寝る前のスマホは眠りを妨げる? 画面の光と使い方の研究
寝る前のスマホの光が眠りを妨げる、という話をよく聞きます。大人を対象にした研究を見ると、目立つのは光そのものより、画面を見ているうちに寝る時刻が遅くなることです。分かっていることと、まだ言えないことを整理しました。
- 寝る前に毎日画面を見る大人は、見ない人より睡眠がやや短い傾向がある。米国の約12万人の調査では、仕事のある日で約7.6分だった
- 専門家の合意声明は、子どもと10代では画面が眠りを損なうと結論づけた。大人については合意に至っていない
- 画面を暖色にする機能やブルーライトを減らす眼鏡が眠りを変えるかは、比較試験でははっきりしていない
- 研究の結果から考えると、まず見直したいのは寝る時刻と、布団の中で画面を見る時間
寝る前に毎日スマホなどの画面を見る大人は、見ない人より睡眠がやや短い傾向があります。ただし大人での差は1日数分ほどで、画面の光を弱める工夫が眠りを変えるかは、比較試験でははっきりしていません。
寝る前に画面を見る人は、どれくらい睡眠が短い?
寝る前に画面を見るのは、珍しい習慣ではありません。米国の成人1,508人の調査では、90%が週に何晩かは、寝る前1時間以内に電子機器を使っていました。
米国で2018年に、27〜85歳の約12万人に、寝る前の1時間の過ごし方と睡眠を尋ねた調査があります。年齢の中央値は56歳です。寝る前に毎日画面を見る人は41%、まったく見ない人は17%でした。
毎日見る人は、見ない人に比べ、仕事のある日の睡眠が約7.6分、休みの日は約5分短くなっていました。1週間に直すと約50分です。眠りの質が悪いと答えた人の割合は1.33倍でした。寝る時刻も、仕事のある日で9〜16分ほど遅くなっていました。夜型の人ほど、この差は大きくなっていました。
専門家はどう見ている?
米国の睡眠の専門団体は2024年に、16人の専門家による合意声明を出しました。2,209本の論文から絞り込み、画面と眠りの因果を調べた35本の実験・介入研究や、5本の系統的レビューを検討しています。
合意できたのは、子どもと10代では画面の使用が眠りを損なうこと、寝る前に見る内容も影響することでした。使い方を見直す工夫で悪い影響を和らげられる可能性がある、という点も合意されています。一方、大人については、画面が眠りを損なうという点で合意に至りませんでした。投票にかけた10の文のうち、合意できたのは5つです。
ブルーライトは、どこまで問題?
夜に浴びる人工の光は、目を覚ます方向に働き、メラトニン(夜に増えて眠りを促すホルモン)を抑え、体内時計をずらすことが、これまでの実験で示されています。画面の光、とくに青い光(ブルーライト)が眠りに関わるという話の出どころのひとつが、2015年に米国で発表された実験です。寝る前の数時間、光る画面で電子書籍を読んだ日は、紙の本を読んだ日に比べ、寝つくまでに時間がかかりました。メラトニンの分泌が減り、体内時計が遅れ、翌朝の目覚めもすっきりしませんでした。少人数を実験室の条件で調べた研究です。
では、ふだんの暮らしで光を減らすと眠りは変わるのでしょうか。米国で18〜24歳の167人をくじ引きで3組に分けた試験があります。寝る前の1時間に、画面を暖色にする夜間モードでスマホを使う組、夜間モードなしで使う組、スマホを使わない組です。7晩の睡眠を腕の睡眠計で測ったところ、3組に差はありませんでした。ふだん6.8時間以上眠れている人に絞った追加の解析では、スマホを使わない組の眠りが最もよかったと報告されています。
ブルーライトを減らす眼鏡については、2023年に17の比較試験をまとめた系統的レビュー(多くの研究を決まった手順で集めて整理したもの)が出ています。睡眠を調べた6試験では、3試験が改善、3試験が差なしと結果が割れました。研究チームは、眠りの質を変えるかは分からないと結論づけています。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 寝る前に毎日画面を見る大人(米国・約12万人の調査) | 根拠 初期 | 睡眠が仕事のある日で約7.6分短く、眠りの質が悪い人が1.33倍 |
| 子どもと10代の画面の使用(専門家の合意声明) | 根拠 有望 | 眠りを損なうと合意。大人では合意に至らず |
| 光る画面の電子書籍と紙の本(少人数の実験) | 根拠 初期 | 寝つくまでが長く、メラトニンの分泌が減った |
| 夜間モード(暖色)でのスマホ使用(18〜24歳167人の比較試験) | 根拠 有望 | 夜間モードなし・スマホなしの組と睡眠に差なし |
| ブルーライトを減らす眼鏡(17試験のまとめ) | 根拠 初期 | 睡眠への影響は分からない。6試験で結果が割れた |
光のほかに、何が関わっている?
これらの研究からは、光の量に加えて、画面を見ている時間や内容が関わっている可能性がうかがえます。先ほどの約12万人の調査でも、画面を毎日見る人ほど寝る時刻が遅くなっていました。続きが気になる動画や、気持ちが高ぶるやり取りで、寝る時刻そのものが後ろにずれることが考えられます。ただし、大人でどの使い方が最も眠りに響くかは、まだ調べられていません。
では、どうすればよいか
研究の結果から考えると、まず見直したいのは寝る時刻と、布団の中で画面を見る時間です。画面を暖色にする機能や眼鏡は、使ってもかまいませんが、それだけで眠りが変わるかははっきりしていません。
- 寝る時刻を決め、その30分〜1時間前には画面を置く時間をつくってみる
- スマホは手の届かない場所で充電し、布団の中では見ないようにする
- 画面を暖色にする機能や眼鏡は使ってもよいが、それだけで眠りが整うとは考えない
- 寝つけない夜が続く、日中の強い眠気がある場合は、医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 専門家の合意声明(Sleep Health 2024) | 米国の睡眠の専門団体が16人の専門家パネルを組み、修正デルファイ法で合意を形成。2,209本から実験・介入研究35本と系統的レビュー5本を検討。10の文のうち5つで合意(子ども・10代で画面の使用と寝る前の内容が眠りを損なう、行動の工夫で悪影響を和らげられる可能性)。著者は利益相反なしと開示 |
|---|---|
| 米国の約12万人の調査(JAMA Netw Open 2025) | 米国の大規模追跡調査の参加者12万2,058人(女性80%、年齢の中央値56歳)の2018年の回答を断面で解析。寝る前1時間に毎日画面を見る人41.2%、見ない人17.4%。見ない人に比べ、睡眠は仕事のある日で7.64分・休みの日で5.04分短く、眠りの質が悪い人の割合は1.33倍。夜型で差が大きい。睡眠は自己申告。利益相反なし |
| 電子書籍と紙の本の実験(PNAS 2015) | 寝る前の数時間に、光る画面の電子書籍と紙の本を読む条件を比べた実験室研究。背景として、米国の成人1,508人の90%が週に何晩かは寝る前1時間以内に電子機器を使っていたという調査を紹介。電子書籍の条件で、寝つくまでの時間が延び、夜の眠気とメラトニンの分泌が減り、体内時計が遅れ、翌朝の覚醒度が低下。著者の1人に、企業からの顧問料などの開示あり |
| 夜間モードの比較試験(Sleep Health 2021) | 18〜24歳167人(女性71.3%)を3組に無作為に割り付け、7晩連続で腕の加速度計により測定。寝つき・睡眠時間・睡眠効率・中途覚醒に3組で差なし。事後の探索的解析で、平均6.8時間以上眠る人ではスマホなしの組が良好。利益相反なし |
| ブルーライトを減らす眼鏡のまとめ(Cochrane 2023) | 比較試験17本(1試験5〜156人、期間1日未満〜5週間)の系統的レビュー。睡眠の質は6試験148人で結果が割れ、確実性は非常に低い。目の疲れにも差がない可能性。すべての項目で偏りのリスクが低い試験はなし。眼鏡による頭痛・気分の落ち込みなどがまれに報告。著者の一部は対象試験の研究者 |
- Hartstein LE, et al. The impact of screen use on sleep health across the lifespan: A National Sleep Foundation consensus statement. Sleep Health. 2024. PMID 38806392
- Zhong C, et al. Electronic Screen Use and Sleep Duration and Timing in Adults. JAMA Netw Open. 2025. PMID 40146105
- Chang AM, et al. Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015. PMID 25535358
- Duraccio KM, et al. Does iPhone night shift mitigate negative effects of smartphone use on sleep outcomes in emerging adults? Sleep Health. 2021. PMID 33867308
- Singh S, et al. Blue-light filtering spectacle lenses for visual performance, sleep, and macular health in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2023. PMID 37593770
この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。












