1日何歩で長生きに近づく? 歩数の研究をまとめて読む
「1日1万歩」はよく聞く目標ですが、本当に必要なのでしょうか。世界の大規模な調査をまとめた研究から、歩数と長生きの関係を整理しました。
- よく歩く人ほど、追跡中に亡くなる割合が低いという関連が、世界の調査で繰り返し報告されている
- 60歳以上では1日6,000〜8,000歩あたりで差が小さくなり、「1万歩」でなくてもよい可能性がある
- どれも観察研究なので、「歩けば長生きする」とまでは言えない
よく歩く人ほど、その後に亡くなる割合が低いことが、世界の大規模な調査で繰り返し報告されています。ただし「1万歩」でなくてもよさそうです。60歳以上では、1日6,000〜8,000歩あたりで差が小さくなるという結果です。
「1日1万歩」に根拠はある?
「1日1万歩」は広く知られた目標です。ただ、その数字を支える研究は少ないと、研究者自身が指摘しています。
そこで2022年に、世界15の調査をまとめ直した研究が発表されました。対象は大人約4万7,000人です。歩数は体につける計測器で1週間ほど測り、その後の約7年を追いかけています。
歩数の少ない順に4つの組に分けて比べました。最も少ない組は1日約3,500歩です。この組に比べ、ほかの3つの組は、追跡中に亡くなる割合が40〜53%低くなっていました。
年齢による違いもありました。60歳以上では、6,000〜8,000歩あたりまでは歩数が増えるほど割合が下がり、その先はほぼ横ばいでした。60歳未満では、8,000〜10,000歩あたりまで下がり続けました。
2025年には、57本の研究を集めたまとめも出ています。1日2,000歩の人に比べ、7,000歩の人は亡くなる割合が47%低いという結果でした。研究チームは、1万歩は活動的な人の目標として使えるが、7,000歩はより現実的な目標になりうると述べています。
速く歩いたほうがいい?
同じ歩数なら、速く歩くほうがよいのでしょうか。米国で、平均72歳の女性約1万6,700人を約4年追った研究があります。
この研究では、歩数が多いほど亡くなる割合が下がり、1日約7,500歩で頭打ちになりました。1日約4,400歩の人でも、約2,700歩の人より割合は低くなっていました。一方、歩く速さは、歩数の違いを差し引くと、はっきりした差が見られませんでした。
40歳以上の米国人約4,800人を約10年追った研究でも、結果は同じでした。今のところ、速さよりも歩く量のほうが、長生きとの関連がはっきりしています。
「歩けば長生きする」と言える?
ここまでの研究は、どれも「観察研究」です。ふだんの暮らしをそのまま調べ、歩数とその後の健康を見比べる方法です。分かるのは「よく歩く人は長生きの傾向がある」という関連までです。
もともと元気な人ほどよく歩ける、という逆向きの関係もありえます。研究では年齢や持病の影響を差し引いていますが、すべてを取り除くことはできません。
原因と言えるかを確かめるには、「比較試験」が必要です。参加者をくじ引きで2つの組に分け、片方だけに歩いてもらって違いを比べる方法です。ただ、何十年も追って寿命を比べる試験は、現実にはほぼ行われていません。
比較試験で分かっているのは、もう少し手前のことです。8本の比較試験を含む、26の研究のまとめがあります。歩数計を使った人は、使わなかった人より1日約2,500歩多く歩くようになりました。「1日1万歩」のように目標の数字を決めることが、歩数が増えた大きな要因でした。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 歩数が多いほど、亡くなる割合が低いか(15の調査のまとめ) | 根拠 初期 | 低い傾向。60歳以上は6,000〜8,000歩あたりで頭打ち |
| 1日7,000歩と2,000歩の比較(57研究のまとめ) | 根拠 初期 | 7,000歩の人は47%低い |
| 同じ歩数での、歩く速さの違い | 根拠 初期 | はっきりした差は出ていない |
| 歩数計を使うと、歩数は増えるか(8本の比較試験を含む) | 根拠 有望 | 1日約2,500歩増えた |
では、どうすればよいか
まずは、今の自分の歩数を知るところから始めてみてください。スマートフォンにも、歩数を数える機能が入っていることが多いです。そのうえで、無理のない目標の数字を決めましょう。
- スマートフォンや歩数計で、1週間の平均歩数を確かめる
- 今の歩数より少し多い数字を目標にする(目標を決めると歩数が増えやすいと報告されています)
- 60歳以上なら、1日6,000〜8,000歩をひとつの目安にする
- ひざや腰に痛みがある方、心臓などの持病がある方は、増やし方を先に医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 15の調査のまとめ(Lancet Public Health 2022) | 大人4万7,471人、追跡の中央値7.1年、死亡3,013人。最も少ない組(約3,553歩)に比べ、ほかの組の死亡の危険度は0.60・0.55・0.47。60歳以上は6,000〜8,000歩、60歳未満は8,000〜10,000歩まで低下。資金: 米国疾病予防管理センター(CDC) |
|---|---|
| 57研究のまとめ(Lancet Public Health 2025) | 35の調査の57研究。1日2,000歩に比べ7,000歩で死亡の危険度0.53(14研究)。多くの項目で根拠の確かさは「中程度」、転倒は「非常に低い」。資金: オーストラリア国立保健医療研究評議会ほか |
| 高齢女性の追跡研究(JAMA Intern Med 2019) | 平均72歳の米国女性1万6,741人、平均4.3年。約7,500歩で頭打ち。約4,400歩でも約2,700歩より低い。歩く速さは歩数を調整すると有意差なし。資金: 米国国立がん研究所 |
| 米国の全国調査(JAMA 2020) | 40歳以上4,840人、平均10.1年。1日4,000歩に比べ8,000歩で死亡の危険度0.49。歩く速さは歩数を調整すると有意差なし |
| 歩数計の研究のまとめ(JAMA 2007) | 26研究・2,767人(比較試験8本を含む)、平均18週間。比較試験では歩数計を使った人が1日2,491歩多く歩いた。目標歩数の設定が増加と関連。参加者の85%が女性 |
- Paluch AE, et al. Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts. Lancet Public Health. 2022. PMID 35247352
- Ding D, et al. Daily steps and health outcomes in adults: a systematic review and dose-response meta-analysis. Lancet Public Health. 2025. PMID 40713949
- Lee IM, et al. Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women. JAMA Intern Med. 2019. PMID 31141585
- Saint-Maurice PF, et al. Association of Daily Step Count and Step Intensity With Mortality Among US Adults. JAMA. 2020. PMID 32207799
- Bravata DM, et al. Using pedometers to increase physical activity and improve health: a systematic review. JAMA. 2007. PMID 18029834
この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。












