初夏の公園の小道を並んで歩く60代の夫婦

トップ / サプリ・成分

サプリ・成分

マルチビタミンは毎日飲む意味がある? 大規模試験と追跡研究で分かったこと

何種類ものビタミンとミネラルを1粒にまとめたマルチビタミンは、健康のために毎日飲む人の多いサプリです。がんや心臓の病気、寿命、記憶について、人の研究でどこまで分かっているかを整理しました。

根拠 有望5分で読めます公開 2026.10.21更新 2026.10.21
RATRAT編集部
生成AIで下書きし、編集部が出典と内容を確認しました
この記事の要点
  • 米国の約2万1,000人の比較試験では、マルチビタミンを毎日飲んでも、がんと心臓・血管の病気になる割合は偽の錠剤と変わらなかった
  • 約39万人を最長27年追った研究でも、飲んでいる人が長生きしているという結果は出なかった
  • 同じ試験の中の研究をまとめた解析では、記憶のテストの成績がわずかによかったと報告されている
  • 米国の予防医療の専門委員会は2022年、がんや心臓の病気を防ぐ目的で飲むことについて「根拠が足りず判断できない」としている

健康な高齢の人がマルチビタミンを毎日飲んでも、がんや心臓・血管の病気になる割合、亡くなる割合は変わらなかったと、米国の大規模な比較試験で報告されています。一方で、記憶のテストの成績はわずかによかったという結果も出ており、どこまで意味のある差なのかは、まだ確かめている段階です。

マルチビタミンを飲む人は、長生きしている?

米国では、大人の約3人に1人がマルチビタミンを飲んでいると報告されています。主な理由は、病気の予防や、食事で足りない栄養を補うことです。

2024年に、米国国立がん研究所のチームが、3つの追跡調査をまとめて分析しました。がんや重い持病のない約39万人を、最長で27年追った研究です。参加者の年齢の中央値は61.5歳でした。

毎日飲んでいる人は、女性や大学を出た人の割合が高く、たばこを吸う人の割合は低くなっていました。こうした違いを差し引いて比べると、亡くなる割合は飲んでいない人より4%高いか、ほぼ同じでした。追跡の前半でも後半でも、低くなってはいませんでした。がんや心臓の病気など、主な死因ごとに見ても同じ傾向でした。

ただし、これは観察研究(ふだんの暮らしをそのまま調べ、その後の健康と見比べる方法)です。体調が悪くなってから飲み始める人がいるなど、取りきれない違いが残る可能性があります。

比較試験では、どんな結果が出た?

原因と言えるかを確かめるには、比較試験(くじ引きで組を分けて比べる試験)が必要です。米国のCOSMOSという試験には、65歳以上の女性と60歳以上の男性、約2万1,000人が参加しました。心臓・血管の大きな病気がなく、最近がんと診断されていない人たちです。半分の人がマルチビタミンを毎日飲み、残りの人は見た目の同じ偽の錠剤を飲みました。

中央値で3.6年たっても、がんになった人は、マルチビタミンの組で518人、偽の錠剤の組で535人と、はっきりした差はありませんでした。心臓・血管の病気も、429人と437人でほぼ同じでした。亡くなる割合にも、はっきりした差は出ていません。安全性の面で、問題になる報告はありませんでした。

がんの種類ごとに見た副次的な分析では、肺がんが少なかったという結果も出ています。ただし、主な問いではなく、多くの項目を調べた中のひとつなので、偶然の差である可能性も残ります。

記憶や「体の年齢」には違いが出た?

COSMOSの参加者の一部では、記憶や考える力のテストも行われました。対面で詳しく調べた573人と、電話やインターネットで調べた2つの研究を合わせ、約5,200人分をまとめた解析があります。マルチビタミンの組では、全体的な認知機能と、出来事を覚えておく記憶のテストの成績が、偽の錠剤の組よりわずかによくなっていました。研究チームは、全体的な認知機能の差を、加齢による低下およそ2年分に相当すると見積もっています。

2026年には、同じ試験の958人で、血液のDNAの印から推定する生物学的年齢(エピジェネティック時計と呼ばれる指標)を調べた結果も発表されました。2年間で、一部の指標の進み方が、1年あたり0.1〜0.2年ほど遅くなっていました。研究チームは、差は小さく、健康にとってどれほどの意味があるかは今後の研究が必要だとしています。

効果ごとの根拠の強さ判定の基準
調べたこと根拠結果
飲んでいる人は長生きしているか(約39万人・最長27年の追跡)根拠 初期亡くなる割合は低くならず、ほぼ同じか4%高い
がんになる割合(約2万1,000人の比較試験)根拠 有望差なし
心臓・血管の病気、亡くなる割合(同じ試験)根拠 有望差なし
記憶や考える力(同じ試験の中の3つの研究のまとめ)根拠 有望わずかによい。加齢による低下約2年分に相当
DNAの印から推定する生物学的年齢(同じ試験の958人)根拠 初期一部の指標で進み方がわずかに遅い。意味は不明
がん・心臓の病気の予防のために飲むこと(米国の専門委員会の勧告)根拠 確立根拠が足りず、利益と害を判断できない

専門家の判断は?

米国の予防医療の専門委員会(USPSTF)は2022年、病気の予防のためのサプリについて勧告を出しました。マルチビタミンについては、がんや心臓・血管の病気を防ぐ目的で飲むことの利益と害を判断するには、根拠が足りないとしています。一方、βカロテンとビタミンEのサプリは、この目的では勧めないとしました。なお、この勧告は妊娠中の人や、栄養が足りないと診断された人を対象にしたものではありません。

まだ分かっていないことCOSMOSの追跡は中央値3.6年と短く、もっと長く飲み続けた場合の結果は分かっていません。参加者は米国の60歳以上で、食事から十分に栄養をとれている人が多い可能性があり、日本人や栄養が足りない人に当てはまるかも分かりません。記憶への差はわずかで、日々の暮らしでの物忘れが減るかは確かめられていません。記憶の研究は同じ試験の中の研究をまとめたもので、別の試験での確認はまだです。生物学的年齢の指標は、その数値が下がれば病気が減るのかが分かっていない指標です。この試験の錠剤は企業から提供され、研究者の一部に企業からの研究費や講演料が開示されています。約39万人の追跡研究は、飲んでいるかどうかを本人の回答で調べた観察研究です。

では、どうすればよいか

マルチビタミンで長生きできると言えるだけの根拠は、いまのところありません。記憶への影響は研究が続いている段階です。まずは野菜や果物、魚、豆などを含む食事を整えることが基本になります。持病のある方や薬を飲んでいる方は、サプリを足す前に医師や薬剤師に相談してください。

今日からできること
  • 野菜や果物、魚、豆、穀物など、いろいろな食品をとる食事をまず整える
  • いま飲んでいるサプリがあれば、ほかのサプリや栄養を強化した食品と成分が重なっていないか表示で確かめる
  • βカロテンやビタミンEを多く含むサプリを、病気の予防のつもりで追加しない
  • 持病のある方、薬を飲んでいる方、妊娠中・授乳中の方は、サプリを始める前に医師や薬剤師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
米国の3つの追跡調査(JAMA Netw Open 2024)NIH-AARP研究・PLCO試験・農業健康研究の成人39万124人(年齢の中央値61.5歳)、がんや慢性疾患の既往なし、最長27年追跡、死亡16万4,762人。マルチビタミンの使用は本人の回答。全死亡のハザード比は追跡の前半1.04(95%信頼区間1.02〜1.07)、後半1.04(0.99〜1.08)。主な死因別でも同様。米国国立がん研究所。利益相反の報告なし
COSMOS(Am J Clin Nutr 2022)米国の65歳以上の女性1万2,666人・60歳以上の男性8,776人、計2万1,442人。二重盲検・偽薬対照の2×2要因デザイン(ココア抽出物との組み合わせ)。主要評価項目の浸潤がんは518人対535人(ハザード比0.97、0.86〜1.09)。心血管病0.98、全死亡0.93で有意差なし。副次項目の肺がんは0.62(0.42〜0.92)。安全性の懸念なし。追跡の中央値3.6年。登録: NCT02422745
COSMOSの認知機能の3研究のまとめ(Am J Clin Nutr 2024)対面で詳しく検査したCOSMOS-Clinic 573人、COSMOS-Mind 2,158人、COSMOS-Web 2,472人。COSMOS-Clinicでは2年間のエピソード記憶の変化が有利(平均差0.12標準偏差)、全体的な認知機能は有意差なし(0.06)。3研究のまとめで全体的な認知機能0.07、エピソード記憶0.06標準偏差の差。全体的な認知機能の差は認知の加齢約2年分に相当と著者は推定
COSMOSのエピジェネティック時計(Nat Med 2026)事前に計画された補助研究、958人(女性482人・男性476人)。2年間で、マルチビタミンの組はPCGrimAgeの年あたりの変化が−0.113年、PCPhenoAgeが−0.214年(5つの指標のうち第2世代の時計で差)。もともと生物学的年齢が進んでいた人で差が大きかった。ココア抽出物は影響なし。研究者の一部が試験の錠剤を提供した企業などから研究費・講演料を受けていると開示
米国予防医療専門委員会の勧告(JAMA 2022)妊娠していない地域在住の成人が対象。マルチビタミンでがん・心血管病を防ぐことの利益と害は、根拠が不十分で判断できない(Iステートメント)。βカロテンとビタミンEのサプリは、この目的では勧めない(D推奨)。米国では成人の31%がマルチビタミンを使用
出典
  1. Loftfield E, et al. Multivitamin Use and Mortality Risk in 3 Prospective US Cohorts. JAMA Netw Open. 2024. PMID 38922615
  2. Sesso HD, et al. Multivitamins in the prevention of cancer and cardiovascular disease: the COcoa Supplement and Multivitamin Outcomes Study (COSMOS) randomized clinical trial. Am J Clin Nutr. 2022. PMID 35294969
  3. Vyas CM, et al. Effect of multivitamin-mineral supplementation versus placebo on cognitive function: results from the clinic subcohort of the COcoa Supplement and Multivitamin Outcomes Study (COSMOS) randomized clinical trial and meta-analysis of 3 cognitive studies within COSMOS. Am J Clin Nutr. 2024. PMID 38244989
  4. Li S, et al. Effects of daily multivitamin-multimineral and cocoa extract supplementation on epigenetic aging clocks in the COSMOS randomized clinical trial. Nat Med. 2026. PMID 41803341
  5. US Preventive Services Task Force; Mangione CM, et al. Vitamin, Mineral, and Multivitamin Supplementation to Prevent Cardiovascular Disease and Cancer: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement. JAMA. 2022. PMID 35727271
無料動画セミナーのサムネイル
動画 約15分
特集・無料動画セミナー若返り研究の最前線にある「幹細胞」。いま、どこまで来ている?

15分の無料動画で、幹細胞の仕組みと最新の研究、受けられる場所や費用の考え方までお伝えします。

この記事は役に立ちましたか?

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。

次に読む

ReverseAging.Tech をつくる人

加藤順彦
代表者加藤順彦MARUICHI PTE. LTD. CEO

自らの体験をきっかけに、幹細胞点滴の魅力を広めています。100名を超える方々をご案内する中で、その可能性をますます実感しています。人生100年時代にふさわしい選択肢として、あなたの選択肢のひとつに加えていただけたら嬉しいです。

山中大介医師
監修者・医師山中大介DMTC CLINIC 院長

美容医療に携わる中で、幹細胞治療の可能性に注目しています。医師としての視点から、安心できる正しい情報を皆さんにお届けします。

よく読まれている記事

  1. シューマッハ氏の近況報道と、幹細胞治療について分かっていること
  2. マレーシアで受ける幹細胞点滴のご案内
  3. 半月板の再生医療「セイビスカス注」承認、誰がいつ受けられる?
  4. Muse細胞はいまどうなっている?開発中止の背景と研究の現在地
  5. 自分の脂肪から採る幹細胞、利点と限界は?自家と他家の比べ方
健康長寿のニュースを、メールで

世界の研究と話題から、編集部が選んだ記事をお届けします。