塩分は1日何グラムまで? 減塩と血圧の研究で分かったこと
日本人の食塩の摂取量は、国の目標を3g前後上回っています。減らすと血圧はどのくらい変わるのか、どこまで減らせばよいのかを、比較試験のまとめと国の基準から整理しました。
- 国の基準(2025年版)の目標は、大人の男性で1日7.5g未満、女性で6.5g未満。実際の平均は男性10.7g、女性9.1gと報告されている
- 133の比較試験のまとめでは、塩分を減らした組で上の血圧が平均4.3mmHg下がり、減らした量が多いほど下がり幅も大きかった
- 50〜75歳の213人の試験では、1週間の減塩で約7割の人の血圧が下がり、血圧が高くない人でも同じ傾向だった
- 減塩で寿命がのびるかは、比較試験でははっきりしていない。カリウムを含む減塩しおは、腎臓の病気がある方などは医師に相談が要る
塩分を減らすと血圧が下がることは、多くの比較試験のまとめで繰り返し報告されています。減らす量が多いほど下がり幅も大きく、目安としては国が定める男性7.5g未満、女性6.5g未満が出発点になります。
一方で、減塩で寿命がのびるかどうかは、比較試験ではまだはっきりしていません。血圧の研究と、寿命や病気の研究とでは、根拠の強さが異なります。
日本人は、どのくらい塩分をとっている?
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2023年)によると、20歳以上の食塩摂取量の平均は1日9.8gでした。男性は10.7g、女性は9.1gで、この10年間で大きな増減は見られないとされています。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、大人の目標量を男性7.5g未満、女性6.5g未満としています。高血圧や腎臓の病気の重症化を防ぐための目標は、男女とも6g未満です。平均の摂取量は、国の目標を男女とも3g前後上回っていることになります。
減らすと、血圧はどのくらい下がる?
2020年に英国医師会雑誌(BMJ)に載った解析では、133の比較試験、約1万2,000人の結果をまとめています。比較試験は、くじ引きで組に分け、片方だけ塩分を減らしてもらって比べる方法です。塩分を減らした組では、上の血圧が平均4.3mmHg、下の血圧が2.1mmHg下がっていました。
減らした量と下がり幅には比例する関係があり、尿中のナトリウムが50mmol減る(食塩にしておよそ3g)ごとに、上の血圧が約1.1mmHg下がっていました。同じ量を減らした場合、年齢の高い人や、もともと血圧が高い人ほど下がり幅が大きくなっていました。2週間未満の短い試験では、効果が小さく出やすいことも示されています。
血圧が高くない人でも変わる?
2023年に米国医師会雑誌(JAMA)に載った試験では、50〜75歳の213人に、塩分の多い食事と少ない食事を1週間ずつ続けてもらいました。参加者には、血圧が正常な人も、高血圧の人も含まれています。
少ない食事では、多い食事に比べて約73%の人で血圧が下がりました。最初の1週間の時点で比べると、上の血圧の差は平均8mmHgでした。下がり方は、血圧が正常かどうかや、血圧の薬を飲んでいるかどうかで大きくは変わりませんでした。体調の変化を訴えた人の割合は、両方の食事で同じ程度でした。
減塩すると、長生きにつながる?
2025年には、塩分と心臓・血管の病気について、21の解析をまとめた研究が報告されました。塩分を多くとる人では脳卒中が1.34倍多く、ナトリウムが1日1g(食塩で約2.5g)増えるごとに上の血圧が0.6mmHg高くなっていました。ただし、元になった研究には観察研究(ふだんの食事をそのまま調べ、その後の健康と見比べる方法)が含まれており、塩分そのものが原因かどうかまでは言えません。
比較試験では、食塩の一部をカリウムに置き換えた「減塩しお」の研究があります。16の比較試験をまとめた2024年の解析では、減塩しおを使った組で亡くなる割合が12%低いと報告されました。ただし、確からしさは「低い」と評価されています。結果は1本の大規模な試験に大きく左右されており、試験の多くは中国・台湾で行われています。参加者の多くは平均60代で、心臓や血管の病気の危険が高い人でした。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 塩分を減らすと血圧は下がるか(133の比較試験のまとめ) | 根拠 確立 | 上の血圧が平均4.3mmHg低下。減らす量が多いほど大きい |
| 血圧が正常な人でも下がるか(50〜75歳・213人の試験) | 根拠 有望 | 約73%の人で低下。高血圧の有無で大きな差はない |
| 塩分の多さと脳卒中(21の解析のまとめ) | 根拠 初期 | 多い人で1.34倍。観察研究を含む |
| 減塩しおで亡くなる割合は減るか(16の比較試験のまとめ) | 根拠 有望 | 12%低い。確からしさは低く、対象は主に中国の高リスクの人 |
では、どうすればよいか
まずは国の目標量(男性7.5g未満、女性6.5g未満)を目安に、ふだんの量から少しずつ減らしていく方法が現実的です。比較試験のまとめでは、少し減らすだけでも血圧の数値に差が出ていました。健診で血圧が高めと言われた方は、医師と相談して自分の目標を決めると安心です。
- 食品の栄養成分表示の「食塩相当量」を見る習慣をつける
- 麺類の汁や、みそ汁・漬物など塩分の多い品を、1日のうちで少し減らす
- しょうゆやソースは、かけるより小皿につける
- 腎臓の病気がある方や、血圧などの薬を飲んでいる方は、カリウムを含む減塩しおを使う前に医師に相談する。食事の量が落ちやすい高齢の方も、極端に減らす前に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 133の比較試験のまとめ(BMJ 2020) | 24時間の尿でナトリウム量を測った成人の比較試験133本・1万2,197人。減塩の組で尿中ナトリウムが平均130mmol減り、上の血圧4.26mmHg・下の血圧2.07mmHg低下。50mmol減るごとに上の血圧1.10mmHg低下。高齢者・非白人・血圧の高い人で低下が大きい。15日未満の試験では効果が半分以下。著者の一部は減塩を進める非営利団体の役員(無報酬)、1人は試験用の減塩しおの提供を企業から受けたと開示 |
|---|---|
| 50〜75歳の交差試験(JAMA 2023) | 米国2都市の213人(年齢の中央値61歳、女性65%、黒人64%)。塩分の多い食事(ふだんの食事にナトリウム約2,200mgを追加)と少ない食事(1日約500mg)を1週間ずつ。上の血圧の中央値は126mmHgと119mmHg。少ない食事で約73%の人の平均血圧が低下。体調の変化の報告は9.9%と8.0%。著者1人が研究期間中に米国心臓協会の研究費を受けたと開示。臨床試験登録 NCT04258332 |
| 21の解析のまとめ(Ann Med 2025) | 比較試験と観察研究のメタ解析21本・91の項目。塩分の多さで心血管病1.13倍、高血圧1.33倍、脳卒中1.34倍。ナトリウム1g/日増えるごとに上の血圧0.60mmHg上昇。減塩で脂質の数値への悪影響はなし。中国の大学の研究チーム。利益相反なしと開示 |
| 減塩しおの16試験のまとめ(Ann Intern Med 2024) | 6か月以上の比較試験16本。主な結果を報告した8本のうち7本は中国・台湾。亡くなる割合0.88倍(6試験・2万7,710人、確からしさ低)、心血管病で亡くなる割合0.83倍(確からしさ低)、重い有害事象1.04倍(確からしさ非常に低)。1本の大規模試験の影響が大きい。オーストラリアの公的研究費 |
| 日本人の食事摂取基準(2025年版)と国民健康・栄養調査(2023年) | 食塩相当量の目標量は18歳以上の男性7.5g未満、女性6.5g未満。高血圧・慢性腎臓病の重症化予防では6g未満。2023年の平均摂取量は20歳以上で9.8g(男性10.7g、女性9.1g) |
- Huang L, et al. Effect of dose and duration of reduction in dietary sodium on blood pressure levels: systematic review and meta-analysis of randomised trials. BMJ. 2020. PMID 32094151
- Gupta DK, et al. Effect of Dietary Sodium on Blood Pressure: A Crossover Trial. JAMA. 2023. PMID 37950918
- Kong F, et al. Dietary salt intake and cardiovascular outcomes: an umbrella review of meta-analyses and dose-response evidence. Ann Med. 2025. PMID 41243115
- Greenwood H, et al. Long-Term Effect of Salt Substitution for Cardiovascular Outcomes: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Intern Med. 2024. PMID 38588546
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 リンク
- 厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」結果 リンク

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この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。











