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聞こえにくさは脳に影響する? 補聴器の比較試験で分かったこと

聞き返しが増えた、テレビの音が大きいと言われる。年齢による聞こえにくさは、記憶や考える力とも関係があると報告されています。観察研究と比較試験を分けて、分かっていることを整理しました。

根拠 初期5分で読めます公開 2026.10.19更新 2026.10.19
RATRAT編集部
生成AIで下書きし、編集部が出典と内容を確認しました
この記事の要点
  • 聞こえにくい人ほど、その後に認知機能が落ちやすいという関連が、世界の観察研究で報告されている
  • 米国の977人の比較試験では、補聴器で3年間の認知機能の下がり方は、全体では変わらなかった
  • 補聴器で聞き取る力と暮らしの質がよくなることは、比較試験のまとめで確かめられている

年齢による聞こえにくさがある人ほど、記憶や考える力が落ちやすいことが、観察研究で報告されています。ただし、補聴器でその低下を防げるかは、米国の大きな比較試験でもはっきりしませんでした。

聞こえにくさと脳の働きには、どんな関係がある?

2018年に、12か国の40の研究をまとめた解析が発表されました。聴力検査で測った聞こえにくさと、認知機能(覚える・考える・判断する力)の関係を調べたものです。

聞こえにくい人は、どの種類の認知機能でも、成績がわずかに低い傾向がありました。時間を追った研究では、聞こえにくい人ほど、認知機能が落ちた状態になる割合が約1.2倍でした。認知症になる割合は約1.3倍でした。

一方、アルツハイマー病に限ると、はっきりした差は出ていません。研究チームは、血管の働きの衰えや会話が減ることが関係している可能性を挙げています。ただし、これは考えられる仕組みの段階です。

補聴器を使っている人は、どうだった?

2023年には、補聴器や人工内耳(耳の奥に入れて音を伝える機器)と認知機能の研究を集めたまとめが出ました。31の研究のうち、25は観察研究です。

長い期間を追った8つの研究、約12万7,000人の分析があります。補聴器などを使う人は、聞こえにくいまま使わない人より、認知機能が落ちる危険が19%低くなっていました。使い始めた前後を比べた短い研究では、認知機能のテストの点数が3%上がっていました。ただし、合わせて568人分の小さな研究の集まりです。

ただ、補聴器を使う人は、もともと健康への関心が高かったり、暮らしに余裕があったりするかもしれません。観察研究では、こうした違いの影響を取りきれません。研究チームも、比較試験で確かめる必要があると書いています。

比較試験では、どんな結果が出た?

原因と言えるかを確かめるには、比較試験(くじ引きで組を分けて比べる試験)が必要です。ここでは、米国で行われた大規模な試験(ACHIEVE)を紹介します。

対象は、聞こえにくさがあるのに補聴器を使っていない70〜84歳の977人です。片方の組は、聴覚の専門家の相談を受けて補聴器を使いました。もう片方の組は、病気の予防について学ぶ健康教室に通いました。

3年後、認知機能の下がり方に、2つの組で差はありませんでした。試験の主な問いへの答えは「差なし」です。

ただし、参加者を集め方で分けると、結果が違いました。もともと心臓の研究に参加していて、認知機能が落ちやすい条件の多い人たちです。この人たちでは、補聴器の組のほうが下がり方が小さい可能性が示されました。研究チームも、確かめるべき仮説として慎重に書いています。

同じ試験の別の分析では、補聴器の組は3年間で、付き合いのある人の数が約1人多く保たれていました。孤独感も少し軽くなっていました。

効果ごとの根拠の強さ判定の基準
調べたこと根拠結果
聞こえにくい人は、認知機能の低下・認知症が起きやすいか(40研究のまとめ)根拠 初期約1.2〜1.3倍。アルツハイマー病では差がはっきりしない
補聴器を使う人は、認知機能が落ちにくいか(観察研究が中心のまとめ)根拠 初期落ちる危険が19%低い
補聴器で、3年間の認知機能の下がり方は小さくなるか(977人の比較試験)根拠 有望全体では差なし
認知機能が落ちやすい条件の多い人に限ると(同じ試験の事前に決めた分析)根拠 初期下がり方が小さい可能性。確認が必要
聞き取る力・聞こえに関わる暮らしの質(16試験のまとめ)根拠 確立大きく改善する可能性が高い
記憶などの認知機能(同じまとめ)根拠 有望効果ははっきりしない

補聴器で、何がよくなると分かっている?

2026年8月には、軽度から中等度の聞こえにくさがある大人の比較試験のまとめが更新されました。16の試験、2,261人分です。

補聴器を使うと、聞き取る力と、聞こえに関わる暮らしの質は大きく改善しそうだ、と結論しています。一方、記憶などの認知機能への効果は、確かなことは言えないとされました。孤独感については、ほとんど差がないという結果で、先ほどの試験とは分かれています。

副作用を記録した6つの試験のうち、痛みなどの報告は1つの試験の2人だけでした。ACHIEVEでも、試験による重い副作用は報告されていません。

まだ分かっていないこと聞こえにくさが認知機能の低下の原因なのか、脳の衰えの早いサインなのかは、観察研究では区別できません。大規模な比較試験は全体では差がなく、効果の可能性が示されたのは一部の人たちだけでした。追跡は3年で、もっと長く追えば差が出るのかは分かっていません。参加者の9割近くは白人の米国人で、日本人に当てはまるかも分かりません。この試験では、使った補聴器がメーカーから無償で提供されており、研究者の一部にも企業との関係が開示されています。また比較試験では、補聴器をつけているかを参加者に隠せないため、結果に偏りが入る余地があります。

では、どうすればよいか

補聴器が脳の衰えを防ぐと言えるだけの根拠は、まだありません。それでも、聞こえと暮らしの質がよくなることは、比較試験で確かめられています。聞こえにくさに気づいたら、まずは耳鼻咽喉科で聴力を調べてもらいましょう。

今日からできること
  • 聞き返しが増えた、テレビの音が大きいと言われたなど、聞こえの変化に気づいたら書き留めておく
  • 健診の聴力検査の結果を見直し、気になれば耳鼻咽喉科で詳しい聴力検査を受ける
  • 補聴器を考えるときは、耳鼻咽喉科で相談し、調整を受けながら使う
  • 物忘れが気になるときは、聞こえのことも合わせて医師に伝える
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
加齢による難聴と認知機能のまとめ(JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2018)12か国40研究、メタ解析は36研究・推定2万264人。純音聴力検査で測定。前向きコホートで認知障害のオッズ比1.22、認知症1.28、アルツハイマー病1.69(有意差なし)。横断研究では認知障害2.00、認知症2.42。著者は利益相反なしと開示
補聴器・人工内耳と認知機能のまとめ(JAMA Neurol 2023)31研究(観察25・試験6)、13万7,484人。長期8研究・12万6,903人(追跡2〜25年)で認知機能低下のハザード比0.81。短期11研究・568人で認知テストの点数が3%改善。利益相反なし
ACHIEVE(Lancet 2023)米国4地域、70〜84歳・未治療の難聴・明らかな認知障害なしの977人。聴覚の専門家の相談と補聴器、または健康教育に割り付け。主要評価項目(3年間の全般的な認知機能の変化)は差なし(差0.002、p=0.96)。事前に決めた感度分析で、ARIC研究からの参加者と新規参加者で効果が異なった(交互作用p=0.010)。試験に関連する重い有害事象なし。資金: 米国国立衛生研究所。補聴器はメーカーから現物提供。登録: NCT03243422
ACHIEVEの二次解析(JAMA Intern Med 2025)探索的評価項目。3年間で社会的ネットワークの人数が補聴器の組で約1人多く保たれた(差1.05)。孤独感の尺度も低下(差−0.94)
補聴器のコクラン・レビュー(2026年更新)軽度〜中等度の難聴の成人、16試験・2,261人。聞こえに関わる生活の質の標準化平均差−1.25(中等度の確実性)、聞き取る力−1.28(中等度)、健康関連の生活の質−0.27(低)、孤独感−0.12(低・ほぼ差なし)、作業記憶0.51(非常に低い確実性)。盲検化が不十分な試験が大半。専用の資金なし。著者の所属機関に補聴器企業からの資金あり
出典
  1. Loughrey DG, et al. Association of Age-Related Hearing Loss With Cognitive Function, Cognitive Impairment, and Dementia: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2018. PMID 29222544
  2. Yeo BSY, et al. Association of Hearing Aids and Cochlear Implants With Cognitive Decline and Dementia: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Neurol. 2023. PMID 36469314
  3. Lin FR, et al. Hearing intervention versus health education control to reduce cognitive decline in older adults with hearing loss in the USA (ACHIEVE): a multicentre, randomised controlled trial. Lancet. 2023. PMID 37478886
  4. Reed NS, et al. Hearing Intervention, Social Isolation, and Loneliness: A Secondary Analysis of the ACHIEVE Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2025. PMID 40354063
  5. Ferguson MA, et al. Hearing aids for mild to moderate hearing loss in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2026. PMID 42644645
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ReverseAging.Tech をつくる人

加藤順彦
代表者加藤順彦MARUICHI PTE. LTD. CEO

自らの体験をきっかけに、幹細胞点滴の魅力を広めています。100名を超える方々をご案内する中で、その可能性をますます実感しています。人生100年時代にふさわしい選択肢として、あなたの選択肢のひとつに加えていただけたら嬉しいです。

山中大介医師
監修者・医師山中大介DMTC CLINIC 院長

美容医療に携わる中で、幹細胞治療の可能性に注目しています。医師としての視点から、安心できる正しい情報を皆さんにお届けします。

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