薄毛の治療、皮膚科の学会が強く勧めるのはどれ? 診療ガイドラインを読む
薄毛の治療法はたくさんありますが、日本皮膚科学会は根拠の強さで「勧める」「勧めない」を分けています。男性と女性で評価が違う点も含めて、ガイドラインの中身を整理しました。
- 日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)が「強く勧める」のは、男性ではフィナステリドとデュタステリドの飲み薬、ミノキシジルの塗り薬
- 女性に強く勧められているのはミノキシジルの塗り薬だけ。男性向けの飲み薬2つは、女性には「行うべきではない」とされている
- ミノキシジルの飲み薬は「行うべきではない」の評価。どの治療も、始める前に医師に相談を
年齢とともに進む薄毛には、日本皮膚科学会の診療ガイドラインがあります。男性で「強く勧める」とされているのは飲み薬2つと塗り薬1つで、女性では塗り薬1つだけです。
ここで扱うのは、男性では額の生え際や頭のてっぺんから、女性では頭頂部を中心に、髪が細く短くなっていくタイプの薄毛です。医学では「男性型脱毛症」「女性型脱毛症」と呼ばれます。円形脱毛症など、ほかの原因による抜け毛は別の病気です。
ガイドラインの「推奨度」とは何?
診療ガイドラインは、学会の専門家が論文を集めて、治療ごとに勧める度合いを決めた文書です。この記事が読むのは2017年版で、学会のサイトで誰でも読めます。
勧める度合いは「推奨度」という5段階で示されます。A は「行うよう強く勧める」、B は「勧める」、C1 は「行ってもよい」です。C2 は「行わないほうがよい」、D は「行うべきではない」を表します。A には、質の高い比較試験で効果が示されていることが求められます。
強く勧められているのは、どの治療?
男性で推奨度Aは3つです。飲み薬のフィナステリドとデュタステリドは、髪を細くする男性ホルモンの働きを抑える薬です。塗り薬のミノキシジルは、男性は濃度5%、女性は1%で推奨度Aです。
ガイドラインには日本人の試験も載っています。日本人男性414人の比較試験では、フィナステリドを48週間飲みました。1日1mgの人の58%が、写真の判定で「軽度改善」以上でした。女性では、8つの比較試験・1,242人をまとめた解析があります。ミノキシジルの塗り薬の人は、1cm²あたりの髪が平均で約13本多くなりました。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| フィナステリドの飲み薬(男性) | 根拠 確立 | 推奨度A。女性は推奨度D |
| デュタステリドの飲み薬(男性) | 根拠 確立 | 推奨度A。女性は推奨度D |
| ミノキシジルの塗り薬(男性5%・女性1%) | 根拠 確立 | 推奨度A |
| 自分の髪を移す植毛(男性) | 根拠 有望 | 推奨度B。女性はC1、人工毛の植毛はD |
| LED・低出力レーザーの照射 | 根拠 有望 | 推奨度B |
| 成長因子の注入・細胞を使う治療 | 根拠 初期 | 推奨度C2(行わないほうがよい) |
| ミノキシジルの飲み薬 | 根拠 初期 | 推奨度D(行うべきではない) |
女性と男性で、評価が違うのはなぜ?
フィナステリドとデュタステリドは、女性には推奨度Dです。妊娠中に飲むと、男の子の胎児の体の発達に影響するおそれがあるためです。ガイドラインは、女性への投与は禁じられていると説明しています。
副作用もガイドラインに書かれています。デュタステリドの国際的な試験では、性欲の低下が3.3%、勃起の問題が5.4%の人に起きました。日本の120人の試験では、それぞれ8.3%と11.7%でした。また、2つの飲み薬は前立腺がんの検査(PSA)の値を約半分に下げます。健診で調べるときは、飲んでいることを必ず伝えてください。
ミノキシジルの飲み薬は推奨度Dです。もともと血圧の薬として開発されましたが、ガイドラインによると日本では承認されていません。ガイドラインは、薄毛での臨床試験がないことと、心臓や血管への重い副作用の報告があることを挙げています。2024年にはブラジルで90人が参加した比較試験が発表されましたが、飲み薬は塗り薬を上回りませんでした。
では、どうすればよいか
ガイドラインに載っている試験は、半年から数年続けた結果です。費用と副作用も含めて、続けられるかを医師と相談して決める必要があります。抜け毛の原因が別の病気のこともあるので、まずは皮膚科で診てもらうのが確実です。
- まず皮膚科で、どのタイプの薄毛かを診てもらう
- 飲み薬・塗り薬は、医師から副作用と続ける期間の説明を受けてから始める
- 飲み薬を飲んでいるときは、健診や前立腺の検査の前に医師へ伝える
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方は、男性用の飲み薬について必ず医師に確認する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| ガイドラインの位置づけ | 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」。14の問い(CQ)ごとに推奨度を決めている。2026年10月時点で、学会の一般公開ページに掲載されている最新版 |
|---|---|
| フィナステリド(日本人の試験) | 日本人男性414人・48週間の比較試験で、1日1mgの58%、0.2mgの54%が「軽度改善」以上(写真による判定)。ガイドラインは、まれに肝機能の障害が起こることも挙げている |
| デュタステリドの副作用 | 国際的な臨床試験で性欲の低下3.3%・勃起の問題5.4%・射精の問題3.3%。日本の120人・52週間の試験ではそれぞれ8.3%・11.7%・5.0% |
| 3つの薬の比較 | 23の研究をまとめた解析(JAMA Dermatology 2022)。24週と48週の時点で、薬の種類と量によって髪の増え方の順位が入れ替わり、一つの薬がすべての指標で上回る結果にはならなかった。著者に開示すべき利益相反なし |
| ミノキシジルの飲み薬と塗り薬の比較 | ブラジルの1施設、18〜55歳の男性。90人が参加し68人が24週間を終えた。主な評価項目(太い髪の密度)で、飲み薬5mgは塗り薬5%を上回らなかった。主な副作用は体毛が濃くなること。資金はブラジル皮膚科学会の基金(JAMA Dermatology 2024) |
- 日本皮膚科学会. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版. 日皮会誌 127(13): 2763-2777, 2017. リンク
- Gupta AK, et al. Relative Efficacy of Minoxidil and the 5-α Reductase Inhibitors in Androgenetic Alopecia Treatment of Male Patients: A Network Meta-analysis. JAMA Dermatol. 2022. PMID 35107565
- Penha MA, et al. Oral Minoxidil vs Topical Minoxidil for Male Androgenetic Alopecia: A Randomized Clinical Trial. JAMA Dermatol. 2024. PMID 38598226
この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。












