両手で軽いダンベルを握る腕の接写
写真はイメージです

トップ / 動く

動く

握力は「老化のものさし」になる? 大規模な追跡研究から

健康診断や体力テストで測る握力。世界の大規模な追跡研究では、握力とその後の健康に関係が見られています。分かっていることと、まだ分からないことを整理しました。

根拠 初期5分で読めます公開 2026.10.14更新 2026.10.14
RATRAT編集部
生成AIで下書きし、編集部が出典と内容を確認しました
この記事の要点
  • 握力が弱い人ほど、その後に亡くなる割合が高いという関連が、世界の調査で一貫して見られている
  • 握力は、体の状態を手軽に知る「目安」として使える可能性がある
  • 筋トレで筋力が上がることは比較試験で確かめられているが、それで長生きするかはまだ分からない

握力が弱い人ほど、その後に亡くなる割合が高いことが、世界の大規模な追跡研究で一貫して報告されています。ただし、握力を鍛えれば長生きできるかどうかは、まだ確かめられていません。

握力と寿命に、どんな関係が見られた?

よく知られているのが、17か国で行われた調査です。35〜70歳の約14万人の握力を測り、約4年追いかけました。その結果、握力が5kg弱いごとに、追跡中に亡くなる割合が16%高くなっていました。

この調査では、握力のほうが、上の血圧の値よりも亡くなる割合との関係が強く出ました。研究チームは、握力の測定を「簡単で費用のかからない方法」と位置づけています。

英国の約50万人(40〜69歳)を約7年追った研究でも、似た結果でした。握力が5kg弱いごとに、亡くなる割合は女性で20%、男性で16%高くなっていました。男性で26kg未満、女性で16kg未満を「弱い」とすると、ほとんどの項目で危険が高い側に入っていました。

42の研究、合わせて約300万人をまとめた解析もあります。最も弱い組は最も強い組に比べ、亡くなる割合が41%高いという結果でした。男女で差はなく、研究の始めに心臓の病気やがんがあった人を除いても、関係は残りました。

握力のほかにも、目安になるものはある?

体の力を測る方法は、握力だけではありません。2010年のまとめでは、歩く速さや、椅子から立ち上がる速さ、片足で立っていられる時間も調べられました。

どれも、成績のよくない人ほど亡くなる割合が高いという関係が見られました。ただし、歩く速さなどの研究は平均70歳以上の人が中心です。60歳未満の人でも関係が確認されていたのは、握力でした。

握力を鍛えれば、長生きできる?

ここまでの研究は、どれも「観察研究」です。ふだんの暮らしのまま握力を測り、その後の健康を見比べる方法です。分かるのは「握力が強い人は長生きの傾向がある」という関連までです。

体調が悪いから握力が落ちている、という逆向きの関係もありえます。握力そのものが寿命を決めているのか、体全体の状態を映しているだけなのかは、観察研究では区別できません。17か国の調査の研究チームも、筋力を上げて亡くなる割合が下がるかは、これから確かめる必要があると書いています。

原因と言えるかを確かめるには、「比較試験」が必要です。参加者をくじ引きで2つの組に分け、片方だけに筋トレをしてもらい、違いを比べます。

高齢の方を対象にした比較試験は、すでに数多くあります。121本・約6,700人分をまとめた解析があります。少しずつ重さを上げる筋トレを週2〜3回行うと、筋力が大きく上がりました。椅子から立ち上がる動作や歩く速さも改善しました。一方で、関節の痛みや筋肉痛は多くの試験で報告されていました。

つまり、「筋トレで筋力は上がる」ことは比較試験で確かめられています。「その結果として長生きする」かどうかは、まだ試験で確かめられていません。

効果ごとの根拠の強さ判定の基準
調べたこと根拠結果
握力が弱いほど、亡くなる割合が高いか(42研究・約300万人のまとめ)根拠 初期最も弱い組は最も強い組より41%高い
握力5kgの差と、亡くなる割合(17か国・約14万人)根拠 初期5kg弱いごとに16%高い
握力と糖尿病・転倒・骨折(同じ17か国の調査)根拠 初期はっきりした関係は見られない
少しずつ重さを上げる筋トレで、筋力は上がるか(121本の比較試験)根拠 有望大きく上がった
まだ分かっていないこと筋トレで握力や筋力を上げたときに、寿命がのびるかどうかは、比較試験で確かめられていません。17か国の調査では、握力と糖尿病・転倒・骨折の間にははっきりした関係が見られず、がんとの関係は国の豊かさによって違っていました。握力の測り方や「弱い」の基準は研究によって異なり、日本人にそのまま当てはまるかも分かっていません。筋トレの比較試験では、副作用の記録が十分でない試験が多かったとされています。

では、どうすればよいか

握力は、自分の体の状態を知る手がかりのひとつとして使えます。数字だけを上げようとするより、体全体の筋力を保つことを目標にしましょう。

今日からできること
  • 健康診断や自治体の体力測定で握力を測る機会があれば、数字を記録して前年と比べる
  • 椅子からの立ち上がりなど、脚や腕の筋トレを週2〜3回、無理のない回数から始める
  • 握力の数字だけを上げることを目的にせず、全身の筋力と歩く習慣を保つ
  • 関節の痛み、心臓や血圧の持病がある方は、始める前に医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
17か国の調査(Lancet 2015)35〜70歳の13万9,691人、追跡の中央値4.0年、死亡3,379人。握力5kg低下ごとに死亡の危険度1.16。心血管死1.17、心筋梗塞1.07、脳卒中1.09。糖尿病・肺炎・転倒による外傷・骨折とは有意な関連なし。高所得国ではがんと正の関連。資金: カナダ保健研究機構ほか
英国の約50万人の研究(BMJ 2018)40〜69歳の50万2,293人、平均7.1年。握力5kg低下ごとに死亡の危険度は女性1.20・男性1.16。男性26kg未満・女性16kg未満を筋力低下と定義。資金: 英国医学研究評議会
42研究のまとめ(J Am Med Dir Assoc 2017)約300万人。最も弱い組と最も強い組の比較で死亡の危険度1.41、心血管疾患1.63、がん0.89(有意差なし)。5kg低下ごとに死亡1.16
体の力の測定と死亡のまとめ(BMJ 2010)握力・歩く速さ・椅子からの立ち上がり・立位バランス。握力の最も弱い4分の1と最も強い4分の1の比較(14研究・5万3,476人)で死亡の危険度1.67。研究間のばらつきが大きい
高齢者の筋トレの比較試験のまとめ(Cochrane 2009)121試験・6,700人。多くは週2〜3回・高強度。筋力の効果は大きく(73試験)、歩く速さは秒速0.08mの改善。重い有害事象はまれだが、記録が不十分な試験が多い。資金: 米国国立老化研究所
出典
  1. Leong DP, et al. Prognostic value of grip strength: findings from the Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) study. Lancet. 2015. PMID 25982160
  2. Celis-Morales CA, et al. Associations of grip strength with cardiovascular, respiratory, and cancer outcomes and all cause mortality: prospective cohort study of half a million UK Biobank participants. BMJ. 2018. PMID 29739772
  3. Wu Y, et al. Association of Grip Strength With Risk of All-Cause Mortality, Cardiovascular Diseases, and Cancer in Community-Dwelling Populations: A Meta-analysis of Prospective Cohort Studies. J Am Med Dir Assoc. 2017. PMID 28549705
  4. Cooper R, et al. Objectively measured physical capability levels and mortality: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2010. PMID 20829298
  5. Liu CJ, Latham NK. Progressive resistance strength training for improving physical function in older adults. Cochrane Database Syst Rev. 2009. PMID 19588334
この記事は役に立ちましたか?

この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。

次に読む

ReverseAging.Tech をつくる人

加藤順彦
代表者加藤順彦MARUICHI PTE. LTD. CEO

自らの体験をきっかけに、幹細胞点滴の魅力を広めています。100名を超える方々をご案内する中で、その可能性をますます実感しています。人生100年時代にふさわしい選択肢として、あなたの選択肢のひとつに加えていただけたら嬉しいです。

山中大介医師
監修者・医師山中大介DMTC CLINIC 院長

美容医療に携わる中で、幹細胞治療の可能性に注目しています。医師としての視点から、安心できる正しい情報を皆さんにお届けします。

幹細胞を知る「幹細胞」って何? 基本から3分で幹細胞とは →

よく読まれている記事

  1. シューマッハ氏の近況報道と、幹細胞治療について分かっていること
  2. マレーシアで受ける幹細胞点滴のご案内
  3. 半月板の再生医療「セイビスカス注」承認、誰がいつ受けられる?
  4. Muse細胞はいまどうなっている?開発中止の背景と研究の現在地
  5. 自分の脂肪から採る幹細胞、利点と限界は?自家と他家の比べ方
健康長寿のニュースを、メールで

世界の研究と話題から、編集部が選んだ記事をお届けします。