リカバリーウェア、着るだけで体は休まる? 研究で分かっていること
寝るときや運動のあとに着る「リカバリーウェア」が人気です。体の熱を遠赤外線として返す生地の衣類について、人の試験でどこまで分かっているかを整理しました。
- リカバリーウェアの多くは、鉱物などを練り込んだ生地で、体の熱を遠赤外線として返す衣類
- 日本では2022年から「家庭用遠赤外線血行促進用衣」という一般医療機器の区分がある
- 人の試験は10〜40人ほどの小さなものが中心で、結果はそろっていない
リカバリーウェアについての人の試験は、10〜40人ほどの小さなものがほとんどです。体の回復や睡眠を調べた結果は「差があった」と「差がなかった」が混ざり、まだはっきりしたことは言えません。
リカバリーウェアとは、どんな服?
多くの製品は、セラミックなどの鉱物を練り込んだ生地でできています。体から出る熱を吸収し、「遠赤外線」という目に見えない光として体に返すしくみだとされています。
日本では2022年10月に「家庭用遠赤外線血行促進用衣」という医療機器の区分ができました。厚生労働省の通知による定義は、遠赤外線で血の巡りをよくする衣類です。疲れや筋肉のこりなどをやわらげることを目的としています。上半身用は少なくとも二の腕まで、下半身用は太ももまでを覆うことが条件です。
この区分は、危険の少ない「一般医療機器」です。業界団体がつくった自主基準に合うことを確かめたうえで、国に届け出て販売します。国が製品ごとに効果を審査して承認するしくみではありません。リカバリーウェアと呼ばれる服でも、この区分で届け出ているものと、そうでないものがあります。
届け出の書類には、試験の成績を付ける必要はないと通知に書かれています。医療機器として届け出た製品でも、その製品そのものを人で試した結果があるとは限りません。
運動のあとの回復は、研究でどう出ている?
2021年に、スポーツでの利用を調べた11の研究をまとめた報告が出ています。同じことを調べた研究が少なく、結果も一定しないため、はっきりした結論は出せないとしています。
その後の試験も結果が分かれます。米国の10人の試験では、筋トレのあとに遠赤外線の生地のタイツをはきました。はいた5人は、48時間後のジャンプの回復がよかったと報告されています。ただ、疲れを示す血液の値は、偽物のタイツの5人と差がありませんでした。一方、フランスなどの31人の試験では、腕用の衣類を着ても、腕の血管の太さや血の流れは偽物の衣類と変わりませんでした。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 運動のあとの体の回復(ジャンプ力など) | 根拠 初期 | よくなった報告と差がない報告が混在(小規模) |
| 腕の血管の太さ・血の流れ(安静時) | 根拠 初期 | 偽物の衣類と差がなかった(31人) |
| 睡眠の質(眠りに悩む人) | 根拠 初期 | 普通のパジャマと差がなかった(40人・6週間) |
| レム睡眠の割合(健康な若い男性) | 根拠 初期 | 高くなった(15人・一晩ずつ・企業の支援) |
睡眠への影響は分かっている?
香港では、眠りに悩む40人が6週間パジャマを着る試験が行われました。半分は遠赤外線のパジャマ、半分は見た目が同じ普通のパジャマです。睡眠の質の点数は両方の組でよくなり、組のあいだに差はありませんでした。
日本では、健康な若い男性15人が両方の衣類で一晩ずつ眠った試験があります。遠赤外線の衣類では、夢を見ることが多い「レム睡眠」の割合が22.2%で、普通の衣類の18.6%より高くなりました。ただし、眠った時間の長さや寝つきの効率は変わっていません。この試験は衣類のメーカーが支援しています。
では、どうすればよいか
着心地がよく、くつろげる服として選ぶのは自然なことです。ただ、着るだけで疲れが抜けると期待しすぎないほうがよいでしょう。眠りや回復の土台は、寝る時間をしっかり取ることや、運動のあとに休む日をつくることです。
- 着心地や肌ざわり、洗いやすさなど、毎日着られるかで選ぶ
- 医療機器として届け出ているかは、表示や販売元の説明で確かめる
- 眠りや疲れの悩みが長く続くときは、服に頼らず医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 国の区分 | 一般的名称「家庭用遠赤外線血行促進用衣」(2022年10月新設)。業界団体の自主基準で評価し、製造販売届出を行う。届出書に試験成績書を添付する必要はない(厚生労働省 医療機器審査管理課長通知 2022年12月14日) |
|---|---|
| スポーツでの研究のまとめ | 11の研究を集めた系統的レビュー(PLoS One 2021)。研究の数が少なく結果も一定せず、確かな結論は出せないとした。著者に利益相反なし |
| 筋トレ後の回復 | 米国の大学、20歳前後の男女10人(各組5人)。48時間後のジャンプの指標が改善、疲労を示す血液の値は差なし(J Funct Morphol Kinesiol 2025) |
| 腕の血流 | 男性31人、偽物の衣類と比べる交差試験。血管の太さ・血流・脈波の速さに差なし。衣類の下の圧力は遠赤外線の衣類のほうが高かった。筆頭著者は大学と企業の両方に所属(J Sport Health Sci 2025) |
| 睡眠の質 | 眠りに悩む40人・6週間の予備的な比較試験。主な評価項目(睡眠の質の点数)に差なし(Int J Environ Res Public Health 2023)。著者に利益相反なし |
| 睡眠の段階 | 健康な若い男性15人、一晩ずつの交差試験。耳の中の温度が低く、レム睡眠の割合が高かった。総睡眠時間・睡眠効率は差なし。衣類メーカーが衣類を提供し研究を支援(Sensors 2026) |
- 厚生労働省. 一般的名称「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の新設に伴う既存品目等の取扱いについて(薬生機審発1214第1号). 2022. リンク
- Bontemps B, et al. Utilisation of far infrared-emitting garments for optimising performance and recovery in sport: Real potential or new fad? A systematic review. PLoS One. 2021. PMID 33956901
- Lever JR, et al. A Preliminary Investigation of the Efficacy of Far-Infrared-Emitting Garments in Enhancing Objective and Subjective Recovery Following Resistance Exercise. J Funct Morphol Kinesiol. 2025. PMID 40700216
- Chamoux M, et al. Bioceramic arm garment does not increase diameter of brachial artery and blood flow. J Sport Health Sci. 2025. PMID 41478468
- Chen SC, et al. Improving Sleep with Far-Infrared-Emitting Pajamas: A Pilot Randomized Controlled Trial. Int J Environ Res Public Health. 2023. PMID 36900881
- Nishida M, et al. Physiological Effects of Far-Infrared-Emitting Garments on Sleep, Thermoregulation, and Autonomic Function Assessed Using Wearable Sensors. Sensors (Basel). 2026. PMID 41600346
この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。












