白髪はなぜ増える? 年齢・遺伝・ストレスの研究で分かっていること
40代に入って白髪が目立ち始めた、親も早くから白髪だった。白髪の増え方には個人差があります。年齢・遺伝・ストレスとの関係について、人の調査と動物の実験を分けて整理しました。
- 4,192人の世界調査では、45〜65歳の74%に白髪があった。増え始める年齢と増える速さは、出身地域で違っていた
- 白髪には、IRF4をはじめとする遺伝子の違いが関わると報告されている。家族に早い白髪の人がいることも、関連する要因の一つ
- 強いストレスで白髪になる仕組みは、マウスの実験で示された。人では、ストレスの時期と白髪の変化が重なった例が少人数で報告された段階
- 白髪の一部は、自然に色が戻ることがあると報告されている
白髪は、年齢とともに髪に色をつける細胞の働きが少しずつ衰えて起こると考えられています。増える時期や速さには遺伝や出身地域が関わり、ストレスとの関係はマウスでは仕組みが示されたものの、人ではまだ少人数の観察の段階です。
白髪は、何歳ごろから増える?
「50歳で、半分の人の髪の半分が白髪になる」という言い回しが、欧米には昔からあります。2012年に、世界各地の健康な男女4,192人の髪の色を、専門の評価者が見本と見比べて調べた調査が発表されました。
45〜65歳では74%の人に白髪があり、白髪の割合は平均27%でした。一方、50歳で髪の半分以上が白髪になっている人は、出身地域や元の髪の色によって6〜23%にとどまりました。言い回しよりも、かなり少ない数字です。
同じ年齢で比べると、アジア系やアフリカ系の人は、白人より白髪が少ない傾向でした。また、男性のほうが女性より白髪が多くなっていました。
白髪はどのようにしてできる?
髪の色は、毛の根元にある色素細胞(メラニンという色素をつくる細胞)が、伸びてくる毛に色素を渡すことでついています。
2024年に発表された研究のまとめによると、白髪は一つの原因で起こるものではありません。長年の酸化によるダメージや遺伝子の傷、色素細胞の老化、色素づくりを促す物質の不足などが、人によって違う割合で重なって起こると考えられています。色素細胞のもとになる細胞まで失われると、その毛の白髪は戻らなくなるとされています。
遺伝はどのくらい関わる?
同じまとめでは、白髪に関わる遺伝の要因として、IRF4という遺伝子の違いなどが挙げられています。
早い年齢での白髪について、2020年に関連する要因を集めた系統的レビューもあります。家族に早い白髪の人がいることに加え、喫煙、ビタミンB12や葉酸の不足、肥満などとの関連が報告されていました。ただし、いずれも関連が見られたというもので、これらが原因だと確かめられたわけではありません。
ストレスで白髪は増える?
2020年に、マウスの実験で一つの仕組みが示されました。強いストレスを受けると、毛の根元に伸びる神経からノルアドレナリンという物質が一度に出ます。これにより、色素細胞のもとになる細胞が急に増えたあと使い果たされ、毛が白くなっていました。失われた細胞は元に戻りませんでした。
この実験では、免疫の働きや、副腎から出るストレスホルモンは主な原因ではないことも確かめられています。ただし、同じことが人で起きているかは分かっていません。先ほどの研究のまとめも、マウスの考え方をそのまま人に当てはめることには慎重な立場です。
人では、2021年に、1本の毛の色の変化を根元から毛先まで細かく測る研究が発表されました。少人数の研究ですが、白髪の一部が自然に色を取り戻すことを、性別や年齢、出身にかかわらず確認しています。ある参加者では、ストレスが強かった時期に毛の色が抜け、ストレスが和らいだ時期に同じ毛の色が戻っていました。毛の成分を調べると、白い毛ではエネルギーをつくる働きや、酸化から身を守る働きに関わるたんぱく質が増えていました。研究チームは、もともと白髪になりかけていた毛が、ストレスをきっかけに早く白くなる可能性を挙げています。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 年齢とともに白髪は増えるか(世界の4,192人の調査) | 根拠 初期 | 45〜65歳の74%に白髪。50歳で半分以上が白髪の人は6〜23% |
| 出身地域・性別で違うか(同じ調査) | 根拠 初期 | アジア系・アフリカ系は白人より少なめ。男性のほうが多い |
| 遺伝が関わるか(2024年の研究のまとめ) | 根拠 初期 | IRF4などの遺伝子の違いが関わると報告 |
| 早い白髪と関連する要因(2020年の系統的レビュー) | 根拠 初期 | 家族歴・喫煙・ビタミンB12や葉酸の不足などと関連 |
| 強いストレスで白髪になるか(マウスの実験) | 根拠 動物 | 神経から出る物質で、色素細胞のもとになる細胞が失われた |
| 人でストレスと白髪の変化が重なるか(少人数の研究) | 根拠 初期 | ストレスの時期と、色の抜け・戻りが重なった例がある |
では、どう考えればよいか
白髪の多くは、年齢と遺伝による自然な変化です。人で確かめられた予防の方法は、いまのところありません。喫煙や栄養の偏りとの関連は報告されているので、全身の健康のためにも生活を見直しておくとよいでしょう。
- 白髪の増え方には個人差が大きく、多くは年齢と遺伝による自然な変化と考えられている
- たばこを吸う方は、全身の健康のためにも禁煙を考える
- 栄養が偏らない食事を心がける。サプリメントを自己判断で大量にとることは避ける
- 短い期間に急に増えた、まだらに抜けた部分から白い毛が生えてきたなど、気になる変化があれば皮膚科に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 白髪の世界調査(Br J Dermatol 2012) | 世界各地の健康な男女4,192人。専門の評価者が髪を標準の見本と見比べて判定。45〜65歳の74%に白髪、白髪の割合は平均27%。男性が女性より有意に多い。アジア系・アフリカ系は同年齢の白人より少ない。50歳で白髪50%以上の人は出身地域・元の髪色により6〜23%。著者は化粧品会社の研究所に所属 |
|---|---|
| 白髪の研究のまとめ(J Invest Dermatol 2024) | 総説(系統的レビューではない)。白髪は酸化やDNAの損傷の蓄積、色素細胞の老化、色素づくりを促す因子の不足などが人ごとに違う割合で重なって起こると整理。遺伝要因としてDNA修復の異常やIRF4の配列の違いを挙げる。色素細胞のもとになる細胞が失われて初めて白髪は戻らなくなる。マウスの考え方を人に直接当てはめることに注意を促す。著者の一部は毛髪研究の企業にも所属 |
| 早い白髪の要因の系統的レビュー(Dermatol Ther 2020) | 2019年1月までの研究を検索。喫煙、ビタミンB12・葉酸・ビオチンの不足、血清カルシウム・フェリチンの低値が早い白髪と関連。ほかに家族歴、肥満、高血圧、運動不足などとの関連も報告。いずれも関連で、原因は確かめられていない |
| ストレスと白髪のマウス実験(Nature 2020) | マウスで、急性のストレスにより交感神経からノルアドレナリンが一度に放出され、色素細胞のもとになる細胞が急速に増えたのちに使い果たされ、白髪になった。免疫や副腎のストレスホルモンとは独立。著者の一部に企業との関係あり、この研究に基づく特許の仮出願あり |
| 1本の毛の色の変化とストレス(eLife 2021) | 1本の毛の色素の濃さを根元から毛先まで数値化する方法を開発。性別・出身・年齢・体の部位にかかわらず、白髪が自然に色を取り戻す例を確認。ある参加者で、ストレスの増加と色の消失、ストレスの減少と色の回復が重なった。数理モデルで、白髪になる手前の毛がストレスで一時的に白くなる可能性を示唆。資金: 米国国立衛生研究所ほか。利益相反なし |
- Panhard S, et al. Greying of the human hair: a worldwide survey, revisiting the '50' rule of thumb. Br J Dermatol. 2012. PMID 22716034
- Paus R, et al. Human Hair Graying Revisited: Principles, Misconceptions, and Key Research Frontiers. J Invest Dermatol. 2024. PMID 38099887
- Mahendiratta S, et al. Premature graying of hair: Risk factors, co-morbid conditions, pharmacotherapy and reversal-A systematic review and meta-analysis. Dermatol Ther. 2020. PMID 32654282
- Zhang B, et al. Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells. Nature. 2020. PMID 31969699
- Rosenberg AM, et al. Quantitative mapping of human hair greying and reversal in relation to life stress. eLife. 2021. PMID 34155974
この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。












