?
安静時心拍数は、座ったり横になったりして落ち着いているときの、1分間の心臓の拍動の数です。手首などで数える脈拍とほぼ同じ数になります。
一般に、1分間に60〜100回が正常の範囲とされてきました。ただ、この数字は話し合いで決められたもので、きちんと調べて決めたものではないと指摘されています。米国の医師が健康な500人を調べた報告では、50〜90回を正常の範囲とするほうが実態に合うと提案されました。
ふだんの暮らしの中で測った数字も報告されています。米国で約6万7,000人がスマートフォンのカメラで測った約314万回の記録では、平均は1分間に79.1回でした。年齢が上がるほど心拍数は低めで、45〜60歳では95%の人が100回以下、60歳を超える人では95回以下でした。女性であること、体重が多いこと、持病の数が多いことは、心拍数が高めになることと関係していました。
心拍数が高い人は、寿命が短い?
2016年に、46の追跡研究、約125万人をまとめた解析が発表されました。安静時心拍数が1分間に10回多いごとに、追跡中に亡くなる割合は9%高くなっていました。最も低い組と比べると、60〜80回の人では12%、80回を超える人では45%高いという結果です。血圧などの心臓や血管の病気の危険因子を差し引いても、結果はほぼ変わりませんでした。ただし、研究ごとのばらつきが大きく、結果の出た研究ほど発表されやすい偏りも見つかっています。
2025年には、台湾の約64万人とノルウェーの約5万6,000人を、およそ25年追った研究が報告されました。心拍数が1分間に80〜99回で血圧はふつうの人は、心拍数が60〜69回で高血圧の人よりも、亡くなる割合が高くなっていました。推定された寿命の短さは、前者で約10年、後者で約5.5年でした。高血圧との関係は40歳未満でははっきりしませんでしたが、心拍数との関係はどの年代でも見られました。
日本人の研究では、どうだった?
日本の一般の住民8,363人を24年追った研究(NIPPON DATA80)では、結果が異なりました。全体では、安静時心拍数と、心臓や血管の病気で亡くなる割合のあいだに、はっきりした関係は見られませんでした。
血液中のアルブミン(栄養状態の目安になるたんぱく質)で分けると、違いが出ています。アルブミンが低めの人では、心拍数が最も高い組で亡くなる割合が27%高くなっていました。一方、アルブミンが高めの人では、逆に低い結果でした。心拍数の意味は、体の状態によって変わる可能性があると研究チームは考えています。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 安静時心拍数が高い人は、追跡中に亡くなる割合が高いか(46研究のまとめ) | 根拠 初期 | 10回多いごとに9%高い。研究ごとのばらつきが大きい |
| 心拍数が高めの人と高血圧の人の比較(台湾・ノルウェーの約69万人) | 根拠 初期 | 80〜99回で血圧がふつうの人のほうが、亡くなる割合が高かった |
| 日本人で同じ関係が見られるか(NIPPON DATA80) | 根拠 初期 | 全体でははっきりせず、アルブミンの値で結果が逆になった |
| 運動で安静時心拍数が下がるか(191研究のまとめ) | 根拠 有望 | どの運動でも下がる方向。持久力の運動とヨガではっきり |
| 腕時計型の機器で心拍数を正確に測れるか(24の系統的レビューのまとめ) | 根拠 確立 | 平均の誤差は±3%ほど。機器による差がある |
運動で心拍数は下がる?
2018年に、健康な人を対象にした191の比較研究をまとめた解析が出ています。持久力の運動、筋トレ、ヨガ、太極拳など、調べられたどの運動でも、安静時心拍数は下がる方向でした。男女どちらでもはっきり下がったのは、持久力の運動とヨガでした。もともと心拍数が高い人ほど下がり幅が大きく、年齢が高い人ほど下がり幅は小さい傾向がありました。
ただし、運動で心拍数が下がったことが長生きにつながるかは、比較試験では確かめられていません。
スマートウォッチの心拍数は、どこまで正確?
2024年に、腕時計型などの機器の正確さを調べた24の系統的レビューをまとめた報告が出ました。心拍数の誤差は平均で±3%ほどでした。歩数や睡眠時間に比べると、心拍数は比較的よく測れている結果です。ただし、機器によって差があり、正確さを確かめた研究がある機器はまだ一部です。
数字をどう受け止めればよいか
安静時心拍数は、血圧と同じように自分で測れる数字です。1回の数字よりも、同じ条件で測ったときの、ふだんの値と変化を見ることが役に立ちます。いつもより高い状態が続く、脈が飛ぶ、動悸や息切れ、めまいがあるといったときは、医師に相談しましょう。
- 朝など同じ時間帯に、座って落ち着いた状態で心拍数を測り、ふだんの値を記録しておく
- 健診や血圧計で出る心拍数も、血圧と一緒に見ておく
- ウォーキングなどの持久力の運動やヨガを、体調に合わせて続ける
- いつもより高い状態が続く、脈が飛ぶ、動悸・息切れ・めまいがあるときは医師に相談する
- 持病がある人や飲んでいる薬がある人は、運動の始め方や心拍数の目安を医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 正常な心拍数の範囲の再検討(South Med J 1996) | 60〜100回という従来の範囲は合意で決められ、正式に検証されていないと指摘。健康な500人を調べ、フラミンガム研究などの正常値とも合うとして、50〜90回を提案 |
|---|---|
| 日常で測った心拍数の分布(NPJ Digit Med 2019) | 米国のHealth eHeart研究。6万6,788人・314万4,332回のスマートフォンのカメラでの測定。平均79.1回(標準偏差14.5)。95パーセンタイルは18〜45歳で110以下、45〜60歳で100以下、60歳超で95以下。心電図との一致度0.90(50人)。著者の1人はアプリ企業の社員。企業からの資金提供はなし |
| 安静時心拍数と死亡のまとめ(CMAJ 2016) | 前向きコホート46研究、124万6,203人・死亡7万8,349人。10回増えるごとの全死亡の相対リスク1.09、心血管死亡1.08。最も低い群と比べ、60〜80回で1.12、80回超で1.45。異質性と出版バイアスが大きい |
| 台湾MJコホートとノルウェーHUNT研究(Prog Cardiovasc Dis 2025) | 69万2,217人(台湾63万6,064人、ノルウェー5万6,153人)、約25年追跡。心拍数80〜99回で血圧正常の人は、高血圧で心拍数60〜69回の人より全死亡が高い。推定された平均余命の短縮は10.29年と5.53年。高血圧のリスクは40歳未満で有意でなく、心拍数はどの年代でも有意。利益相反なし。資金は抄録に記載なし |
| NIPPON DATA80(J Epidemiol 2023) | 日本の一般住民で心血管病の既往のない8,363人、24.0年追跡。全体では心拍数と心血管死亡に有意な関連なし。アルブミン低値群で最も高い四分位のハザード比1.27、高値群で0.61(交互作用p<0.001)。利益相反なし |
| 運動と安静時心拍数のまとめ(J Clin Med 2018) | 健康な人の対照つき介入研究191本・215サンプル(持久力121、筋トレ43、ヨガ21など)。すべての運動で低下の方向。男女とも有意だったのは持久力の運動とヨガ。介入前の心拍数が高いほど低下が大きく、年齢が高いほど小さい。利益相反なし |
| ウェアラブル機器の正確さのまとめ(Sports Med 2024) | 系統的レビュー24本、検証研究249本・43万465人のアンブレラ・レビュー。心拍数の平均のずれは±3%。市販機器のうち何らかの項目で検証されたのは約11%。資金: アイルランド科学財団。利益相反なし |
- Spodick DH. Normal sinus heart rate: appropriate rate thresholds for sinus tachycardia and bradycardia. South Med J. 1996. PMID 8685750
- Avram R, et al. Real-world heart rate norms in the Health eHeart study. NPJ Digit Med. 2019. PMID 31304404
- Zhang D, et al. Resting heart rate and all-cause and cardiovascular mortality in the general population: a meta-analysis. CMAJ. 2016. PMID 26598376
- Wen CP, et al. Resting heart rate - The forgotten risk factor? Comparison of resting heart rate and hypertension as predictors of all-cause mortality in 692,217 adults in Asia and Europe. Prog Cardiovasc Dis. 2025. PMID 39894380
- Liu Y, et al. Impact of Resting Heart Rate on Cardiovascular Mortality According to Serum Albumin Levels in a 24-year Follow-up Study on a General Japanese Population: NIPPON DATA80. J Epidemiol. 2023. PMID 34511560
- Reimers AK, et al. Effects of Exercise on the Resting Heart Rate: A Systematic Review and Meta-Analysis of Interventional Studies. J Clin Med. 2018. PMID 30513777
- Doherty C, et al. Keeping Pace with Wearables: A Living Umbrella Review of Systematic Reviews Evaluating the Accuracy of Consumer Wearable Technologies in Health Measurement. Sports Med. 2024. PMID 39080098

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この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。










