腹囲は体重より大事? 内臓脂肪と健診の数字の読み方
健診で毎年測る腹囲。男性85cm、女性90cmという基準は、どこから来た数字なのでしょうか。体重やBMIとの違い、亡くなる危険との関係、基準をめぐる議論までを、研究をもとに整理しました。
- 日本の基準(男性85cm・女性90cm)は、CTで測った内臓脂肪の面積100cm²に相当する腹囲として、2002年の研究をもとに決められた
- BMIは皮下脂肪の量とよく一致する一方、内臓脂肪との一致は弱く、簡単に測れる数値の中では腹囲が内臓脂肪と最もよく一致していた
- 約253万人の追跡研究のまとめでは、腹囲が10cm大きいごとに亡くなる危険が11%高く、BMIの影響を差し引いても関係が残った
- 女性の90cmは高すぎるという研究もあり、腹囲だけでなく血圧・血糖・脂質を合わせて見ることが提案されている
- 25の比較試験のまとめでは、定期的な有酸素運動で腹囲が平均3.2cm小さくなった
腹囲は、BMI(体重と身長から出す体格の指数)とは別に、亡くなる危険と関係していることが、約253万人の追跡研究のまとめで報告されています。ただし観察研究の結果で、日本の基準値そのものにも見直しの議論があります。
健診の「85cm・90cm」は、どこから来た数字?
日本のメタボリックシンドロームの診断基準では、おへその高さで測った腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上を、内臓脂肪がたまっている目安としています。そのうえで、血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準から外れると、メタボリックシンドロームと診断されます。
この数字の元になったのは、2002年に日本肥満学会の委員会がまとめた研究です。20〜84歳の日本人1,193人について、おなかのCT(体の輪切りの画像)を撮り、内臓脂肪(おなかの内側、腸のまわりにつく脂肪)の面積を測りました。
内臓脂肪の面積が100cm²を超えると、高血糖・脂質の異常・高血圧が重なりやすくなっていました。この100cm²に当たる腹囲は、男性で84.4cm、女性で92.5cmでした。これをもとに、男性85cm、女性90cmが目安とされています。
体重やBMIだけでは、何が分からない?
同じ研究では、BMIは皮下脂肪(皮膚のすぐ下につく脂肪)の量とよく一致していました。一方、内臓脂肪の量との一致は弱く、BMIが25以上の人では、BMIと内臓脂肪の量に関係が見られませんでした。体格が同じでも、内臓脂肪の量は人によって大きく違うためです。
簡単に測れる数値の中で、内臓脂肪の量と最もよく一致したのは腹囲でした。
2020年には、国際的な専門家グループが、腹囲をBMIと並べて毎回測る基本の数値にするよう提言しています。BMIだけでは、脂肪が多いことによる心臓や代謝への危険を十分に評価できない、という理由です。
腹囲が大きいと、亡くなる危険はどう違う?
2020年に、72の追跡研究、約253万人をまとめた解析が発表されました。腹囲が10cm大きいごとに、亡くなる危険は11%高くなっていました。この関係は、BMIの影響を差し引いても残っていました。
腹囲を身長で割った値でも、0.1大きいごとに危険が24%高くなっていました。一方、お尻や太もものまわりが大きいことは、危険が低いことと関係していました。
ただし、これは観察研究のまとめで、腹囲そのものが原因だとまでは言えません。研究ごとの結果のばらつきも大きいとされています。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 日本の診断基準(男性85cm・女性90cm、内臓脂肪100cm²に相当) | 根拠 確立 | メタボリックシンドロームの診断基準に明記 |
| BMIと腹囲、どちらが内臓脂肪をよく表すか(日本人1,193人) | 根拠 初期 | 腹囲が最もよく一致。BMIは皮下脂肪と一致 |
| 腹囲と亡くなる危険(72研究・約253万人のまとめ) | 根拠 初期 | 10cmごとに11%高い。BMIを差し引いても残る |
| 女性の基準値90cmは適切か(日本の研究のまとめ) | 根拠 初期 | 90cmより低い値を示す研究が多い。病気の予測は一致しない |
| 有酸素運動で腹囲は小さくなるか(25試験・1,686人のまとめ) | 根拠 確立 | 平均3.2cm小さくなった |
日本の基準には、どんな議論がある?
2026年に、慶應義塾大学の研究チームが、日本人を対象にした腹囲の基準の研究をまとめました。女性では、内臓脂肪がたまり、危険の要因が重なり始める腹囲は、いまの90cmより低いことが多いと報告されています。
また、腹囲だけで将来の心臓や血管の病気を予測した追跡研究では、結果が一致していません。女性で特にその傾向がありました。研究チームは、腹囲を必須の入口にする仕組みには限界がある可能性を指摘しています。そのうえで、血圧や血糖などの危険がいくつ重なっているかを、より重く見る方向を提案しています。
腹囲が基準未満でも、血圧や血糖が高めであれば注意が要ります。反対に、腹囲が基準を少し超えていても、それだけで病気になるとは限りません。
腹囲を小さくするには、何が分かっている?
体重が多めの大人を対象にした25の比較試験、1,686人分をまとめた解析があります。定期的な有酸素運動(息が少し弾む程度に続ける運動)を行った組では、運動しなかった組より、腹囲が平均3.2cm小さくなっていました。腹囲の変化は、内臓脂肪の量の変化と関係していました。
運動の強さで分けると、きつめの運動では4.2cm、中くらいの強さでは2.5cm小さくなっていました。どちらも数cmの変化で、研究チームも「控えめな減少」と表現しています。
では、どうすればよいか
腹囲は、体重と合わせて見る数字です。毎年の健診の結果を並べ、腹囲が増え続けていないかを確かめてください。血圧・血糖・脂質の値と一緒に見ることが大切で、気になる数字があれば医師や保健師に相談しましょう。
- 健診の結果票を数年分並べ、腹囲と体重がそれぞれどう変わってきたかを見る
- 腹囲は、血圧・血糖・脂質の値と合わせて見る。腹囲が基準未満でも、ほかの数値が高めなら油断しない
- 家で測るときは、健診と同じく立った姿勢で、軽く息を吐いたときに、おへその高さで測る
- 息が少し弾む程度の運動を、日々の予定に組み込む。持病のある方は、始める前に医師に相談する
- 健診で特定保健指導の案内が届いたら、保健師などの面談を受けてみる
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 日本の肥満症の新しい基準(Circ J 2002) | 日本肥満学会の委員会。20〜84歳の日本人1,193人(男性775人・女性418人、健診受診者と肥満外来の患者)。へその高さのCTで内臓脂肪面積を測定。合併症の数が1を超えるのはBMI25、内臓脂肪面積100cm²。BMIと皮下脂肪の相関r=0.82、内臓脂肪とはr=0.54。腹囲と内臓脂肪の相関は男性r=0.68、女性r=0.65。内臓脂肪100cm²に当たる腹囲は男性84.4cm、女性92.5cm |
|---|---|
| 腹囲を基本の数値に(Nat Rev Endocrinol 2020) | 国際動脈硬化学会などの作業部会による提言。腹囲はBMIとは別に、病気と死亡の予測に情報を加えると整理。腹囲の減少を治療の目標とし、中等度の運動や食事の見直しで減らせると記載。年齢・性別・民族ごとの基準値の見直しが課題。著者の一部に製薬企業などとの関係を開示 |
| 中心性肥満と総死亡のまとめ(BMJ 2020) | 72の前向きコホート研究、252万8,297人の用量反応メタ解析。腹囲10cm増加ごとのハザード比1.11(95%信頼区間1.08〜1.13、I²=88%)、腹囲身長比0.1増加ごとに1.24、ウエスト・ヒップ比0.1増加ごとに1.20。ヒップ周囲10cm増加で0.90、太もも周囲5cm増加で0.82。BMIで調整後も関連は残った。資金提供なし |
| 日本の腹囲の基準のレビュー(J Atheroscler Thromb 2026) | 慶應義塾大学。PubMedと医中誌で日本人の研究を検索し、4つの論点で整理。内臓脂肪の蓄積や危険因子の重なりに対応する腹囲は、女性では現行の90cmより低い傾向。腹囲単独と心血管病の発症の関連は、特に女性で一貫しない。利益相反なし |
| 有酸素運動と腹囲のまとめ(Obes Rev 2022) | 体重過多・肥満の成人を対象とした比較試験25本・1,686人のメタ解析。有酸素運動で腹囲が対照より3.2cm減少(95%信頼区間−3.86〜−2.51)。腹囲の変化は内臓脂肪の変化と関連。高強度で−4.2cm、中強度で−2.5cm。利益相反なし |
- 厚生労働省 e-ヘルスネット. メタボリックシンドロームの診断基準. 2021. リンク
- Examination Committee of Criteria for 'Obesity Disease' in Japan; Japan Society for the Study of Obesity. New criteria for 'obesity disease' in Japan. Circ J. 2002. PMID 12419927
- Ross R, et al. Waist circumference as a vital sign in clinical practice: a Consensus Statement from the IAS and ICCR Working Group on Visceral Obesity. Nat Rev Endocrinol. 2020. PMID 32020062
- Jayedi A, et al. Central fatness and risk of all cause mortality: systematic review and dose-response meta-analysis of 72 prospective cohort studies. BMJ. 2020. PMID 32967840
- Uchida T, et al. A Literature Review on the Waist Circumference Criteria for Metabolic Syndrome in Japan: Evidence and Implications for Cardiovascular Risk Stratification. J Atheroscler Thromb. 2026. PMID 42144349
- Armstrong A, et al. Effect of aerobic exercise on waist circumference in adults with overweight or obesity: A systematic review and meta-analysis. Obes Rev. 2022. PMID 35383401
この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。












