健診の血糖値とHbA1c、どこからが高い? 境界型の読み方と研究
健康診断の結果票に並ぶ空腹時血糖とHbA1c。それぞれが何を表し、どこからが「高い」のか。日本糖尿病学会の基準と、日本人を含む追跡研究・比較試験のまとめをもとに、読み方を整理しました。
- 日本糖尿病学会の基準では、空腹時血糖126mg/dL以上かHbA1c6.5%以上が「糖尿病型」。空腹時血糖110mg/dL未満が正常型で、その間が境界型
- HbA1c6.0〜6.4%は糖尿病の疑いを否定できない範囲、5.6〜5.9%も含めて将来の糖尿病の危険が高い集まりとされている
- 日本人6,241人の追跡では、空腹時血糖とHbA1cの両方が高めの人は、糖尿病になる危険が約32倍だった
- 前糖尿病の人の44の比較試験のまとめでは、食事や運動で体重を減らすと、糖尿病になる人が100人あたり8人少なかった
健診の血糖の数字は、日本糖尿病学会の基準では、空腹時血糖126mg/dL以上かHbA1c6.5%以上が「糖尿病型」です。その手前の範囲でも、将来の糖尿病や心臓・血管の病気が増えることが、追跡研究のまとめで報告されています。
空腹時血糖とHbA1cは、何を表している?
空腹時血糖は、食事をとらずに採血したときの、血液中のぶどう糖の濃さです。採血したその時点の値なので、前の日の食事や睡眠で上下します。
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、赤血球の中のたんぱく質に、ぶどう糖がどれだけ結びついているかの割合です。過去1〜2か月ほどの血糖の平均を映すとされ、採血の直前に食事をしても大きくは変わりません。
どこからが「高い」の?
日本糖尿病学会の委員会報告では、空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上のどちらかに当てはまると「糖尿病型」とされます。空腹時血糖110mg/dL未満は「正常型」で、その間は「境界型」です。
HbA1cについては、6.0〜6.4%は糖尿病の疑いを否定できない範囲、5.6〜5.9%も含めると将来糖尿病になる危険が高い集まりとされています。境界型の人は、糖尿病に特有の合併症は少ないものの、動脈硬化の危険は正常型より高いと書かれています。
なお、1回の検査で糖尿病型でも、それだけで糖尿病とは決まりません。別の日にもう一度調べて確かめるのが原則で、HbA1cだけを2回測っても診断はできないとされています。
米国の基準はもう少し低い値から区切っています。2023年に医学誌JAMAに出た総説では、空腹時血糖100〜125mg/dL、またはHbA1c5.7〜6.4%を「前糖尿病」(糖尿病の手前の状態)としています。米国では、前糖尿病の人の約10%が毎年糖尿病になると紹介されています。
日本人の健診では、どんな結果が出ている?
東京の虎の門病院で健診を受けた、糖尿病のない6,241人を平均4.7年追った研究があります。空腹時血糖が100〜125mg/dLの人、HbA1cが5.7〜6.4%の人は、どちらも正常の人に比べて、糖尿病になる危険が約6倍でした。
両方が高めだった人では、危険は約32倍に上がっていました。一方、HbA1cだけで調べると、空腹時血糖とあわせて見つかる人の6割を見逃していました。研究チームは、2つの検査をあわせて見ることを勧めています。
糖尿病の手前でも、体への影響はある?
2020年に、129の研究、約1,000万人分をまとめた解析が英国の医学誌BMJに出ました。一般の人では、前糖尿病の人は正常の人に比べて、追跡中に亡くなる危険が13%、心臓や血管の病気の危険が15%高くなっていました。
差を人数で表すと、1万人を1年追うごとに、亡くなる人が約7人多い計算です。1人ひとりにとっては小さな差ですが、数十年続く状態であることを考えると、軽く見てよい数字ではありません。
米国の約1万1,000人を追った研究では、HbA1cが5.5%未満の人に比べ、6.0〜6.4%の人は心臓の病気の危険が約1.8倍でした。ただし、どちらも観察研究で、血糖そのものが原因だとまでは言えません。
| 調べたこと | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|
| 空腹時血糖・HbA1cの判定の区分 | 根拠 確立 | 日本糖尿病学会の委員会報告に明記 |
| 空腹時血糖・HbA1cが高めの日本人は糖尿病になりやすいか(6,241人の追跡) | 根拠 初期 | どちらか一方で約6倍、両方で約32倍 |
| 前糖尿病の人は、亡くなる危険や心臓・血管の病気が多いか(129研究のまとめ) | 根拠 初期 | それぞれ13%・15%高い |
| HbA1cが高めだと心臓の病気が増えるか(米国の約1万1,000人の追跡) | 根拠 初期 | 6.0〜6.4%で約1.8倍 |
| 食事や運動で体重を減らすと、糖尿病になる人は減るか(44試験のまとめ) | 根拠 確立 | 100人あたり8人少ない。正常に戻る人は11人多い |
境界型と言われたら、何が分かっている?
前糖尿病の人を対象にした44の比較試験、1万4,742人分をまとめた解析が、2024年に発表されました。食事や運動で体重を減らす取り組みを、中央値で2年続けた試験です。
取り組んだ組では、100人あたり8人、糖尿病になる人が少なくなっていました。正常の範囲に戻った人は、100人あたり11人多くなりました。体重の減り方は1〜9%で、減った分が大きいほど結果がよい、直線的な関係が見られています。食事だけ、運動だけ、両方の組み合わせのどれでも、はっきりした違いはありませんでした。
では、どうすればよいか
健診の結果票で、空腹時血糖とHbA1cの両方を確かめてください。毎年の数字を並べて、上がり続けていないかを見ることも役立ちます。糖尿病型や、その手前の範囲に入っていれば、医療機関や保健師に相談しましょう。
- 健診の結果票で、空腹時血糖とHbA1cの両方を基準に当てはめる。採血が空腹時だったかどうかも確かめる
- 毎年の結果を並べて、数字が上がり続けていないかを見る
- 空腹時血糖110mg/dL以上、またはHbA1c5.6%以上なら、体重や運動の習慣を見直す。体重が多めの方は、数%の減量が比較試験で調べられている
- 空腹時血糖126mg/dL以上、またはHbA1c6.5%以上なら、医療機関で再検査を受ける。治療中の方は、自己判断で薬をやめたり減らしたりせず、医師に相談する
詳しく知りたい方へ(研究の中身)
| 日本糖尿病学会 糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告(J Diabetes Investig 2010) | 糖尿病型: 空腹時血糖126mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値200以上、随時血糖200以上、HbA1c(NGSP)6.5%以上のいずれか。正常型: 空腹時110未満かつ2時間値140未満。その間が境界型。HbA1c6.0〜6.4%は糖尿病の疑いを否定できない、5.6〜5.9%を含めて将来の発症リスクが高い群。診断は別の日の再検査で確認し、HbA1cの再検査だけでは診断しない |
|---|---|
| 前糖尿病の診断と管理の総説(JAMA 2023) | 米国の定義: 空腹時血糖100〜125mg/dL、負荷2時間値140〜199、HbA1c5.7〜6.4%(6.0〜6.4%とする定義もある)。米国では前糖尿病の約10%が毎年糖尿病に進む。強化した生活習慣の取り組みで3年間の発症が100人年あたり6.2件減少 |
| TOPICS 3(Lancet 2011) | 虎の門病院の健診受診者で糖尿病のない6,241人(24〜82歳)、平均4.7年追跡。空腹時血糖のみ高め(100〜125)の発症ハザード比6.16、HbA1cのみ高め(5.7〜6.4%)6.00、両方31.9。HbA1cだけでは前糖尿病の61%を見逃した。資金: 日本学術振興会、厚生労働省 |
| 前糖尿病と死亡・心血管病のメタ解析(BMJ 2020) | 129研究・1,006万9,955人。一般集団(追跡中央値9.8年)で全死亡の相対リスク1.13、心血管病1.15、冠動脈疾患1.16、脳卒中1.14。絶対リスク差は全死亡で1万人年あたり7.36。耐糖能異常は空腹時血糖異常より危険が高い |
| ARIC研究(N Engl J Med 2010) | 糖尿病・心血管病の既往がない米国の黒人・白人1万1,092人。HbA1c5.0〜5.5%未満を基準に、6.0〜6.5%未満で糖尿病の発症ハザード比4.48、冠動脈疾患1.78。全死亡との関係はJ字形。空腹時血糖で調整後も関連が残った |
| 生活習慣による減量のメタ解析(Am J Clin Nutr 2024) | 前糖尿病の人の6か月以上の比較試験44本・1万4,742人、介入期間中央値24か月、体重減少1〜9%。正常血糖への回復の相対リスク1.51(100人あたり11人増)、2型糖尿病への進行0.59(100人あたり8人減)。いずれも中等度の確実性。食事・運動・組み合わせの間で差なし。抄録に資金の記載なし。登録: PROSPERO CRD42023465322 |
- Seino Y, et al. Report of the committee on the classification and diagnostic criteria of diabetes mellitus. J Diabetes Investig. 2010. PMID 24843435
- Echouffo-Tcheugui JB, et al. Diagnosis and Management of Prediabetes: A Review. JAMA. 2023. PMID 37039787
- Heianza Y, et al. HbA1c 5.7-6.4% and impaired fasting plasma glucose for diagnosis of prediabetes and risk of progression to diabetes in Japan (TOPICS 3): a longitudinal cohort study. Lancet. 2011. PMID 21705064
- Cai X, et al. Association between prediabetes and risk of all cause mortality and cardiovascular disease: updated meta-analysis. BMJ. 2020. PMID 32669282
- Selvin E, et al. Glycated hemoglobin, diabetes, and cardiovascular risk in nondiabetic adults. N Engl J Med. 2010. PMID 20200384
- Jayedi A, et al. Efficacy of lifestyle weight loss interventions on regression to normoglycemia and progression to type 2 diabetes in individuals with prediabetes: a systematic review and pairwise and dose-response meta-analyses. Am J Clin Nutr. 2024. PMID 39222689

15分の無料動画で、幹細胞の仕組みと最新の研究、受けられる場所や費用の考え方までお伝えします。
この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。










